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食えない奴らの黄金争奪戦 〜アーポット亭の黄金〜凄腕の冒険者たちが営む宿屋に眠る伝説の黄金  作者: 春夏かなた
第6章 悪党に前では輝かない黄金

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第8話 最後の元凶

リリィナの鋭い声が、静まり返った室内を切り裂いた。


リリィナ:「衛兵!」


その瞬間――。


バンッ!!


左右の扉が弾け飛ぶように開いた。


赤い甲冑をまとった衛兵たちが、一斉に雪崩れ込んでくる。重い鎧がぶつかり合い、金属音が広い室内に不気味な余韻を残した。


リリィナは顎をわずかに上げる。


その氷のような視線が、シャルクスを捉えた。


リリィナ:「やっておしまいなさい」


静かな一言。


だが、それだけで十分だった。


衛兵たちの視線が、一斉にシャルクスへ突き刺さる。


次の瞬間。


何本もの剣が抜き放たれた。鋭い刃先が、逃げ場を塞ぐように彼へ向けられる。


シャルクス:「くそっ……!」


舌打ちと同時に、シャルクスは剣を構えた。


だが、リリィナへ踏み込むより早く、二人の衛兵が左右から間合いを詰めてくる。


逃げ道を塞がれた。


シャルクス:「チッ……!」


やむなく剣を振り上げる。


――ガキィンッ!!


金属同士がぶつかり合う甲高い音が、室内に弾けた。


火花が散る。


シャルクスは歯を食いしばり、振り下ろされた刃を受け止めた。


だが、衛兵は二人だけではない。


赤い甲冑の影が、次々と彼を取り囲んでいく。


その一方で――。


クリスは杖を振り上げ、短く詠唱を放った。


クリス:「《雷よ!》」


次の瞬間。


バリバリッ!!


杖の先から解き放たれた稲妻が、蛇のようにうねりながらメディルと周囲の衛兵たちへ走った。


轟音。


閃光。


電撃を受けた衛兵たちが悲鳴を上げ、次々と床に倒れ込む。焼け焦げた鎧の匂いが、室内に漂った。


だが――。


メディル:「無駄だよ」


メディルだけは、平然とそこに立っていた。


雷を受けたはずの身体に、傷ひとつない。


まるで、その攻撃など最初から存在しなかったかのように。


直後。


ヒュンッ!


黒い爪が鋭く振り抜かれた。


クリス:「……本体は、あちらですか」


クリスは杖で爪を受け流しながら、ちらりと奥へ視線を向ける。


その先。


窓際に立つリリィナが、静かに微笑んでいた。


冷たい笑みだった。


まるで、シャルクスとクリスが自分のもとへ辿り着くことなど、最初からあり得ないとでも言うように。


クリス:(さて……どうしますかね)


一瞬、思案がよぎる。


その刹那――。


メディル:「おりゃあ!」


黒い爪が、勢いよく振り下ろされた。


ガキィンッ!!


間一髪。


クリスは杖を横に構え、その一撃を受け止める。


メディル:「おらああ! よそ見してるんじゃないよ!」


メディルは爪に力を込め、ぐいっと押し込んできた。


杖が軋む。


足元が、床を削るようにじりじりと後ろへ下がる。


クリス:「そ、そのようですね……」


苦笑いを浮かべながら答える。


だが、その額には、うっすらと汗が滲んでいた。


ザンッ――!


鋭い一閃が空気を裂いた。


シャルクスの剣が、衛兵の鎧の隙間を正確に捉える。


衛兵:「ぐあっ……!」


赤い甲冑が膝から崩れ落ち、重い音を立てて床に倒れた。


だが、終わりではない。


残る三人の衛兵が、剣先を向けたままじりじりと距離を詰めてくる。


シャルクスは息を整えながら、横目でクリスの様子をうかがった。


クリス:「くっ……!」


黒い爪が、休む間もなく振るわれている。


クリスは杖でそれを受け流しているが、明らかに押されていた。


シャルクス:(まずいな……)


三人の斬撃を受け流しながら、シャルクスは次の手を探る。


そのときだった。


シャルクス:「……なんだ!?」


ポケットの中が、急に熱を帯びた。


じんわりとした熱が、みるみる強くなっていく。


同時に――。


淡い光が、布越しに滲み出した。


シャルクスは衛兵の剣を弾き返し、その隙に片手をポケットへ突っ込む。


シャルクス:「なんだ、これ……」


指先に触れたのは、熱を持った金属だった。


それを摘まみ上げた瞬間――。


まばゆい光が、一気に溢れ出した。


シャルクス:「うおっ……!」


突然の輝きに、衛兵たちがたじろぐ。


数歩、後ろへ下がった。


その光を見たリリィナの表情が――わずかに歪む。


リリィナ:「あれは……」


氷のように冷静だった顔に、一瞬だけ動揺が走った。


シャルクスの手の中で輝いていたのは、一枚の金貨。


バルデンの黄金で造られた、特別な金貨だった。


アーポット亭で使って以来、なんとなくポケットに入れたままになっていたもの。


だが今、その金貨は――。


まるで意思を持つかのように、強い光を放っていた。

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