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第13話 終末の強さ

【あらすじ・ご案内】

第13話をお読みいただきありがとうございます!


病院で直影の回復を祈り、出撃の準備のために一度実家へと戻った七技と小夜。

しかし、両親との思い出が残る静かな屋敷に届いたのは、各国の精鋭たちが全滅したという最悪の報せでした。


血を流しながら屋敷へと駆け込んできた友人・フィナ。

彼女が七技と小夜に託した、あまりにも哀しく優しい嘘と最後の『願い』。

黒い粒子となって思い出の場所で消えていく仲間たちの命を前に、小夜と七技は絶望の渦へと叩き落とされます――。


あまりにも切なく過酷な展開となりますが、ぜひ最後まで見届けていただけると幸いです!


数時間が経ち。病院で直影の治療状況を見届けた後、戦いへの決意を固めた七技と小夜は、出撃の準備を整えるため一度実家へと戻っていた。

しかし、かつて温もりのあったはずの静まり返った屋敷の中で二人を待っていたのは、通信端末から流れる惨劇の音声だった。


『――だ、駄目だ! 攻撃が一切通じない……っ!?』


『化け物だ……! 各国の精鋭たちが……一瞬で消されていく……うあああああっ!!』


ノイズ混じりの悲鳴と爆音、そしてぷつりと途切れた通信。

画面から流れる凄惨な記録に、居間で小夜は顔を蒼白にさせていた。


「終焉と戦いに向かった戦士たちから、連絡が取れない……!」


「あぁ……それぞれの国から連絡がきて……」


七技はいまだに信じられない報告を受けて、自身も理解が追いつかないほど混乱した面持ちで小夜に話していた。


「はぁ……はぁ……っ」


その時、荒い息遣いとともに、玄関口から一人の影が居間の前に倒れ込むように現れた。


「フィナ!?」


「と、突然の訪問……お許し……くだ……さい……」


「フィナさん!?」


駆け寄る七技と小夜。


「フィナ! どうしたの? なんで……さっきまであんなに元気だったのに……!!」


少し前に笑顔で話していた友の痛々しい姿を見て、小夜が必死に声をかける。


「七技……さん……小夜……」


倒れ込んだフィナは、息も絶え絶えに七技の左腕を強く掴みながら、小夜へ向けて痛々しく微笑んだ。


「小夜……お願いがあります……。奥の部屋に……アミナさんとエルヴァンさんがいます……。あなただけにお話ししたいことがあると……言っていました……行って……いただけますか……?」


「え……アミナさんとエルヴァン様が……? でも、フィナを置いてなんて……!」


「そうだ、俺が代わりに……!!」


「大丈夫です……! 小夜、私は、七技さんと……二人で待っていますから……さあ、行って……」


小夜は戸惑いながらも、フィナの強い眼差しに押されるように、廊下の奥の部屋へと走っていった。


「フィナさん……どうして、なぜあんなことを言ったのですか? それに、俺に話したいことって、なんですか?」


七技が問いかける中、小夜の背中が見えなくなったのを確認すると、フィナは静かに胸を撫でおろし、七技を見つめた。


(ごめんなさい、小夜……。私たちが……消えていく惨めな姿を……あなたに見せたくなかったの……)


「七技さん……手を……左腕を出して……」


「えっ……こう、ですか……?」


「霊峰国の極大魔法を……あなたに授けます……!」


フィナは命の灯火となる全魔力を振り絞り、七技の左腕に青白く光る『異世界移動の魔法の刻印』を刻み始めた。



*



一方、奥の部屋へ向かった小夜は――


「小夜……さん……」


引き戸を開けた瞬間、目にした光景に息を呑み、その場に崩れ落ちそうになった。


「な……なに……これ……っ!?」


そこにいたのは、畳の上に倒れ込むように体をあずけていたアミナとエルヴァンだった。


「こんな……姿……見せてしまって……ごめんなさい……」


しかし、二人の身体は――手足の先からまるで黒い砂のように崩れ、空間へとサラサラと消滅し始めていたのだ。


「これは、終焉の……力……です……」


終焉と戦った際、受けた謎の侵食の力が、彼らの存在そのものを内側から破壊していた。


「あ……小夜ちゃん……来てくれたのね……」


エルヴァンが小夜と話していることに気づき、アミナが力なく微笑む。


(フィナ……さん……時間……稼ぐから……急いでね……)


