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第7話 次男・直影の正義

【あらすじ・ご案内】

第7話をお読みいただきありがとうございます!


今回は次男・直影の熱き正義と、過酷な運命が交錯する衝撃の回です。

もう一つの組織のアジトを突き止めた直影は、信頼する仲間たちと共に潜入を決意。しかし、その奥で待ち受けていたのは……。

 俺の仕事場である特務室。

 いつものように書類仕事を進めていると、ガルクがニヤニヤとした笑みを向けながら声をかけてきた。


「昨日の夜、小夜さんが特製の夜食を作ってくれたんだが……本当に料理も上達していてな」


「へぇ、そりゃあ七技の奴だけじゃなく、師匠のお前も鼻が高いな。けど直影、あんまり稽古で厳しくして泣かすなよ?」


「泣かせてない! 小夜さんの努力を正当に評価してるだけだ!」


「がははは、冗談だ、冗談!」


 必死に反論する俺をからかうガルク。

 そのやり取りを、セツナは静かに淹れたお茶を飲みながら可笑しそうに見つめていた。


「ふふ、相変わらず仲が良いですね。ですが……直影様、雑談はここまでにしておきましょうか」


「おっ、そうだな」


 セツナがゆっくりと湯呑みを置くと、部屋の空気が一変する。

 ガルクも冗談めかした表情を捨て、真剣な目つきで机の上に一枚の地図を広げた。


「ん? 二人とも、どうした?」


「実はな直影、俺たちが追っていた『もう一つの組織』……奴らの潜伏先を突き止めたぞ」


「本当か、ガルク!?」


「ええ。あのエリア周辺だけ、異様な魂の揺らぎと淀んだ気配が渦巻いています。間違いありません」


「そうか……よし!」


 俺はすぐさま、長男の道離兄さんと弟の七技へ情報を共有するため、魔導通信機を操作した。


(ピロリ――)


 静かな電子音が響く。


「兄さんからだ、早いな……」


 画面に表示された道離兄さんからの返信を目にして、俺は思わず眉をひそめた。


「ん? えぇ……? 確かに言ってることは分かるけど……」


 メッセージには『相手の規模も分からない。まずは慎重に調査を進めよう』と、制止する言葉が書かれていた。


「分かるよ、兄さんの考えも……だけど、なんか嫌な予感がするんだ」


 胸の騒ぎが収まらない。俺はガルクとセツナに向き直った。


「なぁ、その連中のことで、何かもう少し分かったことはあるか?」


「そうだな……」


「そういえば、私の母国に住む者も紛れ込んでいるようです」


「君の母国…確か、幽境国(ゆうきょうこく)だったな……ということは、二人の気配に相手が感づいている可能性もあるか?」


「ええ、可能性は低いですがゼロではありません」


(もしも勘づかれていたら……時間をかければ、勘の鋭い連中だ。絶対に逃げられる!)


 熱い衝動が胸を突き上げる。俺は二人に強い視線を送った。


「二人とも、力を貸してくれ。ほぼ独断になるが……今夜、忍びとしてあのアジトへ突入する!」


「フッ、最初からそのつもりだ」


「直影様がお決めになったのなら、どこまでもお供いたします」


 二人は俺の覚悟を感じ取り、力強く頷き返してくれた。



 夜陰に紛れ、俺たちは静かに敵の隠れ家へと向かっていた。


「二人とも、兄さんと七技には連絡をしておいたから……」


「わかっている。連中を逃がさなきゃいいんだろう?」


「ご心配なく。ご兄弟が到着される前には、終わっているはずですから」


「あはは、ありがとう! 頼もしいよ二人とも」


 会話を交わしながら、素早く隠れ家の敷地へと辿り着く。


「先手必勝!!」


「えっ、ちょっと待ちなさい……!」


「な、なんだお前は!?」


「ハッ、おねんねしな!」


 俺が正面から飛び出すと同時に、ガルクが鋭い爪で見張りたちの武器を弾き飛ばし、一瞬で気絶させる。


「直影、後ろ!!」


「っと、助かったぜ!」


 すかさずセツナが凄まじい密度の霊術を放ち、背後から迫る敵の動きを縛り上げた。


「まったく……猪突猛進というか、何というか……」


「よし、このまま一気に突入するぞ!」


 呆れるセツナをよそに、俺たちは隠れ家の中へと躍り出た。


「侵入者だ!」「おい、なんだこいつらは!?」


 疾風のごとき体術を叩き込み、アジトの構成員たちを抵抗の隙もなく次々と捕縛していく。


「よし、ほぼ制圧したぞ!」


「気合が入っているな、直影」


「ふふ、私たちといると、なんだか頼れるリーダーに見えますね」


 頼もしい二人の言葉に手応えを感じながら、最奥の広場へと踏み込んだ俺だったが――ふと足を止めた。


(なんだ……? この部屋の空気だけが、異様なほど冷たく静まり返っている……)


