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紫式部日記 舞夢訳  作者: 舞夢
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渡殿に寝たる夜、

渡殿に寝たる夜、戸をたたく人ありと聞けど、恐ろしさに、音もせで明かしたるつとめて、

  よもすがら 水鶏よりけに なくなくぞ 槙の戸口に たたき侘びつる


 返し、

  ただならじ とばかりたたく 水鶏ゆゑ あけてはいかに 悔しからまし



渡殿で寝た夜のことでした。

誰とはわかりませんが、戸を叩く人がいるようです。

私(紫式部)は、とにかく怖ろしくて、声も出さず音も立てずに、一夜を明かしたのです。

その朝早くのことです。


(道長様から)

槙の戸口を開けて欲しいと思い、(開けてくれないので)戸を叩き続け、辛くて一晩中、水鶏のように、それ以上に泣き続け、とうとう、嘆きの朝を迎えてしまったのです。


と送って来たので、お返しました。


とにかく、ただ事ではないような、戸の叩かれる音でしたけれど、おそらく「水鶏」と思いましたので、もし、戸を喜んで開けたとしたら、どれほど恥ずかしい思いをしたのでしょうか。



※水鶏は、水辺に住む小鳥。鳴き声が、戸を叩く音に似ている。


この文から、しきりに「紫式部は道長の愛妾だった」と言う学者もいるけれど、安易には賛同できない。

そもそも紫式部は、評判が高かった(中宮定子:清少納言)の時に負けないようにと、道長により、「才女」としてスカウトされた。(決して美貌のためではない)


それと、実際に「道長が戸を叩き続けた」かどうかは不明。「誰か」に叩かせた可能性がある。(まさか道長のような高位の人が、一晩中、戸を叩くだろうか、仮に、最初は戯れに自分が叩いたとしても、後は若い人に叩かせると思うのが普通かと思う)


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