第12話 集う意志、立ち上がる時
【あらすじ・ご案内】
第12話をお読みいただきありがとうございます!
両親を失い、悲しみの底にいた七技の元に集う各国の仲間たち。
彼らはすでに、世界を消し去らんとする元凶『終焉』を倒すべく立ち上がっていました。
七技に伏せたまま、道離の「死」の違和感について仲間たちへ打ち明ける小夜。
そして、現世のみならず「あの世(幽世)」までも消滅させようとする『終焉』の恐ろしい目的と、目的地「幽境国の境界領域」。
怒りに飲み込まれそうになる七技に、蒼竜が投げかけた『忍び』としての言葉とは――。
絶望から立ち上がる仲間たちの絆と誓いの物語。ぜひ最後までお楽しみください!
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病院の別室。
「七技、小夜さん……」
静かにドアを開けて入ってきた二人を迎えたのは、獣牙国のガルク、異能国のエルヴァン、そして霊峰国のフィナの姿だった。
「……皆さん、いつの間に」
「実は、君たちが来る前に、お二人のご家族の様子を見にここへ来たんだ」
エルヴァンの言葉を引き継ぐように、ガルクが悔しそうに拳を握りしめた。
「直影の奴のあまりの姿に、俺が取り乱しちまってな……しばらくここで頭を冷やしていたんだよ」
「その後、お二人が病室へ向かうのをお見かけして、ここで待たせていただいていたの」
フィナの申し訳なさそうな言葉に、七技は首を振った。
「そうだったのか……気を使わせてしまって、すまない」
「謝る必要はないぞ……それよりも……!」
直影の惨状に怒りを爆発させていたガルクが、七技たちの前に強く踏み出した。
「直影の奴……あんな姿になりやがって……! 七技、落ち込んでる暇はねえぞ。俺の国を含め、各国の戦士たちが『終焉』を倒すために動き出した。俺はその討伐隊の代表に選ばれたんだ。直影の無念も、お前の両親の無念も、俺が一緒に背負って奴を討ち取ってやる!」
眼鏡の奥の瞳を重々しく光らせ、エルヴァンが冷静に状況を付け加える。
「終焉を倒せば、世界の崩壊も止まるはずだ。現在、すでに外の世界の半分以上が消滅している……だが、奴の目撃情報から分かったことがある。不気味な仮面をつけ、全身を覆うスローブのような服を着た、正体不明の存在。素顔も体型も一切不明だが……元凶がその『終焉』一人であるなら、叩くべき標的は明確だ」
フィナは二人の手にそっと触れ、傷ついた心に寄り添うように優しく微笑んだ。
「七技、小夜。あなたたちは決して一人ではありません。私たちがついています。こんなにも恐ろしいことが起きてお辛いでしょう……ですが、どうか自分たちだけで抱え込まないでください」
友人たちの温かく、熱い言葉。七技は溢れ出る涙を力強く袖で拭うと、しっかりと前を見つめた。
「みんな……ありがとう。そうだな、悲しんでいる場合じゃない……。父さんと母さんのためにも、治療カプセルで戦ってる直影兄さんのためにも……俺も一緒に戦う。終焉を、絶対に許さない!」
「七技……!」
小夜が少し引き止めるように七技へ声をかけようとした――その時だった。
「失礼します」
静かにドアが開き、龍神国の蒼竜が姿を現した。
「あなたは……蒼竜さん?」
「七技さん、少しお話があります。道離の仕事のことで……」
「……わかりました」
重い頷きを返す七技に、小夜がすっと歩み寄る。
「あ……七技」
「なんだ、小夜?」
「私、もう少しだけ皆さんとお話ししたいから……先に行ってて」
「うん……? わかった。じゃあ、先に行ってるよ」
七技が蒼竜と共に廊下の奥へと歩いていく。
その背中が角を曲がり、完全に見えなくなったのを確認すると――小夜の表情からすっと温度が消え、静かに声をひそめた。
「……皆さん。七技には秘密で……少しだけ、お話ししたいことがあります」
その一変した真剣な眼差しに、ガルクたち三人も背筋を伸ばし、姿勢を正した。
「私達に……? なんでしょうか」
「はい……道離さん……黒焦げになった遺体と、無傷で残されていたお守り……そして現場に残されていた凄惨な冷気。どうしても引っかかるんです。生きているのかは分かりません。でも……道離兄上様と『終焉』には、何か強い関係があるんじゃないかと考えているんです」
一瞬の静寂が別室を包み込む。
ガルクが腕を組み、重々しく首を横に振った。
「小夜さん、もし生きているなら、終焉を倒すために現れるはずだ……だが現れないなら、もうこの世には……あいつが家族を見捨てるはずがねえからな」
「それも分かってはいるのですが……」
「生存の可能性は低いと思いますが……仮に魂がさまよっているのだとしたら、何かわかるかもしれませんわ」