彼女の右腕は、すでに半ば以上が黒い粒子となって消え去っていた。


「アミナさん!? エルヴァン様!? どうして……身体が……っ! 待って、今手当てを――!」


「無駄だよ、小夜さん……。これは……終焉の呪いのようなものだ……。もう、僕たちの肉体は……崩壊を止められない……」


眼鏡を割らせたエルヴァンが、血の混じった息を吐きながら切なく首を横に振る。


「なんで……こんなことが……」


小夜の目から溢れる涙が止まらない。


「そんな……じゃあ、フィナも……!?」


「……フィナはね……」


アミナが残された左手を、小夜の頬にそっと重ねた。その皮膚も、すでに透け始めていた。


「フィナは……こんな私たちの姿を……大好きなあなたたちに見せたくなかったの……」


――同時刻、居間でフィナは七技に向けて叫んでいた。


「フィナさん! このままでは、あなたが!!」


「いいんです!! もう、私は……助からない……! だから……!! せめて……小夜には……七技さんと、一緒に生きてほしい……!! くっ……! 二人だけでも……この世界から逃げて……生き残ってほしいから……っ!」



――再び、奥の部屋の小夜たち。


「自分ももう助からないって解っていたから……七技に……力を渡したのよ……」


「フィナが……!? 私たちを逃がすために……どうして!?」


「しゅ、終焉は……仮面の奥から、こう言い放ちました……『この世界を完全に滅ぼした後、私は、お前たちの知らない世界も、何もかも滅ぼす』と……!」


「私たちの……知らない世界……!?」


その言葉と同時に、グラグラと恐ろしい地鳴りが屋敷全体、そして世界全体を揺らした。


「こ、これを見て……!」


アミナが見せる端末の画面越しに、他の国々がまるでガラスが割れるように次々と空間ごと消滅していくのが映し出される。


「い……いや、こ,こんなの……うそ……!」


幽境国だけでなく、世界のあらゆる国が崩壊を始めたのだ。


「そんな……世界が……消えていく……!」


小夜が血の気の引いた顔で、絶望に目を見張る。


「逃げ……て……小夜ちゃん……二人に……未来を……」


アミナの言葉が途切れると同時に、彼女の身体は一瞬で光の粒子となって崩れ去り、衣服だけが虚しく床に落ちた。


「アミナさん!!」


同時に――


「七技さん……小夜を……」


「フィナさんっ!!」


力をすべて使い果したフィナは、七技の腕に刻まれた刻印を見て安心したように微笑むと、アミナと同じように光の粒子となって消えていった。



*



「フィナ……! フィナ!!」


真実を知った小夜は、狂おしいほどの悲痛な叫びを上げ、部屋を飛び出してフィナのもとへ駆け戻ろうとした。


「待つんだ……小夜……っ!!」


身体の半分以上が侵食され、消えかかっているエルヴァンが、血を吐くような思いで小夜の腕を強く掴んで引き留めた。


「離してくださいエルヴァン様! フィナが……フィナが消えちゃう……!」


「ダメだ……! 今行っても、フィナの思いを……みんなの覚悟を無駄にするだけだ……! フィナは……君に笑って生きていてほしいから、遠ざけたんだぞ……っ!」


「でも……! でも……っ!!」


消えていく仲間たちの命の重さと、あまりにも残忍な終焉の強さに、小夜は胸がかきむしられるような思いでその場に伏し、慟哭した。


(みんな……私達を助けるために……自分の命を……っ!!)


エルヴァンは絶望に震える小夜の肩を強く叩き、消えゆく力を振り絞って立ち上がらせた。


「行こう……小夜……。七技のもとへ……。君が……君が七技を支えてあげるんだ……」


「……っ……はい……っ!」


小夜は涙を拭い、エルヴァンとともに七技の待つ場所へと力強く一歩を踏み出した――。


最後までお読みいただき、ありがとうございました!


圧倒的な力を持つ『終焉』の前に消えていく仲間たち。

自分たちの命と引き換えに、七技と小夜へ未来(異世界への希望)を託したフィナ、アミナ、エルヴァンの姿があまりにも切ない回となりました。


世界が崩壊していく中で、二人は果たして生き残ることができるのか。


怒涛のクライマックスへ向けて物語が展開していきます!

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