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冒険の書から始まる異世界探索〜最弱サポート役なのに、なぜか姫と美少女に溺愛されます  作者: 舞波風季


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第3話 スライムのお姫様

 いざスライム国へ!


 とはいえ、そもそもスライム国はどこにあるんだ?

 などと思っていたら、狩場の先に立て札があった。


『スライム国 ⇒』


 と書いてある。矢印の先を見ると遠くに森が見える。

 おあつらえ向きというか都合がいいというか……

 とにかく迷わずに済んでよかった。


 立て札を過ぎてしばらく行くと森に入った。森でもダークスライムに遭遇した。


 森のダークスライムは総じて平地よりも色が濃い個体で、強さもワンランク強い印象だ。


 やがて森が開けて木造平屋建ての建物に辿(たど)り着いた。


「あれがスライム国のお城?」


 疑わしそうに沙生那が言った。


「そうみたいですね。城というには簡素ですけど……」


 俺は沙生那に答えながら館に近づいた。


 入り口の前にはスライムの衛兵が二名いた。

 ダークスライムではなく透き通った青緑色のスライムだ。


「ここはスライム城だ」


 俺が入り口の前に立つと衛兵スライムが言った。


 横の立て札を見ると『スライム城』と書いてある。


「あの……」


 俺は衛兵にクエストのことを説明しようとした。


「クエストよ。スライム王に会わせなさい」


 沙生那が進み出て言った。まるで強制捜査だ。


「それはご苦労さまです」

「どうぞ」


 と衛兵はあっさり俺たちを中に入れてくれた。


 それでいいのかよ! とツッコミそうになったが、俺たちにとってもそのほうが都合がいいのでスルーしておいた。


 沙生那はさも当然という顔でスライム城に入っていった。




「よく来てくれた、冒険者よ」


 玉座の間らしき広間に通された俺と沙生那に、奥の壇上に鎮座しているスライムが言った。


 頭に王冠を載せてるから彼がスライムの王様なのだろう。


「早速なのだが、わが娘フォンを救い出してほしい」


(スライム王の娘、か……)


 俺はスライムのお姫様の姿を想像してみた。やはりパッチリした目のスライムなのだろうか。


「スライムのお姫様ね。それで、どこに行けばいいのかしら?」


 オレがスライム姫のビジュアルを想像しているうちに、沙生那が王様に聞いた。


 スライム王の話だと、この村の奥に洞窟があるらしい。その洞窟がダークスライムの本拠地なのだそうだ。


 スライム姫のフォンはそこに捕らえられているとのことだった。


「分かったわ。私達に任せておきなさい」


 自信満々で引き受ける沙生那。


 この流れだとボスキャラと対決ということになりそうだ。


 そういう場合、何か助言とか必須アイテムとかがありそうな気もするのだが……


「さあ、行くわよ」


 と沙生那は早くも出口に向かって歩き出した。


 まあ、なんとかなるだろうと思いながら、俺も後に続いた。




 ダークスライムの洞窟は、さすが本拠地と言うだけあってそれまでとは勝手が違った。ダークスライムとの遭遇も遥かに多くなった。


 とはいえ、


「強いのはいないわね」


 と、沙生那は余裕の表情だ。


「でも、数は多いから、気をつけたほうが……」


 俺は遠慮がちに沙生那に警告した。


 攻撃を受けても痛みがないため、ついダメージの蓄積を軽視してしまうのだ。


 やがて狭かった洞窟が広くなったところでダークスライムを二体倒した。


 この先の広い部屋が洞窟の最奥(さいおう)のようだ。


 冒険の書を見るとレベルが15になっていた。

 そして『【はやぶさぎり】を覚えた』という表示が出てきた。


【技 : はやぶさぎり】〜素早く二回攻撃できます。ただし技発動時に攻撃を受けるとダメージが二倍になります〜


(使い所が難しいなぁ……)