フィナが痛ましそうに胸元へ手を当てる傍らで、エルヴァンが思索するように顎に手を添えた。
「不自然なお守りの状態と冷気の謎か……追う価値はある。その情報は、今後の戦いに役立つかもしれない」
「皆さん……ありがとうございます、話を聞いてくださって。七技は今、ご家族を失ったショックで心が壊れそうです。もし私の勘違いだったら……これ以上、七技を傷つけたくありません。だから、このことは私達だけの秘密にさせてください」
「うむ、承知した」
「ありがとうございます。私、七技のところへ向かいますね」
小夜は深々と一礼すると、七技の追った廊下の奥へと足早に向かった。
*
一方、七技は蒼竜の案内で進んだ廊下の先で、機巧国のアミナ、幽境国のセツナと合流していた。
「七技さん! 無事だったのですね」
「皆様、どうしてここに……?」
「今起きている事について、話したいことがあるの……」
セツナが深く息を整え、表情を極限まで硬くして切り出した。
「七技、覚悟して聞いて。幽境国の観測で……とんでもないことが分かったわ。終焉の力は、この現世の国々を消しているだけじゃない。……あの世……つまり幽世すらも、消滅させようとしているの。このままでは死者の魂が還る場所すら失われ、生きとし生けるものの『魂の巡り』そのものが滅んでしまう……!」
「そんな……ありえない……!」
そこに追いついた小夜が、静かに会話に加わった。
「七技、セツナさんの言う通りよ。……これを見てください」
アミナが腕の端末を高速で操作し、ホログラム空間を表示させる。
「あたしの機巧国の観測データでも、幽境国との境界付近で空間の消滅反応が跳ね上がってる。……だから、あたしも機巧国の特殊部隊を率いて戦場へ出向くことにしたわ! 獣牙国のガルクたちの討伐隊とも連携を取って、共同戦線を張るつもりよ」
「それと、終焉は今、私の母国にいるはずです。ここに来る直前、私の国から終焉の姿を見たという報告が入りました」
崩壊の最前線であり、次の標的――『幽境国の境界領域』。目指すべき目的地が、明確になった。
「……そうですか。皆様が先陣を切るということですね」
怒りと憎しみに拳を固く握りしめる七技。その痛々しいほどの肩に、蒼竜がずっしりと重い手を置いた。
「それならば、我らは後から攻める。……現世どころか、あの世まで消すつもりか。ふざけた真似をしてくれる。俺も自分の国と、家族を守るために全力で拳を握るぜ」
蒼竜は一度言葉を切り、まっすぐに七技の目を見据えた。
「……七技。両親を殺され、兄貴を傷つけられた……胸を裂かれるような怒りと復讐心に燃えているのが分かる。身内を想えば当然だ」
「な、なんだよ……改まって……」
「だが、忘れるなよ。お前は『忍び』だ。ただ感情に任せて敵を切り刻むだけの『刃』になっちゃいけねえ。誰かを守るため、悲劇を『止める』という思い……その心を忘れた瞬間、お前も終焉と同じただの破壊者になっちまうぞ」
「……蒼竜……」
七技はハッと息を呑み、ゆっくりと胸に手を当てた。
「……まさか、前に俺が話したことと同じことを言われるとはな……」
溢れ出しそうだった激しい怒りの熱が、蒼竜の言葉によって静かに、しかし強固な覚悟へと昇華していく。
「ああ、ありがとう。父さんと母さんを奪われて、怒りで頭がどうにかなりそうだった……。でも、蒼竜の言う通りだ。俺が戦うのは、ただの復讐じゃない」
七技は隣に立つ小夜の手をギュッと力強く握り、仲間の顔を一人ひとり見回した。
「家族の無念を背負い……これ以上誰の命も、この世もあの世も消させないために、俺は『忍び』として終焉を止める! 今度こそ、大切な世界とみんなを守ってみせる!」
「……いい顔になったわね、七技」
セツナが小さく微笑み、アミナが勢いよく胸を張った。
「よし、決まりね! 目指すは崩壊が一番激しい『幽境国の境界領域』よ。あたしたちの部隊が、絶対に道を開いてみせるわ!」
それぞれの想いと絆を胸に、彼らは世界の崩壊を止めるための過酷な戦いへと足を踏み出した。
小夜は隣で手を握られながら、覚悟に満ちた七技の力強い横顔を、静かに見つめていた――。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
悲しみと怒りに押し潰されそうになっていた七技が、仲間たちの言葉と蒼竜の教えによって「復讐者」ではなく「守るための忍び」として真の覚悟を決める胸熱な回となりました!
そして、独自に道離の疑惑を追う小夜の知性と意志の強さも際立っています。
次なる舞台は崩壊の最前線『幽境国の境界領域』!




