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異世界転生した男、ほのぼの人生計画に夢を見る  作者: 黒月一
【第六章】少女救出編

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【第百八十五話】成果なし?

「──ルトさん!」


 なんだ……うるさいな……。

 こっちはまだアディメさん捜索に忙しいんだ……。

 気軽に声をかけないでほしい……。


「──バルトさん!!」


 ああ、もう。

 なんだなんだ?


「リーバルトさん! 起きてください!」


「はっ!?」


「あー良かった。やっと起きてくれましたね」


 アディメさんは!? 見つかった!?

 僕はそう思って辺りを見渡してみるが、そこには誰も居ない。

 いや、一応スクリが僕の目の前に佇んでいる。


「……急がなくちゃ」


「待ってくださいよリーバルトさん!」


「なんで止めるんだスクリ!」


 まだアディメさんが見つかっていないのなら止めないでほしい。


「そりゃ止めますよ! 倒れてた人間がすぐに動いていいはずないじゃないですか!!」


「僕は魔人だ!」


 正直、魔人だからといって体が普通の人間よりも強いなんてことはないのだが、僕はそう言ってその場を乗り切ろうとする。

 スクリは魔人のことについてはほとんど知らないから、これでも騙されるだろう。 


「それでもです!」


 スクリは声を荒げてそのように言った。

 騙されなかったか。いや、騙されてはいるようだが、それでも易々とは見逃してくれない。

 僕のことなんか放っておいていいのに、なんでスクリはこういう時に限って常識人になるのだろうか。


「僕のことなんか放っておけばいいんだよ!」

「放っておけるもんですか! 仲間でしょう!?」


 仲間なら味方の思惑を察して、行動を好きに任せるときだってあるはずだ。

 なんでこうも……。


「今のリーバルトさんが何かをしても徒労に終わるだけです!

 だったら、しばらく休んで万全の状態になってから行動したほうがいいです!」


 ……それは、確かにそうかも知れない……。急がば回れという言葉もある以上、そうした方がいい場合もあるだろう。

 でも、それだったらアディメさんはどうなる?

 このままじゃ彼女はずっと危険にさらされたままになる。

 それが僕は許容できない。


 ──やはり、助けに行くべきだ。


「それでも、行くよ」


「……ッ! この分からず屋ぁ!!」


 そんなの最初から重々承知だ。

 僕は部屋の扉を開いて、廊下へと出る。今度はスクリが扉を封鎖する前に扉を開けることが出来た。


 周りの部屋の扉は開け放たれていて、味方の人達が頑張ってアディメさんを探してくれていたことがわかる。

 僕も協力して、アディメさんを見つけ出さなければ。


「待ってくださいリーバルトさん! この教会にはアディメ・へラーラさんはいません!」


 僕は背後から聴こえてきたその言葉に、思わずスクリの方を振り返った。

 どういうことだ?


「何を根拠に言っている……?」


「へへ、怖い顔は止めてくださいよ、リーバルトさん。

 ……ある人からの教えです。金髪の不思議な女の子の」


 …………なるほど。テタか。

 確かに僕が気を失う直前も、一瞬だけではあるがテタの声が聞こえた。

 戦場にいるのか、あいつは。


「その女の子は今どこにいる?」


「さぁ……。私には何処にいるかは見当もつきません」


 まあそうか。僕も彼女の居場所を突き止められるかというと、まあ無理だ。

 あっち側は僕の居場所をいつも知っているようだが。

 つくづく、本当にテタは不思議だと思う。


「そう……じゃあ、アディメさんは今どこにいるの?」


「あの人は、勇者と一緒にいるって言ってました」


 あの人……テタの情報収集能力に関して右に出る者はいないということが、スクリの今の発言でわかる。

 確かに勇者と一緒にアディメさんがいるという情報を知っているものは他にいるだろうが、ただの小さな少女がそのような情報を知っているのは奇異というべきだ。

 テタはそれ以外にも色々な情報を知っていそうなものだが、彼女がどこにいるのかわからない以上、情報を聞き出すことは無理か。


「で……勇者はどこにいるの」


「戦うつもりですか?」


「まさか。こっそり隙を見て連れ出すだけだよ」


 さすがにあの勇者を相手取ってアディメさんを奪還するなんて真似、僕には到底不可能だ。

 それこそ命がいくつあっても足りない。

 まぁ、僕は迷宮探索の時からもう残機は1しか残されてないんだけど。


「それなら……」


 スクリは渋い顔をしながらも納得してくれた。


「そうと決まれば、ハッセル達に話すとしよう。スクリはアディメさんを探している4人を本堂に連れ戻してきて」


「は、はい……」


 スクリは不安げな表情をしながらも、まだアディメさんを捜索している4人を呼びに言った。

 これでテタもといスクリの言っていたことが間違っていたら、僕は多分一生彼女たちを恨む。

 

 僕はまだハッセル達がいるであろう教会の本堂の方へと向かった。

 彼の怒りが収まっていると良いが……。


「アディメ・へラーラ様は見つかりましたか?」


 本堂に戻って見ると、ハッセルは頭を抱えて長椅子に座っていた。

 僕にそう訊いてきた騎士に僕は首を横にふる。

 アディメさんの名前に様がつくと、その呼び方を聞き慣れていないからか、むず痒い気持ちになった。


「多分、教会内にアディメさんはいないと思います。多分、勇者の近くかと……」


「はあ!?」


 ハッセルが長椅子に座りながら、そのように叫んだ。

 ど、どうしたのだろう?


「せっかく帝国兵が教団の中に侵入したというのに、保護対象の人間がいないだと!? ただ俺らが損をしただけじゃないかッ!!」


 クソ! とそう叫んでハッセルはしきりに足踏みをした。

 これはハッセルに同情せざるを得ないだろう。


「リーバルトさーん、4人とも連れ戻してきましたよ」


 スクリがちょうど騎士と魔術師を2人ずつ連れ戻してきた。

 まあ見つかってないとは思うが、一応……。


「何か成果はありましたか……?」


 僕がそう訊いてみても、彼らは首を横に振るばかりだった。

 しかし、魔術師の1人が少し神妙な面持ちでいる。何か収穫がありそうだ。


「どうしたんですか?」


「いえ……おそらく、そのアディメ・へラーラさんが捕らえられていたという部屋は見つけたのですが……」


「本当ですか!?」


 僕は思わずそう叫んで、魔術師は目を丸くして頷いた。ちょっと食いつき方が急すぎたか。

 しかし……もしその話が本当だとしたら、アディメさん救出に益をもたらすかもしれない。


「案内してください!」


 目の前で苛立っているハッセルを置いて僕がそう言うと、その魔術師は一緒に同行したであろう騎士と目を合わせて、気まずそうな顔をした。

 一体どうしたというのだろうか。

 まるで何かを言おうか迷っているようだ。


「……その、リーバルトさんには少々堪える可能性があるものと言うか……その……」


 ……?

 どういうことだ?

 僕に少々堪えるものって……?


 何故だろう、嫌な予感がする。

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