いらっしゃいませ!
イシューが門に向かうとすでに門の前には何人も列を成していた。イシューの姿に気が付いた常連のおっさんが親しげに声をかけてくる。
「開店するのかい?」
「あぁ、でも走ったり押し退けたりしたら外に放り出すからな」
「わかってるよ、ちゃんと、順番に譲り合うんだろう?」
「そうそう、じゃないと店長が怒るからな」
「嬢ちゃんを怒らせたら出入り禁止で何も売ってくれなくなるからな…」
「それが理解出来てれば上等だよ」
おっさんとの会話で並んでいたうちの数人は押し退けてやろうという顔付きをしていたが、バツの悪そうに明後日の方を向いたりして軒並み大人しくなった。
わかりやすいな。
「はい、じゃあ開店しまーす」
俺がそう言い門を開くとおっさんがするりと敷地内に滑り込んできた。その際チラリと俺を見て肩を竦めて見せた辺り、さっきまでの会話が周りを牽制したものだとわかる。喰えないおっさんだと俺も肩を竦めて返す。
押し合いはしないが、誰も彼もが軒並み早足で門の中に入ってくる。その時、門が淡い光を放ち一人の男性を弾き飛ばした。
その相手を見て、俺は肩を竦める。
「また、貴方ですか。懲りませんね。何度も言いますが貴方は『出入り禁止』なんです」
「っ…しかし! たかがガキを一人突き飛ばしたくらいで、出入り禁止だと!?」
「うちの店長は、そういった方に売るもの何もないそうです」
「ふざけるなっ!」
「とにかく、貴方は『出入り禁止』ですので。お引き取り下さい」
俺はそう言い男に背を向けた。この門に宿るのは守護門番だ。ミライさんが出入り禁止と決めたものは、何であろうと通さない。
そう、例え出入り禁止の者が放った魔術でさえも。
俺は背中に感じる殺気の籠った魔力の高まりにチラリと後ろを見たが、あれくらいの魔術で守護門番を突破出来るとは到底思えない。
俺は未だ門の外にいる他のお客様に声をかけた。
「門の中は安全ですので、お早くお入り下さい」
「喰らえ! 焔の刃!」
男の放った魔術に、まだ門の外にいたお客さんたちが慌てて門の内側に入った。
炎で出来た刃が門を切り裂こうと迫るが、守護門番の宿る門にぶつかる寸前、炎の刃は透明の盾に弾かれ、その場で霧散した。
「なっ…嘘だろ…っ!?」
「………はぁ、だから言っただろう。この門は出入り禁止の『なにものも、通さない』って。つまり魔術も通さない。貴方の魔力は既に登録済みですので」
「………」
「では、これが最後です。どうぞ、お引き取りを」
「くっ…」
俺の言葉に男は悔しそうに唇を噛み締めると踵を返して去っていった。俺は門に触れると小さく呟く。
「………ありがとう。ミライさんを護ってくれよ」
俺の言葉に触れた門が微かに熱を帯びて了承の意思を伝えてくれる。俺は唇を弛めると接客に戻るため庭に戻った。




