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食えない奴らの黄金争奪戦 〜アーポット亭の黄金〜凄腕の冒険者たちが営む宿屋に眠る伝説の黄金  作者: 春夏かなた
第4章 それが君の宿命

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第6話 三つ巴の闘い

空から舞い降りたカミーアは、その勢いを殺さぬまま剣を振りかざし――。


レックスめがけて、一気に振り下ろした。


レックス:「っと――」


だが、レックスは退かない。


ほんのわずかに身体をひねる。


刃は鼻先をかすめるように空を裂き、そのまま地面へ叩きつけられた。


土煙が跳ねる。


ワッツ:「何やってやがる、カミーア!」


怒声が飛んだ。


再び剣を振り上げようとしていたカミーアの肩が、ぴくりと震える。


その動きが、止まった。


ワッツ:「オメェはエルフを抑えろって言っただろうが!」


苛立ちを隠そうともせず、ワッツが詰め寄る。


だがカミーアは、レックスから視線を外さなかった。


カミーア:「……こいつは、アーポットだよ」


鋭い眼差し。


まっすぐに、レックスを睨み据えている。


ワッツ:「アーポットだと?」


怪訝そうに眉をひそめ、ワッツはレックスへ視線を向けた。


レックス:「……確かにアーポットだけど……」


レックスは少し間の抜けた顔で、自分の顔を指差した。


カミーア:「こいつは、お前だけじゃ無理だ。あたいもやる」


言い終わるより早く、カミーアは地面を蹴った。


長剣が、再びレックスへ襲いかかる。


レックス:「おっと」


レックスは戸惑いを浮かべながらも、軽やかにその斬撃をかわした。


ワッツ:「余計なことするんじゃねぇ!」


怒鳴り声と同時に、ワッツが剣闘士の剣(グラディウス)を振り上げる。


ガシンッ!!


カミーアの剣を、力任せに受け止めた。


ワッツ/カミーア:「ぐっ……!」


火花が散る。


刃と刃が噛み合い、重い金属音が響いた。


互いの顔が、ぶつかりそうなほど近づく。


睨み合う二人。


ワッツも、カミーアも、一歩も引かない。


激しい鍔迫り合いが始まった。


レックス:(さて……どうすっかな)


その光景を横目に、レックスは周囲へ視線を巡らせる。


レックス:(早いとこ片付けて、隊長たちの助けに入りたいんだけどなあ……)


完全に蚊帳の外だった。


とはいえ、一歩でも動けば、あの二人が同時に剣を向けてくるのは目に見えている。


しかも、まとめて相手にするとなれば――。


レックス:(……骨が折れるどころじゃ済まなそうだね)


その時。


荷馬車の近くに立つセドウィックの姿が、視界の端に入った。


レックス:(お、セドウィックさん)


レックスがちらりと視線を送る。


するとセドウィックは、親指を立てた拳を掲げ、にっこりと笑った。


次の瞬間。


くるりと背を向け、荷馬車の方へ駆け出していく。


レックス:(頼りにしてますよ、セドウィックさん)


レックスは小さく微笑んだ。


そして――。


ワッツとカミーアの鍔迫り合いへ、割って入るように魔剣を振るう。


ワッツ/カミーア:「!」


二人は咄嗟に鍔迫り合いを解いた。


そのまま同時に、レックスへ剣を振るう。


ガシンッ!!


三本の刃が激突した。


硬質な衝撃音が、空気を震わせる。


レックス:「まとめてお相手しますよ、お二人さん」


魔剣を構え直し、レックスは不敵に笑った。


その目が、すっと鋭くなる。


レックス:「――さあ、始めようか」


ワッツ:「なめんな!」


ワッツが吼えた。


剣闘士の剣(グラディウス)が、唸りを上げて振り下ろされる。


一拍遅れて、カミーアの長剣も閃いた。


レックスはその二つの刃を前に、軽く息を吐く。


そして――。


三つの刃が、戦場のただ中で激しく交錯した。




レックスを中心に、凄まじい剣戟が巻き起こった。


ワッツの重い斬撃。


カミーアの鋭い踏み込み。


その二つを前にしても、レックスの動きは乱れない。


カミーア:「でやぁっ!」


気合いとともに、カミーアが渾身の突きを放つ。


一直線に伸びる、鋭い一撃。


だが――。


レックスは、まるで舞でも踊るように身体をひねった。


刃は紙一重で空を裂く。


カミーア:「っ……!」


突き切った勢いで、ほんのわずかに体勢が流れる。


その隙を、レックスは見逃さなかった。


青白い魔剣が、頭上から振り下ろされる。


ガキンッ!!


カミーアは咄嗟に剣を跳ね上げた。


間一髪。


振り下ろされた刃を、どうにか受け止める。


カミーア:「ぐっ……!」


重い。


ただ速いだけではない。


上から押し潰すような一撃が、腕にずしりとのしかかってくる。


カミーアは歯を食いしばり、剣の柄を握りしめた。


だが、その瞬間。


レックス:「!」


レックスの表情に、ほんの一瞬だけ焦りが走った。


次の刹那――。


レックスは、躊躇なくカミーアの頭を鷲掴みにした。


レックス:「しゃがめ」


カミーア:「えっ?」


返事を待つ気など、最初からない。


レックスが身を沈めると同時に、押さえつけられたカミーアの膝も強引に折られる。


その直後。


ブオォォンッ!!


二人の頭上を、銀色の閃光が唸りを上げて通り抜けた。


ワッツの剣闘士の剣(グラディウス)だった。


ワッツ:「おりゃあああっ!!」


雄叫びを上げ、ワッツが剣を振り回しながら突っ込んでくる。


味方を巻き込むことなど、気にしていない。


ただ目の前の敵を叩き斬る。


そんな乱暴な一撃だった。


レックス:「まったく……!」


レックスはカミーアを横へ突き飛ばすと、自身は後ろへ跳んだ。


そのまま距離を取りながら、ワッツの猛攻を迎え撃つ。


地面を転がったカミーアも、すぐさま立ち上がろうとした。


だが――。


カミーア:「痛っ……!」


膝に鋭い痺れが走る。


さっきレックスにしゃがまされた瞬間、膝同士をぶつけられていたのだ。


カミーアは片膝をついたまま、悔しげに歯を食いしばった。


その背後では、すでに刃と刃が激しくぶつかり合っている。


ワッツ:「潰れろやぁっ!」


ワッツの剣が、嵐のように振り下ろされる。


一撃ごとに地面が震え、空気が唸った。


レックスはそれを受け流し、かわし、弾き返す。


そして――。


レックス:「そりゃあ」


ほんの一瞬。


ワッツの剣筋が大きく開いた。


その隙へ、レックスは魔剣を勢いよく振り上げる。


ガキィンッ!!


甲高い音とともに、ワッツの剣闘士の剣(グラディウス)が弾き上げられた。


ワッツ:「なっ――!」


巨剣に引っ張られるように、ワッツの体勢が崩れる。


そこへ、間髪入れずレックスの斬撃が走った。


ワッツ:「ぐがっ!」


ワッツは咄嗟に身体をひねった。


斬撃をまともに受ける寸前、無理やり地面を転がって距離を取る。


土煙を巻き上げながら立ち上がったワッツは、荒い息を吐きながらレックスを睨みつ

けた。


ワッツ:「……バケモンが」


対するレックスは、涼しい顔のままだった。


魔剣を肩に担ぎ、不敵に笑った。



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