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食えない奴らの黄金争奪戦 〜アーポット亭の黄金〜凄腕の冒険者たちが営む宿屋に眠る伝説の黄金  作者: 春夏かなた
第4章 それが君の宿命

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第5話 もう一人のアーポット

隊商の先頭――。


ワッツは軽やかに馬から飛び降りると、背に負っていた剣闘士の剣(グラディウス)を抜き放った。


そして、周囲の盗賊たちへ短く顎をしゃくる。


それだけで、十分だった。


手下たちは即座に動き出し、後方の荷馬車へと散っていく。


その場に残ったのは、ワッツただ一人。


巨大な剣を片手で構え、真正面から迫ってくる男を待ち受けた。


ワッツ:「来たな……」


視界の先。


一直線に駆けてくるレックスの姿がある。


ワッツもまた、地面を蹴った。


互いに一直線。


二人の距離が、瞬く間に詰まっていく。


その瞬間――。


レックスの口元に、不敵な笑みが浮かんだ。


レックス:「とおぉぉっ!」


次の瞬間。


レックスは地面を強く蹴りつけ、宙高く跳び上がった。


ワッツ:「なにっ!?」


驚愕の声を置き去りに、レックスの身体が大きな弧を描く。


ワッツの頭上を。


盗賊たちの頭上を。


軽々と、飛び越えていった。


そしてそのまま、後方の荷馬車を襲っていた盗賊たちの真っ只中へ舞い降りる。


着地と同時に、レックスの手が腰の剣へ伸びた。


指先が柄に触れる。


ゆっくりと鞘が滑り――。


青白く輝く刃が、姿を現した。


レックスは魔剣を大きく振りかざす。


豪快でありながら、どこか舞のように滑らかな動きだった。


レックス:「唸れ、レディの剣!」


次の瞬間。


レックスは地を蹴り、一気に間合いを詰めた。


盗賊たちの間を風のように駆け抜ける。


魔剣が、青白い軌跡を描いて閃いた。


盗賊:「ぐぇっ!?」


鈍い呻きが連鎖する。


三人の盗賊が、まるで糸の切れた人形のように崩れ落ちた。


盗賊:「野郎……!」


周囲の盗賊たちが、一斉にレックスへ殺到する。


レックス:「おっと」


迫ってきた盗賊の顔を、レックスは片手で鷲掴みにした。


そのまま軽々と持ち上げ――。


後ろから突っ込んできた別の盗賊へ、豪快に投げつける。


盗賊:「ぐっ……!」


二人まとめて地面へ転がった。


それを見届ける間もなく、レックスは返す刀で迫る盗賊を斬り伏せていく。


その時だった。


ワッツ:「どけぇぇぇっ!!」


戦場に、獣の咆哮が轟いた。


その声だけで、レックスと盗賊たちの動きが一瞬止まる。


全員の視線が、一斉に向けられた。


そこには――。


剣闘士の剣(グラディウス)を抱え、一直線に突進してくるワッツの姿があった。


ガシンッ!!


レックスの魔剣と、ワッツの剣闘士の剣(グラディウス)が激突する。


火花が弾けた。


互いに一歩も引かない鍔迫り合い。


ワッツはぐいと剣を押し込み、レックスの動きを封じる。


その一瞬。


ワッツの鋭い視線が、周囲へ飛んだ。


目配せ。


それだけで十分だった。


盗賊たちは即座にレックスから距離を取り、四方へ散開する。


狙いをキャラバンへと変え、一斉に襲いかかった。


レックス:「へぇ。お前がお頭か」


鍔迫り合いを外すと同時に、レックスはワッツへ剣を振り下ろす。


ワッツ:「おうよ。テメェが噂の凄腕か」


ワッツは紙一重でそれをかわし、不敵に笑った。


レックス:「いやあ、噂の凄腕ってほどじゃないけどね……」


途端に、レックスは顔を赤くして、ばつが悪そうに後頭部をかいた。


ワッツ:(いまだ……!)


