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食えない奴らの黄金争奪戦 〜アーポット亭の黄金〜凄腕の冒険者たちが営む宿屋に眠る伝説の黄金  作者: 春夏かなた
第6章 悪党に前では輝かない黄金

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第10話 カミーア対ワッツ

静まり返った広大な庭園に、重い金属音が鳴り響いていた。


剣と剣がぶつかるたび、空気が震える。


ワッツ:「おら、おら、おらああ!」


剣闘士の剣(グラディウス)を豪快に振り回し、ワッツは後退するカミーアへ踏み込んでいく。


唸りを上げる刃が、目前をかすめた。


一撃でもまともに受ければ――それだけで終わる。


カミーア:「くっ……!」


カミーアはレディの剣を握りしめ、迫る刃を受け止めた。


ガキンッ!


青白い火花が散る。


腕が軋む。


だが、押し返せない。


力の差が、あまりにも大きい。


ワッツ:「おりゃああああッ!」


次の瞬間、ワッツの足が跳ね上がった。


ドンッ――!


腹部へ、衝撃がめり込む。


カミーア:「がっ……!」


身体が宙に浮き、そのまま地面へ叩きつけられた。


砂が跳ねる。


肺の奥から、息が抜けた。


ワッツ:「そんな調子じゃあ、ロッドの仇は討てねぇぞ」


倒れたカミーアへ、間髪入れずに剣闘士の剣(グラディウス)が振り下ろされる。


巨大な刃の影が、彼女を覆った。


カミーア:「っ……!」


カミーアは地面を蹴った。


片膝をついた姿勢のまま跳ね起き、レディの剣を振り上げる。


ガキィンッ!


刃と刃が噛み合った。


火花が弾け、金属が軋む。


震える腕で、それでもカミーアは受け止める。


ワッツの鋭い眼光を、真正面から睨み返した。


カミーア:「ま……だ……っ」


歯を食いしばり、押し潰されそうな刃を押し返す。


足元は揺れている。


呼吸も荒い。


それでも、視線だけは逸らさなかった。


ワッツ:「どりゃあああッ!」


ワッツの咆哮が庭園に響いた。


剣闘士の剣(グラディウス)が、再び唸りを上げる。


容赦など、最初からない。


重い斬撃が次々と叩き込まれた。


ガンッ!


ギィンッ!


金属音が連続して弾ける。


一撃ごとに空気が震え、足元の砂が跳ねた。


カミーアは剣で受け流し、受け止め、必死に踏みとどまる。


だが、じりじりと下がらされていく。


そして――


ガッシンッ!


背後で、鋭い金属音が弾けた。


カミーア:「……!」


ワッツの振り下ろした剣闘士の剣(グラディウス)は、彼女の背後から割り込んできた一本の剣によって、真っ向から受け止められていた。


レックス:「間に合ったな」


落ち着いた声が、静かに響いた。


カミーア:「レックスさん……!」


振り返るカミーアの肩を、レックスが軽く押す。


自然な動きで、二人の位置が入れ替わった。


そのまま、レックスは一歩前へ出る。


そして剣を横薙ぎに振り抜いた。


ブォン――!


鋭い風圧が砂埃を巻き上げ、視界が揺れる。


ワッツ:「ちっ……!」


ワッツは舌打ちし、地面を蹴った。


ドンッ――!


軽々と宙へ跳び、大きく後方へ着地する。


砂煙がゆっくりと晴れていく。


その向こうで、レックスは剣先をわずかに下げ、静かに構えていた。


ワッツ:「邪魔するか。アーポット」


低く唸る声。


ワッツの目が、獣のようにレックスを射抜く。


今にも噛みつきそうな眼光だった。


だが――


レックス:「邪魔はしねぇよ」


レックスはあっさりと言い放つと、くるりと踵を返した。


堂々と、ワッツに背を向ける。


レックス:「お前とダンスするのは、俺じゃあねぇ」


そう言って、荒い息をつくカミーアの隣に並んだ。


ワッツ:「ダンスだと……?」


ワッツの眉がぴくりと動く。


その言葉が気に入らないのか、口元が歪んだ。


カミーア:「レックスさん……」


カミーアはレックスを見上げた。


息はまだ整わない。


レディの剣を握る腕も、かすかに震えている。


レックスは、その視線を受けると、ほんの少しだけ口角を上げた。


レックス:「俺がリードを取ってやる。踊ってみろ」


そう言って、剣を振り上げる。


レックス:「カミーアさん」


カミーア:「!」


名を呼ばれた瞬間。


カミーアの手が動いていた。


気がつけば、レディの剣をレックスと同じように振り上げている。


その瞬間だった。


じんわりとした不思議な力が、剣から流れ込んでくる。


腕へ。


胸へ。


全身へ。


重かった身体が、少しずつ目を覚ましていく。


カミーアは小さく息を吸った。


そして、口元を吊り上げる。


カミーア:「……あいよ!」


レックス:「さあ、はじめようか」


静かな号令。


カミーアの視線が、ワッツを捉えた。


レックス:「ソード・ダンス・楽《たのしみ》」


次の瞬間――


カミーアは地を蹴った。

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