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食えない奴らの黄金争奪戦 〜アーポット亭の黄金〜凄腕の冒険者たちが営む宿屋に眠る伝説の黄金  作者: 春夏かなた
第4章 それが君の宿命

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第9話 不愉快な真実

キャラバン隊が町へ辿り着いた頃には、夜の帳がすっかり降りていた。


道中ではバンブス盗賊団の襲撃を受けた。


だが、失ったのは積み荷の一部だけ。

幸い、人にも馬にも命に関わる怪我はなく、一行はどうにか無事に町へ滑り込むことができた。


宿に荷を放り込むと、レックスたちはその足でカミーアを連れ、町の酒場へ向かった。


――だが。


席についてからというもの、カミーアはずっと黙り込んだままだった。


目の前に置かれたグラスにも手をつけない。

肩をすぼめ、俯いたまま、じっとテーブルの木目を見つめている。


酒場には、客たちの笑い声やジョッキのぶつかる音が満ちていた。

だというのに、カミーアの周りだけが、ぽつんと切り離されたように静かだった。


まるで、彼女だけが別の場所に取り残されているかのように。


そんな様子を、レックスは困ったような、けれどどこか優しい目で見つめていた。


レックス:「まあ、そうだよねぇ。こんな状況で気楽にしろって言われても、無理だよねぇ」


気まずさを和らげるように笑い、柔らかく声をかける。


セドウィック:「ついさっきまで命の取り合いをしていた仲だしねぇ。そりゃ仕方ないよねぇ」


隣で腕を組みながら、セドウィックがどこか楽しげに相槌を打った。


レックスは横目でじろりと睨む。


レックス:「また他人事みたいな顔してぇ。高みの見物はずるいですよ、セドウィックさん」


セドウィック:「元々クリストファー絡みなんだろ。君が話を通さないでどうするんだよ」


レックス:「押し付けられる身にもなってくださいよぉ……」


情けない声でぼやいた、そのときだった。


カミーアが、ふいに顔を上げる。


カミーア:「……あんた、クリストファー・アーポットじゃないのか」


レックスは一瞬きょとんとした。


それから、すぐに口角を上げる。


レックス:「やっぱりね。俺を兄さんと間違えてたか」


カミーア:「兄さん……?」


レックス:「俺はレックス・アーポット。クリストファー・アーポットの弟だよ」


そう言って、レックスは片手を差し出した。


カミーアは、まだ警戒を解ききってはいない。

差し出された手と、レックスの顔を交互に見る。


少しだけ迷って――


おずおずと、その手を握り返した。


カミーア:「……なんだ」


ぽつりと、小さな声がこぼれる。


カミーア:「あいつじゃなかったんだ」


安堵なのか。

戸惑いなのか。


その声は、酒場のざわめきの中へ静かに溶けていった。


レックスは握られた手を軽く包み、そのまま声の調子を落とした。


レックス:「君さ。兄さんと会ったとき、何か引っかかることを言われたんだろ?」


カミーア:「……なんで、そのことを」


穏やかな問いかけに、カミーアの肩がぴくりと揺れる。


レックス:「君の仲間から聞いたんだ。ずっと気にしてたってね」


カミーアは視線を逸らした。


しばらく、何も言わない。

言うべきか。黙っているべきか。


迷うように、唇をきゅっと噛む。


カミーア:「……あたいの宿命が、どうのこうのって……」


ぽつりと呟いた。


カミーア:「なんの話か、あんたにわかるかい」


恐る恐る投げかけられた問いに、レックスは静かに微笑んだ。


レックス:「君は、バルデンが残した黄金のことで兄さんと会ったんだよね」


カミーアは、小さく頷く。


レックス:「その黄金――君のものだよ」


カミーア:「……は?」


あまりにも唐突だった。


言葉の意味を理解する前に、思考が止まる。


カミーア:「ど、どういう事だよ……」


レックスは、落ち着いた口調のまま続けた。


レックス:「バルデンは、自分の愛人の子供に黄金を残したんだ」


一拍。


レックス:「つまり――君は、その愛人の“孫”ってことになる」


カミーアは、ただ呆然とレックスの顔を見つめ返すしかなかった。


カミーア:「……そんな……」


かすれた声が漏れる。


カミーア:「なんで、あたいがそうだって言えるんだい?」


その問いを受け、レックスは一瞬だけ困ったように眉を寄せた。


レックス:「君は、盗賊のロッド・プラントの娘だよね」


カミーアは黙ったまま、ゆっくりと頷く。


レックス:「だからだよ」


カミーア:「……よく、わからないけど?」


声が、わずかに震えていた。


レックスは静かに言葉を続ける。


レックス:「ロッドさんは、君の実の父親じゃない」


カミーアの表情が、わずかに曇った。


レックス:「バルデンがつけたんだ。愛人の息子――つまり、君の父親の護衛としてね」


カミーア:「……親父が……」


カミーアはぽつりと呟く。


カミーア:「あたいの実の親父じゃない……」


レックス:「気持ちはわかるよ。でもさ――」


慌てて言葉を継ごうとした、そのときだった。


カミーア:「……当たり前だ」


低い声が、レックスの言葉を遮った。


カミーアは顔を上げる。


その瞳には、はっきりとした光が宿っていた。


カミーア:「血の繋がりなんて関係ない」


きっぱりと言い切る。


カミーア:「親父は親父。あたいはロッド・プラントの娘だ」


レックスを射抜くような目で見据える。


カミーア:「それ以外、何がある」


その迫力に、レックスは一瞬、言葉を失った。


やがて――苦笑する。


レックス:「……余計なお世話だったね」


軽く肩をすくめた。


レックス:「すまなかった」


参った、とでも言うように、にこやかに頭を下げる。


カミーア:「わかりゃいいんだよ」


素直に謝られたことで、少しだけ気が抜けたのか。


カミーアは視線を外し、ふっと息を吐いた。



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