ep 狸
今週から復活頑張るぞ~!
「それにしても、古びた神社ッスね。鳥居にコケが生えてましたし、灯りの一つもないッス」
黒笑が言う。
「確かにな。この神社に入ってから ≪怪≫ の匂いがするな。それも格段と強くなっている」
匂い? 匂いなんてしないけど。いや、違う。きっと慣れてしまったのだろう。来すぎたのだ。居すぎたのだ。だから、何とも思わない、感じない、匂わない。
「気を付けろよ」
「分かったッス!」
それから、私たちは神社の中央にある本道に向かった。途中 ≪吸血鬼≫ が気にくわなそうな、嫌そうな顔をした。初めて見る表情だった。 ≪吸血鬼≫ 曰く、信仰や、崇められていない ≪怪≫ にとってはこのような神聖な場所は毒らしい。逆に言えば、信仰されたり崇められたりしているのは平気。むしろ、心地の良い住みかになるのだとか、つまり、神である。神もまた、 ≪怪≫ である。 ≪神≫ の裏は ≪怪≫ である。 ≪怪≫ の裏は ≪神≫ と言う事だ。表裏一体の関係。そのような話を聞いていると、本堂に着いた。
「何と言うか、汚なッ」
「言うな!」
ボカッと音がなった。否、聞こえた気がした。黒笑の頭を ≪吸血鬼≫ が殴った。無表情で。良く見れば違った。呆れた顔だった。
「良し、開けろ」
本堂の扉に指を差し、黒笑にいう。
「・・・」
口を開けポカンとしていた。そりゃそうか。
「口を開けるのではなく、扉を開けろと言っている」
「いやいやいや! 場違いじゃないッスか!」
確かに。
「場違いも何も、汚いって言いかけていただろう?」
うん! 正論! 試合終了! ≪吸血鬼≫ の勝利! ウィナー!
「分かりましたッス。呪われませんかね?」
≪吸血鬼≫ は反応しない。ソッと目をそらす。斜め二十五度位。
「エェイ! やってやりますよ! おりゃァァァ」
行き良いよく、開ける。が、中には何もなかった。
「何も、無いッスね」
「フム。あるぞ。急須が」
ポツンと本堂の中央に置いてあった、それとも、落ちてあった? まぁこの際それについてはどうでも良いが、なぜ? なぜこんなところに急須が?
「匂いの正体はアレか」
アレ? まさか、急須のこと? つまり、急須が ≪怪≫ って言いたいの? まさか。
「中は何も、入ってないッスね。裏はどうなってます?」
「ひっくり返すか」
淡々と作業を行っている、って待てェェェ!
「何をしてるの! 駄目でしょ勝手にしたら!」
「裏は何も無しッスね」
「その様だな」
「聞いてるの!」
この二人は、なぜ人の話を聞かない!
「・・・壊すか?」
「一旦壊しましょう」
「駄目ェェェ!」
この二人は、一体何を考えているの! 壊す? どうしたら、そうなった? そもそも、神社にしかも、本堂に在るものなんだから、もっと丁重に扱えってよ!
「ホンマやで。ありがとうな、嬢ちゃん。危うく死ぬとこやったわ」
ん? え? 急須が関西弁で喋り始めた、と。あっこれ ≪怪≫ だ。
「ヨット、危ないで」
一歩後にバク転する。すると、急須はタヌキに変身した。否、タヌキが急須に変身していたのだ。
「さてと、君らはアレか? あの。招かれざる客ってところか? ちゃうか? それとも、この神社を荒らしにきたアホ共か? どっちや?」
二足で立つタヌキ。黄色に光る鋭い眼、獣の匂い、そして、懐かしい匂い。
「アレ? 嬢ちゃんどこかで会おたか? どっかで見たことがあるで・・・アア! 思い出したわ! この神社で隠れてた子や。人間達の中では失踪したとか言われてた子どもや!」
笑顔でこちらに指を差し少し大きな声で言ってくる。ソッと二人の方を見る。
『・・・・・・』
無言! 無音! 沈黙! 二人の視線が刺さる!
「説明をしてもらおうか?」
「そうッスね」
不味い! 逃げられない! クソぅ、仕方ない説明するよ。ワタシは多少ヤレヤレ感を出しながら口を開いた。
第三話 急須はタヌキ




