第311話:勝負手・6
そして小百合の次のツモは、赤五索。七索を引いたときは気付かなかったが、小百合の手は567の三色を狙える牌姿であった。現状、こうなっている。
当然、小百合は一筒切りのテンパイに取った。
(一発で七索を掴んだときはもうダメだとも思ったけど、こんなこともあるのね)
と小百合は感嘆していた。テンパイ復活どころか、赤を引き入れたことによって先ほどより打点も高くなっている。
唯一の問題は、新たな待ちである六索は綾乃にとっても危険な牌であり、他の2人から出ることはまずないということだ。アガるにはツモるしかない。
今日子と由香は相変わらず安全牌切り。綾乃は八索ツモ切り。
そして小百合のツモ───七索。
(………オリるつもりがないならリーチよっ!!)
手の内にある七索とツモってきた七索を、小百合は入れ替え点棒入れを開ける。
「リーチ」
七索を横に曲げ、1,000点棒を出す小百合。
「リーチ合戦かあ……。困ったなあ」
現物を合わせてくる由香。
「あたしも、一発は避けとくわ」
今日子も現物を合わせてきた。
「これで私と小百合ちゃんのめくり合いだね」
「………」
さしたる緊張感も見せない綾乃に対し、小百合は押し黙ったままだ。
そのままパシン、パシンと4人が牌を打つ音だけが響く。
紗枝がグルリと卓を一周したあと、和弥の元に戻ってきた。
「竜ヶ崎先輩……。待ちは部長の方がいいです」
「だろうな。捨て牌で手なりの好形待ちだと分かる」
役があろうがなかろうが、ここで一気呵成に叩き潰すのが綾乃のスタイルだ。少なくとも5,200はあると見ていいだろう。
しかし、このリーチ合戦は思わぬ形で幕を閉じた。
「ツモ。チートイのみで800・1,600」
いきなり横から七対子をアガってきた由香。
小百合は自分の手牌の良さに目が行き過ぎて、河を見ていなかった───。それにしても由香のアガリとは。一体誰が想像しているだろうか。
「サシウマもいいけど。あたしもいること忘れないでよね」
「くっ……」
小百合は由香に1,600点を渡す。リーチ棒と合わせて2,600点の出費だ。
綾乃をこれから追いかけようとするこの親で、痛い点棒流出である。
「やるじゃん。由香ちゃん」
綾乃は1,000点棒を渡し、お釣りの200点をもらう。その表情に暗さはない。綾乃にしてみれば、最低限の出費で小百合の親が流れたのだから、ここでのマストは達成である。
「さ、あたしの親だね」
点棒を回収し終えた由香は、ゆっくりと収納口に牌を落としていった。
東4局。親は由香。ドラは一索。
小百合は真っ先に么九牌を切っていく。
7巡目からは清一色チンイツも見え始めていた。
が、今度は今日子が5巡目でリーチ。
逃げつつ、少しずつ筒子を削っていき、七索待ちのイーペーコーでリーチをかけるところまで持っていった。




