第312話:勝負手・7
「リーチ」
小百合の果敢なリーチ攻めであった。しかし、次の巡目に引いたのがドラの一索。
仕方なく切るが
「ポン」
早速ドラを綾乃に鳴かれてしまった。
混老頭の気配が濃厚である。
(まずいわね…。部長はハネ満コースだわ)
「ツモ」
小百合の願いが届いたのか、アガったのは綾乃ではなかった。
「タンヤオ・赤2の3,900」
今日子である。恐らく形が悪いので手変わりを狙っていたところを、ツモってしまったのだろう。
1,000点を今日子に渡す小百合。
リーチ棒も回収されてしまったのは、痛い。
そして、由香の親が流れたため───南入である。
南1局。再び綾乃の親。ドラは南。
対面の綾乃は好牌が続いているらしい。順調に么九牌が出てきている。
逆に小百合は焦っていた。
一萬、九萬と捨てて行き、様子を見ていく。
7巡目になるころには───
イーペーコー───うまくいけばリャンペーコーまで見える形にまで来ていた。
ここでドラだが南を切った。
次で三・六筒、二・五萬のどれかが入ればリーチだ。
しかしここでツモ切りが3巡続く。
11巡目でようやくニ萬が入ってくる。三・六筒待ちリャンペーコーでテンパイ。
(逆転はまだ狙える───!)
「……リーチ」
八索を切って牌を横向きに置き、小百合は点棒を出した。
自分が逆転トップになるためには、最低でも綾乃に親被りさせたい。
「カン」
ここにきての、由香の八索大明槓。
「なっ……」
(ここでドラを増やした!?)
開いた新ドラは一筒───。手牌でドラが増えはしなかったが、これで裏ドラの枚数も増える。
強烈な誘惑だったが、当たり牌は出て来ず。そのまま流局した。
「テンパイ」
「ノーテン」
「テンパイ」
「テンパイ」
今日子以外は全員テンパイ。
「一本場だね」
「ええ、まだまだ終わりじゃありません」
親の聴牌テンパイ流局だったため、南一局は続く───
南1局・二本場。ドラは白。
またも七対子のイーシャンテン。
(こんなこともあるのね…)
最終的に北で待つべく、じっと息を潜める小百合。
しかし次の巡で、小百合は耳を疑った。
「リーチ!」
「はっ!?」
まだ3巡目に綾乃が發を切ってリーチをかけてきたのだ。緊張感が倍に膨れ上がる。
(ノーヒント状態……)
こうなるともう、ただの運試しである。
祈りながら牌を切っていく。が、決して守りに入らない。
(どこまで保つかしら。麻雀の神様、お願い)
4巡目。小百合にニ索が入ってきた。
が、ここで北とニ索を入れ替え。
(ここでベタオリしたら、勝負はほぼ決まってしまう)
よって、ダマテン勝負を選択した。
そして6巡目で幸運なことに、綾乃からニ索が出てきた。
「ロン! 6,400の一本場で6,700」
これで綾乃との点差は大分縮まった。
とはいえ遠い。
綾乃のことだから、いざとなったら今日子を狙い始めるかも知れない。そう考えるとハネ満あたりアガらないと足りない可能性がある。
「なかなか終わらないねぇ」
「…………」
嬉しそうな綾乃に対して───雰囲気に飲まれたのが一言も発さない今日子。
我関せずといった調子で鼻歌を歌う由香。
勝ちの見えない勝負を前に、ガリガリと小百合の精神力が削られてゆく。




