↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冒険の書から始まる異世界探索〜最弱サポート役なのに、なぜか姫と美少女に溺愛されます  作者: 舞波風季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/49

第42話 そしてアジトへ

「地下組織のアジトってワクワクするわね」


 相変わらず暁音は劇的な展開がお好みのようだ。


「そうかしら」

「危ないニオイがするんだけどぉ」

「ちょっと不安かな……」


 暁音のポジティブな言葉に対して、沙生那と夕璃乃、明日海の反応はネガティブだ。


 俺はというと、正直なところ半々といったところだ。


 これまでのところはクエストの目的に沿った展開だ。


 アニタ姫に出会えたこと、完全ではないものの概(おおむ)ね信頼してもらえていること。


 これで、俺達と一緒にアニタ姫が王城へ戻ってくれればクエスト達成だ。


 夜の下町の路地は暗い。狭い空には月も見えず、ほんのりと明るいだけだ。


 先導するレックも灯りは持っていない。ランタンなりなんなりを使えばいいと思うのだが。


「すまんな、灯りは使わないようにしているんだ」


 俺の心を読んだかのようにアニタ姫が言った。


「アイテムがありますけど」


 俺は【みちしるべのたま】を取り出して見せたが、アニタ姫は首を横に振った。


 ここで無理強いしてもと思い、俺は【みちしるべのたま】をしまった。


 そこで、俺は思い出した。


 さっきの合図の【みちしるべのたま】は空に浮かんでいた。


 このアイテムには宙に浮く機能はないはずだ。


「風魔法を使ったんだよぉ」


 と、夕璃乃が教えてくれた。風魔法を弱く発動して【みちしるべのたま】を浮かせたのだそうだ。


「まさかリンナちゃんが追われてるとは思わなかったけど」


 沙生那が俺の横を歩くリンナに視線を向けた。


 そうだ。リンナに訊かなければいけないことがあった。


「リンナ、今日はなんで一人で行動したんだ?」

「……」


 リンナは俯《うつむ》いて何も言わない。


「心配したんだぞ」


 そう、俺はリンナのことが心底心配でならなかった。あれほど動転したのは生まれて初めてかもしれない。


「だって……」

「だって、なんだ?」


 小さい声で答えるリンナに俺は訊き返した。


「嶺渡君、ちょっとキツ過ぎだよ……」

「そうだよぉ。らしくないぞ、陰キャ君」


 明日海と夕璃乃に言われて、俺ははたと気づいた。


 俺は、知らず知らず詰問調になってしまっていたようだ。


「ほら、落ち着いて」


 沙生那が俺の肩をポンと叩いた。


「はい。あ、リンナ、俺は別に責めているわけじゃないんだぞ」


 俺の言葉に、リンナは恐る恐るといった様子で俺を見上げた。


 俺を見つめるリンナの目が、薄っすらと潤んでいるのが月明かりで分かった。


 ヤバいヤバいヤバい! 俺はとんでもないことをしてしまった。


「やくに……たちたかった……そらおの」


 嗚咽混じりで、つっかえながらリンナが答えた。


「ごめん、リンナ! 俺の言い方が悪かった!」


 リンナは、彼女なりに俺のことを助けようとしてくれたのだ。


 それを俺は、良く話を聞きもしないでリンナを責めるような話し方になってしまっていた。


 リンナが手で涙を拭っている。絶対に見たくない、見たくなかった光景だ。


「本当にごめん、リンナ。そしてありがとう、俺達を助けてくれて」


 そうだ。先走った行動だったとはいえ、リンナのおかげでアニタ姫と出会うことができたのだ。


「どうする、リンナ。そらおを許してやるかい?」

「んーー……」


 シュヴィーネの問いにリンナは小さく唸って悩んでいる。


「代わりに、私たちがお仕置きしてあげてもいいんだよぉ」


 と、ニヤニヤしながら夕璃乃が言った。


 そういうことはやめて、夕璃乃さん!


