第319話:棚ぼたの2位
6半荘目。
東1局。和弥は北家スタート。ドラ五筒。配牌はお世辞にもいいとは言えない。
(これは誰かが張ったらオリでいいな…)
例の中年からは十分金を吸いつくした。時間的にもこれがラス半の可能性が高いだろう。
しかし東と發が重なり、あれよあれよと最終形はこうなっていた。
三索をチー出来て、一応、下家の親の現物の七索を切って混一色テンパイ。テンパってすぐ次の巡目、東をツモってきて和弥のアガリ。
「ホンイツ・東・白。2,000・4,000の満貫」
幸先良いスタート。
南4局。和弥の親番。ドラは七筒。
トップ目対面と2位の下家の攻撃の煽りをいささか喰らい、トップ目とは6,800点差の3位の和弥。
トップ目と2位も超僅差、お互いに一歩も引けない状況。
役無しとはいえ、赤2枚のイーシャンテン。
(俺もオーラス親番、引く気はない……)
テンパイしたらリーチを打つつもりでいたが、2位の下家からリーチが入る。少しして和弥、ドラの七筒を掴んで、イーシャンテンの牌姿。
(これはまずい)
先ほどリーチ者の捨て牌は明らかに順子系。そのリーチにドラの七筒を打つなど自殺行為もいいところだ。四・七筒は大本命だ。
それに加えて、和弥のこの役無しイーシャンテンの出来が悪すぎる。
五・八索は一枚も見えてないのに、一向にツモれないのだ。
(止むを得ない……)
ノータイムで現物の北を切って、オリを選択。その後、さらに四筒2枚を引いてきて、確信。
(クソ…どこまでも四・七筒を打てと言ってきやがる…)
数巡後、食いタンヤオのテンパイを入れていたトップ目対面が、仕方ない、といった感じで、ドラの七筒を切る。
見事に下家の当たり牌だった。メンピン・赤・ドラ、7,700アガリが横移動。
結局和弥は逆転2位で終了になった。
「若いに走られちゃ、老いぼれの出る幕はなさそうだな。俺は洗うぜ」
トップから3位に転落した老人はそのまま帰り支度を始めた。
すると、それに乗ずるかのように6連続ラスの中年も立ち上がった。
「俺もタマ切れだ!!今日は日が悪い。出直すっ!!」
秀夫を顔を合わせる和弥。つまり、卓割れだ。和弥は思わず安堵の溜め息を漏らした。何か6半荘目から空気がおかしかった。
丁度“洗い時”だったのかも知れない。
「和弥くん。コーヒーでも淹れようか」
立ちあがるなり秀夫が言う。
「すいません、いただきます」
「麻雀部には顔を出してるの?」
「ええ。部長やってた3年が突然辞めましてね。ルールやっと憶えたばかりの一年もいますし」
「綾乃ちゃんだっけ。辞めちゃったんだ」
「小百合と紅帝楼でサシウマ勝負して。負けたら東堂先生にいきなり『やめる』って伝えたそうですよ」
「ふうん。まあ何か思うところがあったんだろうさ」
話が一段落ついたところで、丁度コーヒーが出来上がったのだった。




