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冒険の書から始まる異世界探索〜最弱サポート役なのに、なぜか姫と美少女に溺愛されます  作者: 舞波風季


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第37話 新しいクエスト

 次の日からも暁音(あきね)は順調にクエストをこなし、レベルを上げていった。


 スライム国では、


「あなたがスライムの姫ね! 本当に美しいわ! 輝くように美しいとはあなたのためにある言葉よ!」


 と、暁音は目をキラキラさせてフォンの手を握った。


「あ、ありがとうございます」


 暁音の真正面からの賛美に笑顔を引きつらせるフォン。


 オーク国では、


「オークの姫! なんて華やかな容貌とボディを持った人なの! 女の私でも悩殺されてしまいそうだわ!」


 そう言いながら、シュヴィーネの顔から胸、そして腰回りまでを矯(た)めつ眇(すが)めつ眺め回した。


「お、おう、よろしくな」


 さすがのシュヴィーネもかなり引いている。


 トロール国では、


「トロールの姫! この肉体美! まさに美術品だわ! 触ってみてもいいかしら?」


 と言っているそばから、暁音は均整のとれた筋肉質のミローネの身体中を触りまくった。


「……」


 ミローネは返す言葉もなく、黙って暁音のされるがままになっていた。


 そんなミローネの後ろに動く影が見えた。


 俺が見ていると、ミローネの脚の後ろから、ひょこっと小さな顔が出てきた。


 リンナだった。


 俺が手を挙げて応えると、リンナはハッとしたように目を見開いた。


 尚も俺が見ていると、リンナはミローネの影から出てきて、俺のところまで小走りに駆けてきた。


 そして大きな瞳で俺をじっと見つめ、 


「そらお……」


 と、小さな声で俺の名を言った。


「リンナ、元気だったか?」

「うん……」


 まだ表情には乏しいが、心持ち頬が緩んだように見えた。


「リンナはそらおさんに会うのを楽しみにしてたんですよ」


 ミローネが俺のところに来て話してくれた。


「そうか」


 リンナを見ると照れくさいのか、もじもじしている。


 俺も同じ気分だ。嬉しいやら照れくさいやらで、なんだかこそばゆくなってきた。


「あら、嶺渡(ねわたし)君、この子は?」


 暁音が俺の横にきて訊いた。


「この子はリンナ。ゴブリンの女の子です」

「ゴブリンの女の子! なんて可愛らしいのかしら!」


 腰をかがめてリンナの顔を間近に見つめる暁音。


 リンナはいきなりのことに戸惑い、その大きな目には恐怖が浮かんでいる。


 まあ、無理もない。前回来たときは俺たちのことすら警戒していたのだから。


 初対面のうえ、遠慮なくグイグイくる暁音はさぞ恐ろしいだろう。


「嶺渡君は小さい女の子にも人気があるのね! それでこそ私のパートナーだわ!」

「別に人気があるというわけでは……」


 まだパートナーのことは諦めてないのね、暁音さん。


「そうなんだよねぇ、まさか陰キャ君がロリコンだったなんてさぁ」


 夕璃乃さん、俺違うから! ロリコンじゃないから!!


「ろりこん……?」


 リンナがキョトンとした顔で俺を見ながら呟いた。


「リンナは知らなくていいからねそうだ新しい装備を見に行こうかうんうんそうしよう」


 なんで俺はこんな早口なんだ! 


「何だか挙動が怪しいわよ、嶺渡君」


 刺すような視線で沙生那が俺を睨んだ。


「いえ、あの、その……」


 嫌な汗かいてるよ、俺!


