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第279話:過ち

65,000PV突破、ありがとうございます!

 (トン)2局。ドラは三索。満貫を和了った割には、和弥の配牌はよれていた。


「そういえば、勝負はどうするんだ?」


 和弥が菱崎に問いかける。


半荘(ハンチャン)5回でどうだ? 3勝した方が勝ち」


「OK。それでいい」

挿絵(By みてみん)

 これが和弥の配牌だ。


(一応5ブロックはあるが…聴牌(テンパイ)までは遠そうだな)


 観戦しながら、麗美も同じことを考えていた。


(さて、菱崎くんの配牌は…)


 はたしてどのように影響するのか。


(楽しみだね!)


 しかし、一方の菱崎の手も平凡そのものであった。

挿絵(By みてみん)

(苦しい手だな…123の三色狙いか)


 菱崎はチラリと和弥を見た。さて、どうするべきか。脇のサラリーマンがまた親流しに来るのはまず間違いないと言える。一方、親のサラリーマンはいい手が来て満足なのが表情に出ているのを隠そうともしない。


(相手の手元を観察していたほうが得策か…)


 特にこの手では親流しも無理だ。菱崎は内心ブツブツと文句を言いながら南から切っていく。

 上家の西を切るサラリーマンの動きを注視して見届けたあと、菱崎は自分のツモに手を伸ばした。

 ───ツモが良ければ何とかなるのもまた麻雀だ。菱崎の失意とは裏腹に、進み具合は良好だった。

挿絵(By みてみん)

 2枚の赤を引き入れ、7巡目にこの形。できることなら両面で聴牌したいところである。

 次巡、六索を引いてきた。ツモ切ればカン三索待ちが残った場合にスジ引っ掛けにはなるが、菱崎はまだ伸ばすつもりで二索と入れ替えた。

 ここまでサラリーマン2人に目立った動きはない。直接の対戦相手である和弥も未だ手出しを続けて苦戦のような。


(もっとも、俺が気づいていないだけかもしれない。用心だ)


 1巡ツモ切りを挟み、その次に、七索を引いて役アリ聴牌になってくれた。菱崎は先ほどの満貫を取り返す意味でも牌を横に曲げた。


「リーチ」


(さて、菱崎くんのリーチに対して、竜ヶ崎くんはどう動くのかな。ベタオリか、回し打ちか、それとも真っ向勝負か───)


 意外というか、和弥は合わせ打ってきた。恐らくは手が伸びないので“捨てる局”と判断したのだろう

 そしてサラリーマンの一人が小考ののち、六索を手出しで切った。思わず、ロンの声がどもる菱崎である。


「え、当たりなのかい!?」


「7,700です……」


 裏ドラ乗らず。だがまずまずのスタートを切ることができた。――にしても、まさか一発で当たり牌を切ってくるとは。もしかしたら、もう聴牌していたのだろうか? それならわからないこともないが……


「あーあ、三萬はそこに3枚か。和了(アガ)れると思ったのに。見てよこの手」

挿絵(By みてみん)

 パタリ、と手を倒すサラリーマン。和弥は何も言わずに牌を伏せた。


 純チャン三色の一向聴(イーシャンテン)だが、愚形ばかりで押す価値があるとは思えない。それに純チャン三色を作るつもりなら、六索など持っている意味がない。後々危険牌になるだけである。

 加えて、彼が一発目に切った七はあの牌姿ではまだ使い道がある。向聴数を落とすことにはなるが、索子(ソーズ)の上を落としていけば十分に回れるではないか。

 和弥が一瞬だけ笑い、牌を収納口に落としていく。この時菱崎は和了ったにも関わらず、初めて重大なミスに気付いた。


(しまったっ! こいつら2人、素人に毛が生えた程度の打ち手だっ!!)


 失礼極まりない考えだが、正直、麗美も菱崎と同意見であった。紅帝楼(こうていろう)の常連である和弥だけはそのことを知っていたのだ。

 そりゃ、麻雀なんだからツキの上ぶれ下ぶれはある。

 しかし『麻雀知ってる人間に入ってもらうべきだった』などと後悔してももう遅い。

 東3局。唯一和弥だけは平然と山から牌を取っていく。

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