「あの、リンナさん、どうか許してもらえませんでしょうか……」


 俺がオロオロしていると、


「ほら、あんた達がおしゃべりしているうちに着いたぞ」


 アニタ姫が呆れたように言った。


「すみません、すみません、うるさくしてしまって……!」 


 俺がアニタ姫に平謝りしていると、リンナがくすくす笑うのが聞こえた。


 とりあえず、リンナの機嫌は治ったようだ。俺はホッと安堵の息を吐いた。





 俺達が案内されたのは、城壁を背にして建てられている倉庫らしき建物だった。高さは2階建てほどある。


 アニタ姫の配下がサッと散らばって周囲を警戒し、レックが倉庫と倉庫の間の細い通路に入っていった。


 倉庫の側面には通用口の扉があった。レックは扉を数回、小さい音で不規則に叩いた。


 それに応えるように扉を叩く音が返ってくると、レックが再び不規則に叩き返す。


 すると、扉が小さく開かれ、中から灯りが漏れた。


「さあ、入ってくれ。速(すみ)やかにね」


 アニタ姫に促されて入ったのは横長の倉庫だった。


 半分が吹き抜けで、もう半分には屋根裏のような中二階が設けられている。


 中二階に上がる階段の前でレックが待っていた。


「上にどうぞ」


 上のフロアは中央に大きいテーブルと椅子が置かれていた。


 壁際には小さいテーブルと木箱が二つ三つ置かれているだけで、広々とした印象だ。


 その中央のテーブルのそばに一人の女性が待っていた。


「おかえりなさい、姫様」

「おばさま」


 笑顔で出迎える女性に駆け寄って抱きつくアニタ姫。


 おばさま、ということはこの女性は王族なのか?


 にしては身なりは王族っぽくはない。そもそも王族がこんな下町の倉庫にいるわけがない。


「それじゃ、この人達が?」


 アニタ姫におばさまと呼ばれた女性が、俺達を吟味するように視線を送ってきた。


「ええ、異界から来た冒険者よ。少なくとも彼らはそう言ってるわ。それと他国のお姫様達」


 女性は、そう言うアニタ姫の言葉に頷くと、


「ようこそ、というのがこの場に相応しい言葉か分かりませんが。私はエリナ、下町で酒場をやっている者です」


 と言って、俺達に席に着くように促した。


「おばさまはね、下町の酒場を仕切っているスゴい人なのよ!」


 アニタ姫が俺たちに向かって思いっきりドヤった。


「私は父の後を継いだだけですから。さあ皆さん、かけてください」


 エリナはアニタ姫の紹介に困惑の笑顏を浮かべている。


 そして、中央のテーブルに俺達9人とエリナとアニタ姫が着いた。レックは階段のそばに立って控えている。


「それじゃ、話を始めよう。まずはあんた達のことから聞かせてもらうよ」


 アニタ姫に促されて、俺は自分達が別の世界の者で、冒険の書の不思議な力によってアルスガルドに来ていることから始めた。


 フォン達モンスター姫とはクエストを進めるうちに仲間になったこと。


 リンナはダークモンスターに囚われていたゴブリンで、俺達が助け出したこと。


「そうそう、その子はゴブリンなんだよね」

「ですね。なので、路地で見つけた時は怪しいと思ってすぐに追ったのです」


 アニタ姫とレックがリンナに視線を向けた。


 俺の横に座っているリンナは、小さい体を一層小さくして縮こまっている。


 俺はそっとリンナの肩に手を置いた。今度は俺が庇(かば)ってあげなくては。


「確かにリンナはゴブリンですが、高い能力を持った冒険者です。俺達に先行して王女様の捜索をしてくれていました」


 リンナが小さく震えたのが俺の手に伝わってきた。


「そして俺達はリンナを信頼しています」


 そう言って俺はリンナを見た。


 俺を見上げるリンナが小さく微笑みを返してくれた。


「そう。とりあえずは、それがあんたの気持ちだということは受け止めておくよ。それで?」


 とアニタ姫に促されて俺は話を続けた。


 俺達は新たなクエストとして、王女であるアニタ姫の捜索を宰相から依頼されたこと。


 そして、クエスト達成のためにはアニタ姫を王城に連れて行く必要があることを話した。


「なるほどね。あなた達の言い分は分かったわ」


 腕組みをして俺の話を聞いていたアニタ姫はそう言って頷いた。


「それともう一つあります」

「なに?」

「宰相は、アニタ姫は地下組織に誘拐されたのではと言っていました。ですが……」


 どう見ても今のこの状況は、アニタ姫が誘拐されたとは思えない。


「そんなこと言ってたのか、あの男」


 苦々しい表情のアニタ姫。


「そのへんの事情を聞かせていただけますか?」


 俺はアニタ姫に頼んだ。


 このままアニタ姫を王城に連れていけばクエスト達成、とは到底思えないのだ。


 きっと何か、俺達が知らない、或いは知らされていない事実があるに違いない。


「わかったわ」


 そう答えて、アニタ姫は姿勢を正して、俺をじっと見つめた。


 一瞬、部屋の空気が固まった。


「私はね、自らの意思で王城を出たの。暗殺の危機から身を守るために」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。