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第310話:勝負手・5

 (トン)3局。ドラは七萬。


「さて、あたしもそろそろアガりたいなぁ。このままじゃ、全然麻雀打ってる気がしないしね」


 下家の由香が、第一打に東を切りながら呟く。

 一方の小百合だって他人事ではない。ここまで一度のアガリもない上に、一本場の大きなマイナスが残っている。一度で全てを取り返すというワケにはいかないだろうが、少しずつでもプラス域に持っていかなければ。

挿絵(By みてみん)

 配牌はいい。既に親満が見えている。なんとか上手く纏めて早めにアガりたいものだ。

 第一打に東を手放した由香以外の2人は、至って平凡な字牌切り。小百合の第一ツモも西だったので、2人に続いてそれを(ホー)に並べた。

 前局とは打って変わり、この局は静かだった。全員がそれぞれ打牌を繰り返し、手を進めていく。

 6巡目、小百合の手牌はこうなっていた。

挿絵(By みてみん)

 一筒を引いたのは早かった。今日子から四筒が出たら一通を確定させようと考えている。

 しかし、次巡に小百合は自分で四筒を持ってくることができた。

 さて、選択だ。カン八筒の一通を取るか、両面に取れる平和の三・六筒にするか。そしてまたリーチをかけるか、ダマにするか。

 ドラが3個あるので打点は十分ということを考慮すると、もっともアガりやすい平和三・六筒待ちのダマに取るのがいいように思われる。しかし、このレベルの面子ならダマであろうと巡目が進めばちょっとしたキッカケでテンパイ気配を悟られてしまうかもしれない。それなら最初からリーチをかけて少しでもプレッシャーを与えるべきか。

 そう考えると、逆に打・五筒の引っ掛けカン八筒はなかなかいい選択にも思えてくる。上級者相手にはただの両面よりもこういった理由のある待ちのほうがこぼれる確率は高い。無論、逆に引っ掛けであると看破された場合はツモるしかなくなるので苦しくなる。カンチャンなのでそのデメリットは猶更だ。

 ならば完全ツモ狙いの三・六筒待ちリーチか。───いや、そもそも三・六筒は既に自分で2枚使っている上、由香と今日子の河に一枚ずつ切られている。加えて綾乃の河に筒子が切られていないことを考えると、山に残っている数は少ないだろう。

 様々な情報を基もとに最終的に小百合が下した決断は、五筒切りのダマであった。三・六筒は残り少ないハズだという推測が決め手であった。

 ちなみに八筒はまだ一枚も見えていない。綾乃が持っているということも考えられるが、他の2人が掴めば出てくる可能性はある。そのためのダマでもある。

 それから3巡、なにも起きなかった。選ばなかった三・六筒も出てきていないし、ツモりもしていない。このまま流局となってしまうのだろうか?


「リーチ」


 ───そうもいかないらしい。綾乃が三萬を横に曲げて河に置いた。

 先制は小百合が取れていたが、こうなってしまえば関係ない。小百合は苦しい心境でツモ牌に手を伸ばす。

 引いてきたのは七萬。───綾乃に対してかなり危険な牌だ。一通は崩れてしまうが、ここは比較的安牌である筒子を落としていって手を作り直すべきか。

 それほど悩むことなく、小百合はそうした。ここで放銃し、彼女を好調にさせるワケにはいかない。打・九筒。

 今日子と由香は手出しで現物切り。綾乃の一発ツモは───七筒。アガりではなく、河に打ち出された。

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