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第14話 胸に秘めた真相

【あらすじ・ご案内】

第14話をお読みいただきありがとうございます!


エルヴァンの命をかけた防護壁すら一瞬で打ち砕き、姿を現した元凶『終焉』。

恐ろしい死の冷気が迫る中、小夜は生き残るために必死の抵抗を試みます。


しかし、圧倒的な戦力差の前に追い詰められ、捕らわれてしまう小夜。

逃げ場のない超至近距離で『終焉』の口元が動いた瞬間、小夜はあまりにも残酷で恐ろしい「真相」に気づいてしまい――。


愛する七技のために小夜が選んだ最後の決断と、すべてを奪われた七技の凄絶な覚悟。

物語はいよいよ最大の局面を迎えます。ぜひ最後まで見届けてください!

「この冷気……まさか……ッ!?」


 エルヴァンが小夜を庇うように前に躍り出たその目の前で、漆黒の空間が裂けた。

 不気味な仮面とスローブを纏った異形の存在――『終焉』が、ゆらりと姿を現す。


「小夜さん、危ない……っ!!」


 エルヴァンは残された命の全てを魔法へ変換し、小夜の前に広大な防護壁を展開した。


「終焉、なぜここにっ!!」


 しかし――『終焉』がただ静かに一歩を踏み出すと、放たれた圧倒的な絶望の圧迫感だけで、エルヴァンの防護壁はガラスのように砕け散った。


「がっ……あ……っ!?」


「エルヴァン様……っ!?」


 引き留める隙すら与えられなかった。


「あっ……そんな……」


 漆黒の冷気がエルヴァンの身体を包み込んだ瞬間、彼の肉体は悲鳴を上げる間もなく、一瞬にして黒い砂となって霧散した。あまりにもあっけなく、無慈悲な死。


「くっ……!?」


 死の冷気が一気に小夜へ襲いかかる。


「…く、くるっ!!」


 だが小夜は絶望に飲まれることなく、忍びとしての鋭い身こなしで間一髪、鋭い冷気の刃を紙一重でかわした。


(動きが…遅い…?)


 地を蹴り、廊下の壁や柱を蹴って死線をくぐり抜けながら、必死に攻撃を凌ぎ切る。


(でも…これなら…チャンスが…!! 距離を取って、七技のもとへ逃げられれば……!)


 一瞬の隙を突き、小夜は廊下の奥へ向けて弾かれたように跳躍した。

 だが――次の瞬間、足元から巻き起こった極寒の暴風が、小夜の身体を容赦なく吹き飛ばした。


「くあぁっ……!?」


 背中から壁に強く打ちつけられ、激しい衝撃に息が止まる。

 受身を取ろうと手を伸ばすが、床も壁もみるみるうちに黒い氷で凍りつき、自由を奪われていく。


(あ……足が……動かない……っ!?)


 必死にクナイを構え、震える手で逃げ道を模索する小夜。しかし、逃走経路はすべて凍てつく死の冷気によって塞がれていた。

 完璧に追い詰められた絶望的な状況の中、暴風と凍てつく冷気が吹き荒れ、鼓膜を劈くような轟音が廊下に響き渡る。


 相手の『声』など一切届かない狂風の中――終焉がゆらりと仮面の奥の口元を動かしているのが、小夜の視界に飛び込んできた。


(何、何を言って……)


 音は聞こえない。だが、小夜はその口動きを必死に目で追った。


『お前と……七技……消す……』


(……え?)


『そして……直影……消す……』


(な……ぜ……!? どうして世界の滅亡を目論む怪物が……七技様と直影兄上様の名を知っているの……?)


 胸を突く強烈な違和感。ほんの一瞬の油断――完全に意識を奪われたその隙を、終焉は見逃さなかった。


「しまっ…!! うぐっ!?」


 ガシッ……!!


 間合いを一瞬で詰められ、冷たく巨大な手が小夜の細い首を強く締め上げた。小夜の身体が宙に持ち上げられる。


「あっ…あぁ…あがっ……」


 逃げ場のない超至近距離。首を伝って骨まで凍りつくような冷気が流れ込んでくる。苦しみながらも目を開ける小夜の前で、終焉の唇が冷酷に次の言葉を紡いだ。


『俺と……同じ……力……弟……消す……』


 その言葉が頭の中で弾けた瞬間、小夜の全身を激しい戦慄が駆け巡った。


(俺と……同じ力……弟……!?)


 七技と直影を『弟』と呼び、同じ力を持つ存在――そんな男は、世界にただ一人しかいない。仮面の奥から覗く瞳の残影、そして肌で感じる恐ろしい気配が、残酷な現実を突きつけていた。


(嘘……嘘でしょう……!? あなたは……道離…兄上様……なの……!?)