 壁や床には、刃物で切ったのとは違う、まるで空間そのものを削り取ったかのような不自然な痕跡が残されていた。


(なんなんだ、この痕跡は……? まさか、俺たちの前に誰かが……?)


 不可解な違和感に眉をひそめたその時、奥の暗がりから一人の男がゆっくりと姿を現した。


「直影、新手だ!」


「ククク……調子に乗るなよ、警察の犬どもが!」


 その男の顔を見た瞬間、セツナの顔色が大きく変わる。


「……っ! あの男は……私の母国から逃亡した、あの凶悪犯です!」


「なに……!?」


「チッ、余計なことを言うな、女!!」


 狂気的な笑みを浮かべる男から漏れ出す、悍ましい気配。


(そうか……! セツナが言っていたあの冷たく異様な気配も、この空間の奇妙な歪みも……こいつが幽境国の忍びだからか! 術を使ってアジトの中に充満させていたんだな!)


 違和感の正体を自分なりに納得させると、俺は気を引き締め直して叫んだ。


「あぁ、その目……そうか、お前も忍びか! なら、手加減はしないぜ!!」


 だが、男の強さは次元が違っていた。


「なんて速さだ……! 守るのが精一杯だぞ!!」


「当たり前です! 私の母国でも指折りの凶悪犯なのですから……!」


「全員、油断するな! こいつは一筋縄じゃいかないぞ!」


 連戦の疲弊も重なり、俺たちは徐々に追い詰められていく。


「直影!」


 その時、風を切って道離兄さんが姿を現した!


「遅くなってすまない。助太刀するぞ!」


「兄さん!」


 頼もしい兄の合流に、胸が一気に熱くなる。


「お前……確か、この国のお偉いさんじゃないか!?」


「ほぅ、私の顔を知っているのか?」


「あぁ、腐りきった政治家どもの顔なら嫌でも覚えているからな!!」


「なら……手を抜く必要もないな。行くぞ、直影!」


「はい、兄さん……!!」


 兄さんの隙のない援護と、俺の攻撃が見事に噛み合う。二人の連携で、一気に凶悪犯を追い詰めていく。


「すごい……これが、兄弟の力というものですか……」


「いや、あれは国を守りたいという、二人の忍びの絆だ……!」


「そこだ!!」


 俺の掌が相手の術を撃ち抜いて封じ、兄さんの刃が胸を深く貫いた。


「がはっ……ふざけ、やがって……! こうなったら……!!」


 死の淵に立たされた男は、歪んだ笑みを浮かべると、懐から漆黒の筒状の装置――極秘裏に開発されていた『新型兵器』を取り出した。


「政治家さんよ……道連れにしてやるよぉ!」


 禍々しい光が放たれた瞬間――俺の身体は、思考よりも早く動いていた。


「兄さん、危ない!!」


 兄さんを庇うように割り込んだ俺の背中に、未知の破壊エネルギーが直撃する。


「ぐあぁぁぁぁぁっ……!?」


 体内のあらゆる神経と細胞が焼き切れるような激痛。

 絶叫と共に地面へ崩れ落ち、視界が急速に赤く染まっていく。


「直影……!?」


 駆け寄ってくる兄さんの叫びと、ガルクたちの悲鳴。


 自分の腕の中で血を吐き、瀕死となった俺を見下ろす兄さんの顔。

 その瞳に、一瞬だけ激しい動揺と苦悶の色が走ったのを、俺は途切れゆく意識の中で見逃さなかった。


(良かった……兄さんを……護れた……)


 意識が深い闇へと沈み込んでいく中、俺は最後まで信じて疑わなかった。


 自分が命をかけて護ったのは、優しく頼もしい――最高の兄なのだと。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


次男・直影の誇り高き正義と、兄への絶対的な信頼。そしてその代償として訪れたあまりにも残酷な悲劇――。


直影が目撃した「空間そのものを削り取ったかのような不自然な痕跡」が何を意味するのか。そして弟を目の前で傷つけられた道離はどこへ向かうのか……。


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