実は店主のお手製なんです
男を追い返した俺が庭に戻ると客たちは思い思い目当ての商品を抱えていた。そして他の商品を見ては興味深そうに目を輝かせている。
ミライさんはそんなお客さんの会計を捌きながら、どんな商品に需要があるのか見定めるように敷物の上の商品を見ていた。
「ミライさん、会計代わりますよ」
「ありがとう、イシュー君。それじゃあ私は実演販売しようかな」
ミライさんはそう言いパラソルから出ると果物の場所に向かいあまり売れていない商品を少しずつ切り分け始めた。
「どうぞ、味を確かめてみて下さい。甘酸っぱくて美味しいですよー」
ミライさんはそう言い黄色っぽい実の皮を剥いて小皿に乗せた。お客さん達は味が気になるのか小皿に手を伸ばし味見をすると何個か買ってくれる人が出てきた。
商品を味見させるなんて勿体ないと思っていたが、ミライさんは『味がわからなきゃ、買ってもくれないよ』と言って笑った。確かに、味を説明するよりも実際に食べてもらった方がお客さんの味覚に訴える。美味しければ買ってくれる。
ミライさんは幾つかの果物を味見に出すと、それらはあっという間に売れてしまった。
「ありがとうございます。バナナ完売でーす」
「ありがとうございます!」
果物や野菜を求めるのは主婦の人が多いが、中には料理人らしき人もいる。味を確かめられるのがありがたいと口を揃えて言うから、ミライさんの売り方は正しいのだと思う。
「嬢ちゃん、今日は『梅酒』は無いのか?」
「すみません、この間の分で暫くは無いんです。今、丁度漬け込みしてますので、早くて三か月後になります」
「…嬢ちゃんの手製だったのか?」
「えぇ、そうですよ。梅酒と、梅ジュースと、梅干は私の手作りです」
「見事に梅ばっかりだな…」
「ふふ、梅の実を沢山譲ってもらいますから梅づくしなんです」
常連のおっさんがミライさんに話しているのを何となく聞きながら俺は会計のお客さんを捌く。
「今日も暑くなりますから、梅ジュースはいかがですか? アルコールはないですけど、甘酸っぱくてサッパリしますよ。はい、試飲どうぞ」
「梅ジュースか…いただこうかね」
おっさんがミライさんから進められた梅ジュースを飲むと顔をしかめた。
「割りと酸っぱいな…」
「ふふ、その酸っぱさが身体の怠さや疲れを取るんですよ」
「んじゃ、1本貰ってくかね」
「ありがとうございます」
並んでいる商品の中にミライさんの手作りがあったなんて知らなかった。俺は改めて敷物の上の商品を見直した。
「他にも嬢ちゃんの手作りあるのかい?」
「えぇ、焼き菓子は私が作りました」
「そうなの!? どうやって作るの?」
あ、ミライさんが主婦の方々に捕まった。レシピを知りたいと散々言ってたからな。獲物を逃がすかという気迫が伝わり俺は会計に集中することにした。
主婦の方々には、絶対敵わない。
「ありがとうございます。またお越しくださいませ」
イシューの笑顔が輝いていた。