 あまりの衝撃と絶望に、小夜の思考が完全に凍りつく。


(アミナさんたちと、同じ…私……消えるの……!)


 首を締め上げられたまま、凄惨な侵食の冷気が激流となって小夜の全身を激しく駆け巡った。

 内側から命の灯火がバチバチと焼き切られ、肉体が内側から崩壊していく激痛に、小夜の瞳からポロポロと涙がこぼれ落ちる。声を出して問いただすことすら許されないまま、意識が急速に闇へと沈んでいく。


「小夜ーーーーーっ!!」


 フィナから魔法の刻印を託され、異変を察知して駆け込んできた七技の叫びが廊下に響き渡った。


「七技…………」


 七技の姿を視界に捉えた終焉は、まるで用済みと言わんばかりに手を緩め、小夜を床へと投げ捨てた。


 ドサッ……!!


「小夜! 小夜!! 嘘だろ、目を開けてくれ小夜!!」


 崩れ落ちた小夜の身体を、駆けつけた七技が咄嗟に抱きとめる。

 終焉は「……ふぅ……」と短く息を漏らすと、意にも留めない様子で二人へ背を向け、去ろうとした。


 七技の手の中で、小夜の身体はみるみる冷たくなり、胸からは黒い侵食の粒子が立ち昇っていた。


「なな……ぎ……」


 小夜は残された視界の全てを使って、涙を流す七技の顔を見つめた。


「小夜…! 駄目だ、死ぬな!!」


 終焉が道離であるという恐ろしい真実……それを今、七技に伝えてしまえば、彼はショックと絶望で心が完全に壊れてしまう。


(あぁ……七技……私……)


 だからこそ小夜は、その真実を血吐く思いで胸の奥底に飲み込んだ。


「なんで終焉がお前を……どうして…!!」


 冷たくなっていく手で、最後の力を振り絞り、七技の頬にそっと触れる。


「お願い……初めて私と会った時と……私を見ていたあなたを……忘れないで……」


「小夜……? 何を言ってるんだ、頼むから喋らないでくれ! すぐに手当てを――!」


「あなたと……いられて……幸せ……でした……」


 小夜の瞳から光が消え、七技の頬に触れていた手が力なく床へと落ちた。


「こ、これは…!?」


 次の瞬間、小夜の身体はアミナやフィナと同じように無数の光の粒子となり、七技の腕の中からサラサラと消えていった。


「さ、小夜…?!」


 残されたのは、小夜が着ていた衣服と、七技の絶叫だけだった。


「小夜ーーーーーーーッ!!!!」


 愛する者も、大切な仲間たちも、守るべき世界も――全てが失われた。

 崩れ落ちる廊下の中で、七技は涙を流し、深遠な絶望へと呑み込まれそうになる。


(どうして……なんで俺を残して……みんな……っ!)


 胸をかきむしるほどの激痛と無力感の中、七技の脳裏に、ひとつの情景が鮮明に浮かび上がった。

 世界の深部にある医療カプセルの中で、静かに眠り続けている直影の姿。


「直影……兄さん……そうだ……俺にはまだ……」


 仲間たちが命を賭して自分に希望を託したのは、ここで折れるためではない。自分にはまだ、守らなければならない兄がいる。


「まだ…守れる……!」


 その瞬間、フィナが命を削って左腕に刻んでくれた『異世界への希望』――魔法陣が、七技の溢れ出る感情に呼応するように青白く眩い光を放ち始めた。


「これは…?」


 ぎゅっと拳を握りしめると、七技の目から涙が乾き、その瞳に静かだが凄惨な怒りと覚悟の炎が宿る。

 立ち上がる七技。強烈な魔力の高まりを感じ取った終焉が足を止め、ゆらりと振り返った。


 その目の前には、仲間たちの命を奪い尽くした絶対的な悪――『終焉』が、静かにたたずんでいる。


「……終焉。俺はお前を……絶対許さない……お前を止める……!」


 すべてを失った男の、たった一人での命懸けの闘いが、今始まろうとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


圧倒的な力を前に逃げようと足掻くものの追い詰められ、恐ろしい真実に辿り着いてしまった小夜。

七技の心を護るために真相を秘めたまま消えていく彼女の最期と、すべてを失ってなお「直影を守るため」に立ち上がる七技の決意が描かれた悲痛な回となりました。


残された七技と、すべてを滅ぼさんとする『終焉』の決戦のゆくえは――!?


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