第313話:大逆転
南2局。親は今日子。
ドラは六索。
ここからどう手を伸ばす───。
また七対子? それともポンからの加槓でドラを増やして一発逆転を狙うか?
(いや───)
小百合は腹を括って、どの形に向けて手を進めるかを決めた。
ここから絶対にブレないという───覚悟。
粛々と、牌が切られてゆく。小百合と綾乃はそのまま面前で手を進める形に。
今日子は六筒を、由香は白をそれぞれ鳴いていた。
9巡目にはイーシャンテン。必要牌はまだ山にたくさん残っている。
(まだよ……)
次の巡には、また牌が入ってきた。手が進む。
そして10巡目───テンパイ。
「リーチ」
『リーチデス』という女性の電子音声が響くなか、小百合は1,000点棒を取り出し、並べる。
来い!
……2巡目に切った牌───九萬だった。
(まだよ……!)
「私も張ったよ」
ニンマリと笑った綾乃が、点棒入れを開ける。
「リーチ!」
「部長、リーチしていいんですかね?」
後ろで紗枝が和弥にそっと聞く。
「多分役無しなんだろう。でも先輩の状態からして赤もドラもある好形……」
絶対にここで引く訳にはいかない。最後のチャンスだ。
望みを託して、ツモって来た九萬を切った。
「ポン!」
今の九萬鳴きで、三副露。これで由香の手牌は四枚。
───さすがに聴牌テンパイだろう。
ポンなので、ツモらず由香の手牌から牌を切る。
(来い!)
……八索。当たり牌ではない。
そして、自分のツモ───
タァーンッ
指を離す。四索だった。
来た───
「……ツモ」
小百合のツモだった。
倒した牌を見た綾乃の表情が凍りつく。
「メンピン・ツモ・三色・ドラ。3,000・6,000」
「な……」
裏も乗ったけどこの際関係ない。
「……まだよ。最後に1,000・2,000をアガれば、私の勝利だ」
とはいえ驚嘆する3人───いや、後ろの和弥・紗枝・莉子の3人である。
自分も予想していなかったタイミングで当たり牌が来たため、これ以上の言葉が出て来ない。
そして───
「ははっ――」
「あっはっは!」
さっきまでの張りつめていた空気が嘘だったかのように、一斉に笑いだした。
周囲の客が、一体何事かと全員振り返るように。
「はぁー……面白かった……」
「そ、そこでっ……三色までもっちくんださゆりん」
「久々に……こんな大逆転をしましたよ」
「……まだよ。最後に1,000・2,000をアガれば、私の勝利だ」
意図してできたことではない。偶然の積み重なりの結果がこの大逆転劇だった。
自分の理想通りから来る刺激に、脳内麻薬が溢れ出てくる。
(私は自分の麻雀を打つだけ)
南3局。小百合の親。
「ツモ。タンヤオ・ドラドラ。4,000オール」
トドメの親満を、小百合が上がった。




