水遊び
パソコン直りました。
やはりというか…午後は猛暑となり、お客さんは、全く来なかった。
ミライさんは仕方がないと笑い門の所に行き、門に何かしら話しかけると守護門番は門を閉じた。
「ミライさん?」
「暑いから、水浴びしよ!」
そう言ってミライさんはニッコリ笑うと物置から青と白の畳まれた物を出してきた。
「アロマ、水浴びしよー?」
「あらあら、よろしいのですか?」
「これだけ暑いと、お客さんも来ないよ。一応、お客さんが来たら知らせてねって言ってあるし」
「わかりました、では、着替えを用意しておきますね」
「ありがと、アロマ。よろしく」
「イシューさんの分も用意しますから、気兼ねなく、どうぞ」
「あ、ありがとうございます」
俺の言葉にアロマさんはニッコリ笑うと屋敷の奥に下がって行った。
ミライさんは畳まれていた青と白の物を広げると、今度は黄色と青の蛇腹になっている何かを持って来ると青い方を白と青の物と繋げた。
「よーし、膨らませるよー」
ミライさんはそう言って黄色の蛇腹を踏み始める。
上下に踏み続けると、段々と白と青の物が膨らんでいくのがわかった。
「…ミライさん、それは?」
「これは『ビニールプール』と『空気入れ』だよ」
「…俺、代わりますよ」
シュコシュコと踏み続けているミライさんは段々と息が上がっている。
見かねて俺がそういうとミライさんは嬉しそうに笑った。
「ありがとう、イシュー君。助かるよ。これ、意外と疲れる…」
ミライさんが右手を上げるので俺も吊られて右手を上げるとミライさんの手が俺の手を打つ。
「タッチ交代ー!」
「…タッチ…?」
またよくわからない言葉を言うミライさんに俺は首を傾げるが、今更である。
俺はミライさんがやっていたように、黄色の蛇腹をシュコシュコと踏み始める。
……うん。確かに意外と疲れるな。これ。
俺は段々と膨らんでいく『ビニールプール』が面白くて、無心になって空気を入れ続けた。
「あらあら、だいぶ膨らみましたね」
「イシュー君が、頑張ってくれてるから、助かるよー」
「ミライ様、着替えはパラソルの所に置いておきますね」
「ありがと、アロマ」
「イシューさんの分も一緒に置いておきますね」
「す、すみま、せん…ありがとう、ございます…」
踏み続けていると息が切れてしまう。
そんな俺の様子を見て、ミライさんはアロマさんを見ると、アロマさんが頷いて屋敷の中に消える。
「イシュー君、そろそろ大丈夫だよ。ありがとう」
「…いえ、大丈夫です」
暑さと、熱風に苛まれ俺息が上がっていた。
そんな俺の前に、ガラスのコップが差し出された。
透明な氷の浮いた水が入っている。
「どうぞ、イシューさん」
「アロマさん、ありがとうございます」
俺は一気に水を煽る。
キンッと冷たい水が喉を潤していく。
「…はぁ、美味しいです」
「お疲れ様、ちょっと休んでてねー」
ミライさんはそう言うと庭の片隅にあるポンプ式の井戸の所に行くとポンプの先端に管らしきものをくっつけてビニールプールまで伸ばす。
「そっち側、持っててもらっていい?」
「はい」
俺は返事をして、管をビニールプールの内側に入れる。
それを確認したミライさんはポンプを動かした。
管から勢いよく水が溢れ注がれていく。
井戸水のため、冷たい水がどんどんプールに注がれていく。
持っている手がひんやりとして心地いい。
そんなことを考えながらボンヤリと水を見ているといつの間にかミライさんが傍に来ていた。
「ありがと、イシュー君」
「えっ、あ…はい」
ミライさんは俺の持っていた管を回収すると、クルクルと巻き取りながら井戸の方へ片付けてしまう。
いつの間にか、プールには水が張られていた。
俺は手を入れるとヒンヤリとした感触に頬が緩むのを感じた。
「えいっ」
「うわっ!?」
ミライさんの声と同時に冷たい水が顔を濡らす。
驚いて顔を上げると、悪戯が成功した子供みたいに笑っているミライさんがいた。
「ふふ、ビックリした?」
「そりゃ、いきなり水がかかったら驚きますよ…」
「そりゃっ」
「わっぷ!?」
「あはははは」
「ちょっ、ミライさん!?」
俺に水をかけたミライさんは楽しそうな笑い声をあげた。
俺もお返しとばかりに、ミライさんに向かって水を掬ってかける。
「ひゃっ…冷たーい!!」
「お返しですよ」
「やったなー!」
お互いに水を掛け合い笑っていると、いつの間にかパラソルの所にアロマさんが座っていた。
「アロマもこっちおいでー? 水かけてあげるから」
「あらあら、見ているだけで楽しいですよ」
「むぅ…そりゃーっ!」
ミライさんは涼やかに笑っているアロマさんに突撃していった。
「きゃー」
アロマさんは棒読みの悲鳴をあげてミライさんのかける水を悉く避けていく。
何という反射神経。
「避けるな、アロマ!」
「あらあら、濡れるのは困りますから」
そう言い避けるアロマさんも楽しそうで、俺は濡れた髪を後ろに撫で付けると水をチャプチャプと揺らしながら、そんな二人の攻防を眺めていた。
結局アロマさんが逃げ切って、ミライさんは息も絶え絶えに膝を付いていた。
「くっ…逃げ足、速すぎ…」
「あらあら、光栄ですわ。ミライ様」
クスクスと薄汗一つ掻いていないアロマさんはいつの間にか飲み物を手にしていた。
「どうぞ、ミライ様」
「ありがと…ってか、余裕すぎでしょ…完敗だわー」
ミライさんは飲み物を一気に飲み干すと大の字に寝転がった。
青々とした芝生に黒い髪が映える。
「本当、アロマには敵わないわー」
その言葉にアロマさんは黙ったままニッコリと笑っていた。
「あー…結局お客さん来なかったねー」
「今日はいつも以上に暑かったですからね」
「左様ですね。それでは、私は夕餉の支度を致しますね」
「夕餉のメニューは?」
ミライさんの目が期待に輝く。
「そうですね…野菜が残りましたゆえ『天ぷら』に致しましょうか」
「やった、天ぷら大好きー」
ミライさんの嬉しそうに弾んだ声が傾きかけた太陽に照らされた庭に響いた。
「今日はありがとう、イシュー君」
「いえ、お疲れ様です」
「ふふ、またお願いね」
「はい、こちらこそ」
そう言って俺とミライさんは笑い合った。
次の開店は三日後。
またのお越しをお待ちしております!




