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食えない奴らの黄金争奪戦 〜アーポット亭の黄金〜凄腕の冒険者たちが営む宿屋に眠る伝説の黄金  作者: 春夏かなた
第6章 悪党に前では輝かない黄金

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第11話 楽しみのソード・ダンス

カミーア:「そりゃああっ!」


地を蹴った瞬間、カミーアの姿が掻き消えた。


次に現れたのは、ワッツの懐。


低く滑り込んだ体勢から、レディの剣がしなやかに振り抜かれる。


銀の軌跡が、空気を裂いた。


ワッツ:「っ……!」


咄嗟にグラディウスを立てる。


ガキィンッ!!


刃と刃が激しく噛み合い、青白い火花が散った。


だが、カミーアは止まらない。


受け止められても、弾かれても、構わない。


一歩。


半歩。


爪先で地面を刻むように位置を変え、レディの剣を次々と走らせる。


右へ。


左へ。


上段から斬り下ろし――返す刃で、今度は足元を狙う。


流れるような連撃。


その剣筋はしなやかで、鋭く、それでいてどこか弾んでいた。


ワッツ:(……なにがあった)


さっきまで、苦悶に顔を歪めていたはずだ。


それなのに今のカミーアは、まるで舞台の中央に立つ踊り子のように、生き生きと剣を振るっている。


ワッツは眉をひそめながら、襲い来る斬撃を受け流した。


そして、ふと視線を横へ流す。


ワッツ:(……は?)


目を見開いた。


カミーアの背後で――レックスが、同じ動きをしていた。


同じ足運び。


同じ間合い。


同じ剣筋。


レディの剣を介して、レックスの動きがそのままカミーアへ流れ込んでいる。


まるで、二人で一本の剣を振るっているかのように。


レックス:「奴に向けるのは、怒りや悲しみじゃない」


静かな声が、刃音の合間に落ちた。


レックス:「楽しみだ。今、この時を――この瞬間を、思いっきり楽しむんだ」


カミーアの足が、さらに弾む。


レックスの動きと重なり、剣の軌道が迷いなく伸びていく。


ワッツ:「……チッ、ふざけやがって!」


苛立ちが、声に滲んだ。


だがカミーアは、その怒声すら拍子に変えるように踏み込んでくる。


踊るように。


笑うように。


剣舞は、さらに鋭さを増していった。


ワッツ:「なめんなッ!」


押し込まれていたワッツが、獣のように吠えた。


次の瞬間――


ブンッ!!


大振りの一撃が唸りを上げ、カミーアのレディの剣を強引に弾き飛ばす。


その勢いのまま、ワッツはグラディウスを振り回した。


空気が裂ける。


刃が暴風のように襲いかかる。


カミーア:「くっ……!」


怒涛の斬撃。


その荒々しさに、カミーアの足が一瞬だけ止まった。


その――ほんの一瞬。


レックス:「恐れるな」


背後から、静かな声が届いた。


同時に、伸びてきた腕がカミーアの肩をそっと押し下げる。


そして次の瞬間。


スッ――


レックスの身体が、滑るように前へ出た。


レックス:「恐れは、相手を喜ばせるだけだ」


振り下ろされるグラディウス。


だが、レックスは慌てない。


カン――


キィン――


彼の剣が触れた瞬間、ワッツの一撃はするりと横へ流された。


力任せの斬撃が、次々と逸らされていく。


ワッツ:「チッ……!」


露骨な舌打ち。


顔に苛立ちが浮かぶ。


レックス:「ワッツに楽しみも喜びもやるな」


静かな声。


けれどその言葉は、刃のようにまっすぐカミーアへ届いた。


カミーアは息を吸う。


胸の奥で固まっていたものが、ふっとほどけた。


カミーア:「……はい!」


力強く頷いた、その瞬間――


レックスの背中が、わずかに開いた。


カミーアはその隙を見逃さない。


トンッ!


地を蹴り、前へ飛び出す。


レディの剣が再び宙を舞った。


踊るように。


しなやかに。


そして、鋭く――


ワッツへ向かって、怒涛の連撃が叩き込まれる。


ワッツ:「こなくそがああッ!」


怒号が弾けた。


ワッツはカミーアの剣を受け流しながら、獣のような勢いで踏み込む。


次の瞬間――


ブンッ!


グラディウスが唸りを上げ、反撃の刃が閃いた。


だが。


スッ――


その前へ、またしてもレックスが滑り込む。


レックスの剣が水の流れのように絡みつき、ワッツの乱暴な斬撃を受け流した。


重いはずの一撃が、刃に触れた瞬間――


するりと横へ逸れていく。


ワッツ:「チッ……!」


ワッツは止まらない。


さらに荒々しく剣を振るい、力任せの斬撃を次々と叩きつける。


しかし――


レックスが守り、カミーアが攻める。


二人の呼吸は、完全に噛み合っていた。


レックスが流した隙へ、カミーアの剣が入り込む。


カミーアが踏み込めば、レックスがその背を守る。


まるで、長年組んできた剣士同士のように。


やがて、ワッツの乱撃が少しずつ鈍り始めた。


ワッツ:「くそが……二対一は流石にねぇだろ」


ついに剣を振るう手を止め、額の汗を乱暴にぬぐう。


肩がわずかに上下していた。


レックス:「勝っちゃあいいんだよ。勝っちゃあな」


レックスは肩の力を抜いたまま、淡々と言った。


レックス:「そうだろ、ワッツ」


静かな言葉が、戦場の空気を揺らす。


その――ほんの一瞬。


ワッツの足が止まった。


カミーア:「はあっ!」


カミーアはその隙を逃さない。


レックスの影から、弾かれるように飛び出した。


レディの剣が閃く。


しなやかに。


鋭く。


光の軌跡を描きながら――


容赦なく、ワッツへ襲いかかった。


ワッツ:「ぐっ……!」


金属音が連続して弾ける。


カミーアの剣は、止まらない。


一撃。


二撃。


三撃。


その刃は、ワッツの守りを削るように、さらに深く踏み込んでいった。


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