「あたらしい、そうび……?」

「う、うん、そうだよ。武器や鎧をお店で買うんだ。リンナが使えるものもあると思うよ」


 俺の説明、ちゃんと通じたかな? と思ってリンナを見ていると、ゆっくりと表情が明るくなっていった。


「ぶきとよろい、ほしい……そらおのやくにたてる」


 どうやらリンナは、俺に恩義を感じてくれているらしい。


「それじゃ……」


 と言って俺がリンナを連れて行こうとすると、


「行きましょう、お店へ! 私も新しい装備が欲しいわ!」


 暁音が俺の手を取って歩き始めた。


 そうだ、暁音向きの新しい装備も出ているかもしれない。


 すると、俺の反対側の手が誰かに掴まれた。


 見るとリンナが両手で俺の手を掴んで引っ張っていた。


「んんーー……!」


 リンナは何やら不機嫌そうな声で唸っている。顔も何やら怒っているように見える。


「どうした、リンナ?」


 と、訊いてみたが、


「んんーー……!」


 と、俺の腕を引きながら同じように唸るばかりでよく分からない。


「一体どうしたんだ、リンナ?」


 俺がふくれっ面のリンナに訊くと、


「本当に分かってないのね、嶺渡君」

「だよねぇ、やっぱここはローキックの刑しかないかもぉ」

「嶺渡君て……」


 なにやら三女史が不穏な空気を醸し出してきた。


 どうして、ローキックの刑? おれ何も悪いことしてないよね?


「なるほどなるほど、嶺渡君の立ち位置が分かってきたわ」


 と、妙に納得したように言う暁音。


 俺の立ち位置? 俺は単なるパーティーのサポート役なんですが。


「この場合、私も嶺渡君にローキックの刑を執行してもいいのかしら?」


 刑の執行とかやめて、暁音さん! シャレになってないから!


「あなたはだめよ」

「だねぇ、暁音ちゃんは危険分子だから」

「うんうん」

「どうしてなの!?」


 三女史からダメ出しを食らって心外そうな表情の暁音。


 とりあえず、暁音からローキックを食らうことはなさそうで安心した。


 というか、そもそも沙生那達が俺にローキックの刑を執行していい根拠とは?


「仕方ないわね、今のところは引くとしましょう」


 そう言って暁音は掴んでいた俺の手を離した。


 その代わりにリンナが俺の手をしっかり握って、すぐ横に並んだ。


「どうにも複雑だよなぁ」

「そうですね」

「……」


 俺とリンナを見てシュヴィーネとフォンは納得がいかない様子だ。ミローネは困惑笑顔を浮かべている。


 ミローネは人質だったリンナ達を引き取る形になった。それもあって、シュヴィーネやフォンとは微妙な温度差があるのかもしれない。



 ◇  ◇  ◇



 トロール国の店に行くと新しい装備が出てきていた。


 まずは武器だ。


「私、刀がいいわ!」


 早速、暁音が店内カタログの【おにきり】を指差した。片刃の剣、所謂(いわゆる)日本刀だ。


 暁音がこれまでに取得した【いあいぎり】【えんげつぎり】【さんだんづき】からすれば妥当だろう。


「これで私も、やっと剣豪らしくなるわね!」


 剣豪。暁音の技からすれば、まさにうってつけの職業だろう。


 リンナが俺の袖を引いた。カタログの【くない】を指差している。


「リンナは【くない】にするか?」


 俺が訊くと、リンナは小さく頷いた。


 リンナの【技】は【かげいどう】、影のごとく素早く動く技だ。


 その素早さは残像が見えるほどで、分身の術と言ってもいい。まさにくノ一だ。


【くない】を装備して敵の間を素早くすり抜けてるリンナの勇姿を想像して、つい俺は表情が緩みそうになった。


 だが、既(すんで)のところで思いとどまった。


 すると、いつの間にかすぐ横に沙生那がいた。


「ふうん、そうなんだ」

「え……?」


 不意を突かれて俺は言葉が出なかった。


「リンナちゃんが嬉しそうでよかったね」


 と言う沙生那の言葉は優しかったが、表情は冷たく、刺すような視線で俺を睨んでいた。


 なんでそんな怖い顔なんですか、沙生那さん!


