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狼な俺のフィアンセは、98歳〜真実の目で本性を見る少年は、老婆な婚約者を溺愛する〜  作者: ジュレヌク


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死闘の行く末


「一体、何がどうなっている!」



我が子が、目の前で弄ばれるように串刺しになっていく。


大きなドーム状の結界の中には、敵らしき黒い霧とウォルフが閉じ込められていた。


その周りに、中に入ろうと結界に体当たりを続ける魔物が、砂糖に群がる蟻のように張り付いている。



「父上!そいつらの始末、お願いします!」



傷だらけになりながら、ウォルフは、俺に向かって叫んだ。



「その魔獣は、栄養源なんです!コイツに与えたら、更に魔力を与えてしまいます」



なんて事だ。


ただでさえウォルフは、一方的にやられている状況だ。


もし、敵が、これ以上の力を手に入れたら、もう誰も太刀打ちできない。



「今、魔獣の意識は、あの黒い霧に注がれている!背後は死角だ!急所を狙って、一発で仕留めろ!」



俺の指示に、部下達が一斉に走り出す。


既に満身創痍。


皆、ボロボロの体に鞭を打ってくれる。


ウォルフは、幼い頃からドラコに預け、魔力の使い方を徹底して学ばせてきた。


それ故に、騎士団の連中とは、あまり親密とは言えない。


それでも、幼い頃から知る子供だ。


彼らも子を持つ親。


何かしら思うどころがあるのだろう。


精鋭部隊の名に恥じぬ、見事な剣捌きで、小型の魔獣から次々に倒していく。


俺は、剣に気を込めると、中型の魔獣を中心に倒していった。


しかし、悔しい事に、倒しても、倒しても、どこから湧いてくるのか、数が一向に減らない。


ウォルフに目をやると、魔力を剣の形に練り上げ、黒い霧と対峙していた。


流れ出る血の量を見ると、そう長く持ちそうにない。


一体、どうすりゃいいんだ!


頭を抱えた俺の横を、



「お前が諦めてどーする!」



ドラコが怒鳴りながら駆け抜けていった。







ドゴォン






ドラコの一振りで、その辺りに居た魔獣が一度に消えた。


蒸発する水のように白い煙を上げながら。



「ドラコ、お前、何をした!」



戦場の死線を一緒に掻い潜ってきた友。


奴の攻撃力は、嫌と言うほど知っている。


しかし、今の一撃は、桁外れだ。


何か、やばい禁術にでも、手を出したとしか思えない。



「変な想像するな!ターシャが補助魔法を掛けただけだ」



「いやしかし、この破壊力、通常の十倍はくだらな・・・」



言い切る前に、思い出した。


魔導士団副団長ターシャ・ボホールには、伝説が残っている。


三歳の時、仕事に向かう父親に、いってらっしゃいのキスをした時の話だ。


ある日、いつもは頬にするキスを、唇にした。


すると、彼女の父は、練習中に放った火炎弾一発で、訓練棟を消滅させてしまった。


直ぐに原因調査が行われ、判明したのは、ターシャ・ボホールの補助魔法の強力さだった。


歴代の中でも、彼女に勝る人間は居ない。


しかし、方法が方法だけに、あの日以降、誰にも使用されていないはずだ。



「ドラコ、お前、彼女の親父さんに殴られる覚悟、しとけよ!」



「どうせ殴られるなら、婚姻の申し込みもして、殴られるさ」



ニヤリと笑う奴の目が、心底楽しそうだ。


やっと覚悟が決まったのか。


ボホール嬢は、もう何年もドラコに気持ちを伝え続けている。


それを、この馬鹿は、なんだかんだ理由を付けて、断り続けていた。


側から見れば、嫌っていない事は一目瞭然なのに。



「やっと、お前も、年貢の納め時か!」



「その為にも、生きて帰るぞ、リズリー!」



生きて帰る。


当たり前のことを、俺は、ついさっきまで忘れかけていた。


そうだ、このまま死んでたまるか。


俺は、まだ、妻を愛し足りていない。
























我は、随分昔のことを思い出していた。


魔の国の王として、全世界を闇で覆い尽くすまで、あと一歩の時だった。


突然変な男が、我の前に現れ戦いを挑んできた。


世間では勇者と祭り上げられる奴は、自分を異世界から呼び寄せたこの世界に対し、明らかな憎悪を抱いていた。




何の為に戦う?




