今年正月三日まで、宮たちの御戴餅に日々に参う上らせたまふ、
今年正月三日まで、宮たちの御戴餅に日々に参う上らせたまふ、御供に、みな上臈も参る。左衛門の督抱いたてまつりたまうて、殿、餅は取り次ぎて、主上にたてまつらせたまふ。二間の東の戸に向かひて、主上の戴かせたてまつらせたまふなり。下り上らせたまふ儀式、見物なり。大宮は上らせたまはず。
※今年:今年(寛弘7年:1010年)
※宮たち:敦成親王と敦良親王。
※御戴餅:幼児の頭の上に、餅を載せて成長を祝う。元旦または正月の吉日に行われる。
※左衛門の督:藤原頼道。道長の長男。当時19歳。
今年(寛弘7年:1010年)は、正月の三日まで、若宮たちは御戴餅の儀式があるので、毎日(清涼殿)に御参上なされます。そのお供役として、中宮付きの上臈女房たちも皆、参上いたします。左衛門の督が若宮をお抱き申し上げなさり、道長様がお餅を受け取られ、帝にお差し上げになられます。二間の東の戸に面した場所で、帝は宮様たちの頭の上に、お餅を頂かせて差し上げるのです。(三日間)若宮様たちが清涼殿に参上、退下なされる儀式となるのですが、実に素晴らしい見物です。
尚、中宮様は、御参上なさりません。
今年の朔日、御まかなひ宰相の君。例のものの色合などことに、いとをかし。蔵人は、内匠、兵庫仕うまつる。髪上げたる容貌などこそ、御まかなひはいとことに見えたまへ、わりなしや。薬の女官にて、文屋の博士さかしだちさひらきゐたり。膏薬配れる例のことどもなり。
※ものの色合:お給仕役の女房は、色彩豊かな装束が許された。他の女房は、単色。
※内匠、兵庫:中宮付き女房。
※文室の博士:博士命婦の文屋時子。
今年の元日、(中宮様のお薬の儀の)お給仕の役は、宰相の君。例によって、装束の色合いについては、実に趣きがあり、見事です。蔵人役は、内匠と兵庫がお務めをします。髪上げをした姿なので、お給仕役たちは、格別な雰囲気を見せているのですが、これは仕方のないことと思いました。(ただし)お薬の女官程度のお役目で、文屋の博士(女史)は、賢さをひけらかすがごとくに振る舞っておりました。
(尚、三日に)膏薬が配られるのは、いつもの通りです。