「え、えっと、次は防具を見ましょうか」


 自分でも挙動が怪しいなと思いつつ、俺はなんとか話を逸らした。


 ということで新しい防具選びだ。


「闘神のドレス、あたしにピッタリじゃないか、そう思うだろ、そらお?」


 シュヴィーネの言う通り、俺に異存はない。【けんぽうぎ】の上位互換だし、ネーミングも素晴らしい。だが……


「そのドレス、ちょっと露出が多くない?」


【とうしんのドレス】を着たシュヴィーネを見ながら、沙生那が冷ややかな声で言った。


 確かに、今まで装備していたチャイナドレス風の【けんぽうぎ】以上に、肌の露出が多い。


「そうかい? 動きやすいし、そらおもこういうデザインが好きだろ?」


 すみません、そこで俺に振らないでください、シュヴィーネさん……


「ふうん、やっぱり陰キャ君はこういう色っぽいのが好きなんだねぇ」


 夕璃乃さん、その目が笑ってない笑顔やめて! マジ怖いから!


「私は【さむらいしょうぞく】で決まりね! 強そうなのにかわいくて素敵だわ!」


 ノリノリで写真を指さす暁音。確かに強そうなネーミングの防具だ。


 デザインは、女性向けを意識したのか、明るく鮮やかな色彩だ。


 それはいい。それはいいのだが……


「それもお色気路線だねぇ、やっぱ陰キャ君の好みが反映されてるんだねぇ」


 俺の好みとか断定しないで、夕璃乃さん!


「リンナちゃんは【くのいちしょうぞく】かな……」


 明日海が一覧を見ながら言ったが、写真を見て言葉につまっている。


 見ると、これもまた肌の露出が多めの装束だった。丈の短い着物で脚には網帷子(あみかたびら)を着るデザインだ。


 10歳くらいの少女の容貌のリンナが着るには少々刺激が強いように思う。


「リンナは俺と同じ【しのびしょうぞく】にしようか?」


 是非そうしてもらいたい。既に沙生那達の視線が痛いし!


「ううん……これがいい……そらおがよろこぶ」


 リンナが【くのいちしょうぞく】の写真を指さして言った。


 俺が喜ぶとかやめてくれ、リンナぁああーーーー!


「もう確定だねぇ、ローキックの刑」

「そうだな。あたしも新しい技を試してみるよ」


 やっぱりそうくるのね、夕璃乃さん…… て、指をポキポキするのやめて、シュヴィーネさん!


 お仕置き確定になってしまったが、とりあえず皆のレベルと装備を整理してみた。


 沙生那 Lv35

【ミスリルのけん】

【ミスリルのよろい】

【ガントレット】


 夕璃乃 Lv34

【けんじゃのつえ】

【けんじゃのローブ】

【かわのグローブ】


 明日海 Lv32

【けんじゃのつえ】

【けんじゃのローブ】

【かわのグローブ】


 暁音  Lv34

【おにきり】

【さむらいしょうぞく】

【ガントレット】


 空央  Lv29

【しのびがたな】

【しのびしょうぞく】

【かわのグローブ】


 フォン Lv29

【せかいじゅのつえ】

【ひかりのローブ】

【かわのグローブ】


 シュヴィーネ Lv29

【ミスリルグローブ】

【とうしんのドレス】


 ミローネ Lv29

【ミスリルのたいけん】

【ミスリルプレート】

【ガントレット】


 リンナ Lv29

【くない】

【くのいちしょうぞく】

【かわのグローブ】


 それにしても、ミスリルの装備は鋼に比べて見た目の輝きが違う。


 新装備を身に着けた沙生那達はキラキラとしていて、ヴィジュアル的にもランクアップしたようで頼もしい。


 ところで俺は、ここのところずっとポイント2倍デーで戦っている。なのでレベルの上がりが沙生那たちよりも遅い。


 だが、そのおかげでフォン達の装備を充実させることができた。


【くのいちしょうぞく】を着て【くない】を手に構えるリンナは満足そうだ。


 リンナもきっと活躍してくれるだろう。


 新しい装備も整ったところで、俺は冒険の書を取り出した。


 そろそろ新しいクエストが出ていてもおかしくない頃合(ころあ)いだ。


「何か出てる?」


 沙生那も気になっていたようで、俺の冒険の書を覗き込んだ。


「えっと……あ」


 久しぶりの新しいクエストが発現していた。


『行方不明の王女を探そう!』



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