我の問いに、奴は、




同じ不幸を重ねない為だ。




と静かに語った。


その後、互いを切り刻むような激闘を制し、奴は我の体を葬った。


だが、我の魂は、死んでいない。


再び力を取り戻す為に、別のものから魔力を奪う術を密かに作り上げた。


初めは、草、花、木、動かぬものを、


次に、光に集まる虫を狙い、


その次に、鼠などの小型動物を食らっていた。


そして、偶然にも見つけた。


無防備に寝そべる神獣を。


近くに寄るだけで、その漲る魔力に力が満ちるのを感じた。


我は、考えた。


コイツを鼠に変えて食らえば、一気に元の姿に戻れるのではないか?


数日、神獣に気付かれぬよう付き纏った。


そして、眠る間に、徹底的に魔力を吸い込んだ。


そのお陰で、猫の体を器に、実体を持つことが可能になった。


それから一年。


気が満ち、やっと、神獣を鼠に変えた、


その途端、見計らっていたかのように、奴が現れた。





なんじ、名を名乗れ」



『こんな惨めな姿になって、名乗る名なぞあるものか』



「気に入った。お前を我の配下にしてやろう」




たったこれだけのやり取りで、チューニー・チャツボットは、神獣に従属の魔法をかけてしまった。


単純なことだ。




相手に問い、



相手が答え、



従属の意思を問いただし、



答える前に術をかける。




神獣にすれば、我に食われるか、奴に支配されるかの二択。


騙し打ちだとしても、悪い結果ではなかっただろうが、手際の良さに策略の匂いを感じた。


まさか、ずっと我を見張っていたのか?


奴の蹴り一発で、再び実体を失った我は、再び虫を糧に生き延びた。


そして、今度は、我が、奴に張り付いた。


神獣を横取りした理由が、異世界へ帰る為の動力源だと知った時、我は、心底喜びに震えた。


この世だけでなく、奴の世界も我が物にすれば、どれだけ清々しいことだろう。


我は、待った。


チューニー・チャツボットが、異世界への扉を開ける瞬間を。


しかし、その時は、奴が死ぬまで訪れなかった。


その上、我の獲物を本の中に閉じ込めおった。


憎しみを糧に、我は、報復の時を待った。


奴の文字が読める娘も用意した。


その対価として、再び貯めた魔力を全て失ったが、赤子が使い物になるまでには、まだまだ時間がある。


前世を忘れぬよう、目玉に老婆だった頃の姿を焼き付けてやり、我は、再び地に潜った。


千年。


ただ、この日を待ち望んでいた。


それを、こんな童に奪われてたまるか。

























ズサッ




甚振るように、奴は、俺の右脇腹を貫いた。




ガハッ




俺は、血を吐き、地面に手をつく。


既に、体力も気力も限界だ。


結界も、あとどれくらい張れるか分からない。


解ければ終わり。


樹洞の中のオトミーも、直ぐに引き摺り出される。


魔力で作り上げた剣で、徐々にだが、奴の一部を消す事に成功した。


しかし、このまま俺が死ねば、忠兵衛とオトミーを取られ、異世界までをも巻き込んだ混乱へと突き進む。



「仕方ないか・・・」



この結界の中、奴の逃げ場もない。


俺の残された全てを燃やし尽くし、奴を道連れに消滅するか。


俺は、オトミーのいる大木を見た。


彼女と結婚し、一生大切にしてあげたかった。


ごめんな、オトミー。


君に掛けた呪いを解く事なく死ぬ俺を許してくれ。


俺は、両腕を広げて、全ての力を両手に集めた。


出現したのは、青い炎。


一万度を超える高温で、霧を全て蒸発させ尽くしてやる。









待たんかぁーーーーーーーー!









空から声が降ってきた。


見上げると、本を持つカラスの上に、忠兵衛が乗っていた。


白い歯を、ニカッと見せて、奴はカラスの首筋に噛み付いた。






ギャァーー





人の悲鳴のような鳴き声を一つ上げ、真っ逆さまに落ちてきた。


無論、忠兵衛も一緒になって。



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