その一瞬の隙を、ワッツは逃さなかった。


地面を蹴る。


電光石火の斬撃が、レックスへ走った。


――だが。


ワッツ:「!」


寸前で、ワッツは足を止めた。


反射的に身体をのけぞらせる。


ズバァァァッ!!


青い斬撃が、風を裂いて鼻先をかすめていった。


ワッツ:「あぶねぇ……」


ワッツは大きく後方へ飛び退き、額に滲んだ冷や汗を手の甲で拭った。


ワッツ:「ふざけた野郎だぜ……」


睨みつけながら、低く吐き捨てる。


レックス:「腕前を見せてやっただけさ。ちょっとだけね」


レックスは魔剣を肩に担ぎ、どこか楽しげに笑った。


ワッツ:「噂以上ってわけかい」


ワッツの口元も、同じように歪む。


そして――。


剣闘士の剣(グラディウス)を、ゆっくりと構え直した。


次の瞬間。


ワッツは再び、レックスへ向けて突進した。


レックス:「さっさと帰った方が身のためだよ」


激しく剣を打ち合わせながら、レックスはまるで世間話でもするような調子で言った。


ワッツ:「敵の心配してる場合かよ。味方の心配でもしてな」


ワッツは鼻で笑い、さらに踏み込む。


剣闘士の剣(グラディウス)が唸りを上げ、重い斬撃が次々とレックスへ襲いかかった。


レックス:「……」


レックスは魔剣を軽やかに操り、その猛攻を受け流していく。


刃と刃がぶつかる合間。


彼はちらりと、周囲へ視線を滑らせた。


――その時。


護衛隊の隊長が、迫る盗賊を鮮やかな剣さばきで斬り伏せた。


盗賊:「ぐはっ……!」


血飛沫が宙に散る。


隊長はすぐさま荷馬車へ駆け寄った。


荷台から略奪品を抱えて飛び出してきた二人の盗賊。


その前に立ちはだかり、容赦なく剣を振るう。


盗賊:「ぐっ……!」


二人は呻き声とともに地面へ崩れ落ちた。


手から離れた略奪品が、無惨に転がる。


隊長:「ふう……」


荒い息を吐き、隊長は周囲を見渡した。


護衛たちは必死に盗賊たちを食い止めている。


だが、その隙を突くように、別の盗賊たちが荷台へ飛び乗り、次々と荷を奪っていた。


隊長:(こいつら……やけに連携が取れてやがる)


苛立ちが、胸の奥でじりりと焦げつく。


そこへ、二人の護衛が駆け寄ってきた。


隊長:「行くぞ」


短い一言。


二人の護衛は、力強く頷いた。


三人は、略奪の続く荷馬車へ向かって一斉に駆け出す。


レックス:(こりゃ……まいったな)


レックスの脳裏に、嫌な予感がよぎった。


思ったより、被害が大きい。


そう判断した、その瞬間――。


ワッツ:「勝ちゃあいいんだよ。勝ちゃあな!」


ワッツは不敵に笑い、剣闘士の剣(グラディウス)をさらに豪快に振るった。


レックス:「……仕方ない」


レックスはその斬撃を受け流すと、地面を蹴って大きく後方へ跳んだ。


距離を取る。


そして、魔剣を構え直した。


レックス:「確かに、悠長にやってる場合じゃなさそうだ」


その表情が、すっと引き締まる。


先ほどまでの飄々とした気配が、わずかに薄れた。


レックス:「速攻でいかせてもらうよ」


――その瞬間。


カミーア:「アーポットォォォーーーッ!!」


空を切り裂くような絶叫が、戦場に響き渡った。


レックス:「……なんだ?」


レックスは眉をひそめ、思わず空を見上げる。


ワッツ:「カミーア!?」


ワッツも目を見開いた。


二人の視線の先。


そこには――。


剣を振りかざしたカミーアが、空から一直線にレックスめがけて舞い降りてくる姿があった。


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