夕方の風景
カンッカンッと高い鐘の音が町中に響き渡る。閉門を知らせる鐘の音に町中が慌ただしい気配に包まれる。
門外の田畑から戻って来るもの、旅装の者が慌てて門に向かい、町の中心を通る飲食店は、稼ぎ時の時刻が迫っているので、厨房をフル稼働させる。
そんな慌ただしい飲食店の中に一際忙しい店があった。周囲の飲食店の客入りに比べ遥かに多い客を忙しなく捌いていた。
恰幅の良い女性が切り盛りしている昔ながらの食事どころでありながら最近になって食べたことのない、新しい料理を提供することで、人伝に評判が広まり連日大賑わいを見せていた。
「…今日も凄い並んでる」
俺はそんな店を見て、どうするか悩んだ。この店の提供する料理は、ミライさんが教えた料理で、使っている香辛料もミライさんの店で扱っている品物だ。
そして、何よりミライさんの作る料理はどれもとても美味しい。
何度かミライさんや、アロマさんの料理を食べていると、普段食べている食事が、とても味気ないものに思えてしまい、俺はこの店に通ってしまっている。
初めのうちは、それほど賑わってもいなく常連の客たちが寛いでいた店だが、広がった評判により、今や常に大賑わいを見せる人気の店となってしまった。
俺は情けなく何度も空腹を訴えるお腹を擦り、今日は自炊しようと決めた。
並んでいる人が沢山いたため遠慮したのである。
「何があったかな…」
俺は自分の家に向かいながら家にある食材を思い出す。
確か、買ったパンがあと何個か残っていて、野菜もあったはず。
じゃがいもと、ニンジンと、玉ねぎ、キャベツ…あと、ミライさんから貰った『コンソメ』があるから、それでスープを作ろう。
野菜とみずからと『コンソメ』があれば美味しいスープが出来る。あと、肉が入っていれば、もっと美味しくなる。
俺は少し奮発して帰り道にある肉屋に立ち寄り燻製された豚肉と腸詰めを少し買い家に帰った。
集合住宅の最上階は家賃が安い。夏は暑く冬場寒く階段も急で大変だからだ。
俺は階段を登りながら、ふと明かりとりの窓から外を見た。小高い丘の上に建っているミライさんの屋敷が見えた。
彼女のお陰で、自分は生きられた。食事を与えられ、仕事を与えられた。そのお陰で自分は人並みの生活が送れるようになったのだ。
「ミライさんには、本当に感謝しかない…」
明日は、また店の開店日だ。ミライさんのレシピにより繁盛するようになったメリダさんの店の話をしてあげよう。
今度はどんな商品をミライさんは持ってくるだろうか。
俺は目を細めて丘の上の屋敷を見ると足早に階段をかけ上がった。




