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食えない奴らの黄金争奪戦 〜アーポット亭の黄金〜凄腕の冒険者たちが営む宿屋に眠る伝説の黄金  作者: 春夏かなた
第1章 光の道筋を行け

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第5話 シャルクスの怒り

シャルクスの言葉を聞いた瞬間――


カミーアは、きょとんと目を丸くした。


カミーア:「……え?」


本気で意外そうな顔だった。


シャルクス:「なんだよ」


少しばかりむっとした声で、シャルクスが返す。


カミーアは腕を組み、まじまじと彼を見つめた。


カミーア:「あんたも、ワッツと同じでさ。財宝だの黄金だの、そういうもんには興味ないと思ってたんだけどね」


わずかに首を傾げる。


カミーア:「違ったのかい?」


シャルクスは、ふっと視線を落とした。


ほんの一瞬だけ、何かを思い出すように沈黙する。


やがて、小さく苦笑した。


シャルクス:「……まあな」


肩をすくめる。


その仕草は軽かった。


だが、次に口を開いたときの声は、驚くほど静かだった。


シャルクス:「とにかく、俺は君たちを敵に回したくない」


カミーアの表情が、わずかに変わる。


冗談ではない。


シャルクスの目が、真っ直ぐに彼女を捉えていた。


シャルクス:「だから、教えてくれ」


その瞳に、鋭い光が宿る。


シャルクス:「誰が黄金を狙っている?」


まるで、隠された真実ごと射抜こうとするような視線だった。


カミーアは一瞬、目を伏せた。


言うべきか。


言わないべきか。


短い沈黙が、夜気の中に落ちる。


だがすぐに、彼女は覚悟を決めたように顔を上げた。


カミーア:「……ガスパー・ラッズだよ」


シャルクス:「……なにっ」


その名を聞いた瞬間――


シャルクスの表情が、凍りついた。


カミーア:「ワッツは、ガスパーの手下だったんだ」


カミーアは続ける。


けれど、言葉を紡ぎながらも、彼女はそっとシャルクスの顔を窺っていた。


そこに浮かんでいたのは、驚きではない。


恐れでもない。


――怒りだった。


カミーア:「……シャル?」


思わず呼びかける。


だが、シャルクスは答えなかった。


その瞳の奥で、炎のような感情が燃え上がっている。


シャルクス:「……ガスパーも狙ってやがるのか」


低く、唸るような声だった。


シャルクス:「黄金を」


ぎり、と。


握りしめた拳に、力がこもった。


必死に怒りを押し殺そうとしているのは、誰の目にも明らかだった。


けれど――震える肩だけが、内側で渦巻く感情を隠しきれていない。


ジャン:「ど、どうしたんですか、シャルクスさん……?」


不安げにジャンが声をかける。


ブルトス:「なんか、様子がおかしいぞ……」


ブルトスも眉をひそめた。


その時だった。


???:「ガスパーってやつに、よほど恨みでもあるんじゃねぇのか?」


背後から――



やけに呑気な声が響いた。


ブルトス&ジャン:「うわっ!?」


二人が同時に飛び退く。


慌てて振り向いた先に、いつの間に現れたのか、一人の男が立っていた。


クリストファー。


男は、楽しげに口元を歪めていた。


シャルクス:「ちっ……追いつかれたか」


舌打ちと同時に、シャルクスは身構える。


カミーア:「……何者だい」


カミーアも警戒を露わにしながら、ゆっくりと長剣を抜いた。


シャルクス:「さっき商館で、俺を吹っ飛ばした奴だ」


苦々しく吐き捨てる。


シャルクス:「巻いたと思ったんだけどな」


クリストファーは不敵な笑みを浮かべたまま、ゆっくりと一歩踏み出した。


クリストファー:「そりゃ無理だな」


軽く肩をすくめる。


クリストファー:「こんなところでカワイ子ちゃんといちゃついてるから、足が鈍るんだよ」


ニヤニヤと笑う。


クリストファー:「なあ、シャルクス」


シャルクス:「なっ……!」


その瞬間、シャルクスの目が見開かれた。


シャルクス:「なぜ、俺の名を……」


驚きが、声に滲む。


だが次の瞬間には、その瞳に鋭い警戒の光が宿っていた。


カミーア:(あの男……いったい何者だ)


カミーアは目を細め、クリストファーを睨みつける。


シャルクスの名を知っている。



しかも、本人の反応を見る限り、ただの追っ手ではない。


指先が、自然と剣の柄を握り直した。


シャルクス:「……なぜ、俺の名を知っている?」


低く問いかける。


その声は、わずかに震えていた。


驚き。



戸惑い。



そして、思い出したくない何かへ触れられたような緊張。


だが、対するクリストファーはどこ吹く風だった。


まるで旧友と再会したかのように、余裕の笑みを浮かべている。


クリストファー:「おめぇとは、一度会ったことがあるんだが……覚えてねぇか?」


ニヤリ、と口元を歪める。


その挑発的な笑みが、シャルクスの記憶の奥をかすかに揺さぶった。


シャルクス:(こいつ……誰だったか……)


シャルクスは眉をひそめ、クリストファーの顔をじっと見据える。


だが、記憶の糸はなかなか結びつかない。


そんな彼を見て、クリストファーは少しだけ呆れたように肩をすくめた。


クリストファー:「おめぇの兄貴とは、飲み友達だったんだけどなぁ」


その一言で――


凍りついていた記憶が、弾けるように繋がった。


シャルクス:「……お前」


シャルクスの表情が変わる。


シャルクス:「クリストファー・アーポットか」


その名が口にされた瞬間、場の空気がぴんと張り詰めた。


カミーア:「なに……こいつが……あのアーポット……!?」


カミーアの声が、思わず震える。


クリストファー・アーポット。


伝説的な冒険家として名を轟かせた、アーポット夫妻の息子。


そして、自らもまた“偉大な魔法使い”として知られる冒険家。


その男が今、目の前に立っていた。


クリストファー:「お、思い出してくれたか」


クリストファーは軽く笑った。


だが――その目から、ふっと温度が消える。


クリストファー:「じゃあ、話は早いな」


一歩。


クリストファーが前へ出る。


クリストファー:「俺の物を返してくれ」


静かな声だった。


けれどそこには、冗談も、遊びも、容赦もなかった。


シャルクス:「くっ……!」


シャルクスは拳を強く握りしめる。


ぎり、と奥歯を噛み締めた。



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