 などと思いながら俺は沙生那に聞いてみた。


「石蕗(つわぶき)さん、何か新しい技は覚えましたか?」

「……ううん、レベルは上がったけど技は出てこないわ」

 自分の冒険の書を見ながら沙生那が言った。


 聞くと沙生那はまだレベル14だった。15になると覚えるのだろう。

 沙生那に、俺が技を覚えたことを伝え、無理はしないようにとつけ加えた。


「大丈夫よ。ていうか嶺渡(ねわたし)君だけ新しい技ってずるくない?」


 それは仕方ない。そういうシステムなのだから、多分。



 部屋の奥の一段高くなったところに大きなダークスライムが鎮座している。

 あれがダークスライムの親玉なのだろう。


 丸っこい身体から手が出ている。その手にはグラスが握られていた。


 そのグラスに何やら飲み物を注(つ)いでいる女性が親玉の隣にいる。


 その女性は青みがかった金髪に真珠のような肌をしている。

 真珠色の肌には小さな煌めきが浮かんでいる。

 そしてよく見ると、その真珠の肌も青い金髪も透き通っているように見える。


「もしかしてあのキラキラした女の子がスライムのお姫様かしら」


 人間離れした容姿の女性を見て、驚いたように沙生那が言った。


「そうみたいですね」

 俺も少なからず驚いて言った。


 その女性は、一見すると普通の十四、五歳の少女に見えなくもない。


 だが、その煌めき透き通るような肌や髪は、彼女が普通の人間とは明らかに違う存在であることを物語っている。


「なんだ、お前らは」

 親玉がグラスの中身をグイッと煽(あお)って聞いてきた。


「ええと、俺たちはスライム王の依頼で……」

 と俺が言いかけたところで、


「スライム国のお姫様を助けに来たのよ。大人しくお姫様を引き渡しなさい!」

 と沙生那が挑戦的な口調で言った。


 すると、親玉に飲み物を注いでいた少女がハッとしてこちらを見た。


 親玉は動揺もせずに、

「ふっ、やれるもんならやってみろ」

 と不敵に笑いながら、隣の少女に手を伸ばして引き寄せた。


「あ……!」

 少女が小さく声を上げる。


「あなたがスライムのお姫様のフォンさんね?」

「はい……」

 沙生那に聞かれて小さく答えるフォン。


「あ、あの、気をつけて、このダークスライムは……」

「大丈夫よ、私に任せて!」


 スライム姫の言葉をロクに聞かずに、沙生那は【ひのきのぼう】を手に突っ込んでいった。


 今まさに、スライム姫のフォンが大事なことを言おうとしていたと思うのだが……


 俺がそんなことを思っていた時には、既に沙生那は親玉に攻撃していた。


 沙生那の【ひのきのぼう】の攻撃は見事親玉に炸裂した。

 そして、二撃、三撃と続けざまに決まった。


「ふん、ダークスライムのボスっていっても大したことないわね」


 そう言って沙生那は尚も攻撃を続けた。


 だが、親玉も丸い身体から伸び出ている腕で沙生那に攻撃をしている。

 と言っても撃つというよりは突(つつ)くに近い攻撃だ。


 大して効いてはなさそうだが、ダメージが蓄積するとバカにならない。


「石蕗さん、一旦引いたほうが……」


 俺がそう言った時、沙生那は攻撃を止めた。

 そしてその場で片膝をついてしまった。


 そして、


「はあ、はあ、はあ……」


 と、苦しそうに肩で大きく息をしている。


「石蕗さん!」


 俺は沙生那に駆け寄って声をかけた。沙生那の肩が上下に大きく動いている。


 確かに二、三回攻撃を受けていたが、その程度でこの苦しみ方は普通ではない。


「クックックッ……さっきまでの威勢はどうした……はぁ、はぁ……」


 偉そうに言う親玉だったが、そこそこ沙生那の攻撃が効いているようだ。


「石蕗(つわぶき)さん、大丈夫ですか?」


 俺は膝についている沙生那の横にしゃがんで聞いた。通常のダメージではここまで急激な疲労は感じないはずだ。


「はあ、はあ……なんだかいきなり、疲れが激しく……」


 話しながらも沙生那の息はどんどん苦しそうになっているようだ。


 その時、スライム姫フォンが、

「このダークスライムは、毒攻撃をするんです」

 と叫ぶように言った。


「余計なことを言うな!」

 親玉が触手のような腕でフォンを打とうとした。


「毒攻撃を受けると体力の消耗が……きゃっ!」

 途中まで言いかけたフォンを親玉の触手のような腕が絡め取った。 


 体力の消耗が、なんなのだ?

 沙生那を見ると未だ大きく肩で息をしている。

 むしろ苦しさが増しているようだ。


(毒攻撃……そうか、消耗が加速するのか!)


 俺は腰のベルトにつけてある小さなバッグから【どくけしポーション】を取り出した。


「石蕗さん、これを飲んでください。毒消しです」


 沙生那がポーション飲んでいると、親玉の腕が伸びてきた。


 俺は【ひのきのぼう】でそれを払った。


 沙生那の息はまだ整っていない。


「【かいふくポーション】を飲んでください」


 俺はそう言いながら、親玉の攻撃をさばいた。


 俺は次の攻撃に備えながら、横目で沙生那の様子を見た。

 毒消しと回復のポーションを飲んだ沙生那は元通り元気になっている。


 沙生那の回復を確認して、俺は視線を親玉に戻した。


(使ってみるか、新しい技)


【はやぶさぎり】だ。一度で二度攻撃できるが、技の発動中は受けるダメージが倍増してしまう。


【どくけしポーション】は沙生那に使ってしまった。


 一発でも毒攻撃を受けたら戦闘不能になりそうだ。


(一か八かだ……!)


「【はやぶさぎり】!」


 俺はそう叫んで一気に間合いを詰めて親玉に攻撃した。


 すると、一発目を打った瞬間、まるで腕が二本あるかのように、


 ダダン!


 と二発分の攻撃をすることができた。


「ぐっ……小癪な真似を……!」


 親玉が唸るように言った。


 俺の攻撃も結構効いたようだが、親玉にトドメを刺すまでには至らなかった。


 すぐさま親玉は俺に向かって触手攻撃を仕掛けてきた。


 ヤバい、これを食らったらやられる……


 そう思った瞬間、


「やぁああーーーー!」


 気合(きあい)一閃(いっせん)、沙生那が飛び込んできて、親玉に斬撃を放った。 


「ぐぁああああーーーー!」


 ダークスライムの親玉が苦悶の唸り声を上げた。


 そして、沙生那の一撃がトドメとなり、親玉は黒い粒子になって消えた。


 よかった……一時はHP切れも覚悟したが、沙生那のおかげでダークスライムの親玉を倒すことができた。


 すると、


「冒険者様!」


 と歓喜の声を上げながら、スライム姫のフォンが駆け寄ってきて、俺に抱きついた。


「え、あの……」


 俺が、突然のことでどうしていいかわからずにいると、


「なによ、美味しいところだけ持っていって。ずるいじゃない」


 険悪な表情で沙生那が言った。


「あの、倒せたのは石蕗(つわぶき)さんのおかげで、俺はサポート役ですから……」


 俺はなんとかフォンに説明しようとした。

 だが、フォンは俺にしがみつくばかりで、話を聞いもらえる状況ではなさそうだ。


「まあ、いいけど……私も助けてもらったし……」


 後半は小さい声だったので、沙生那が何を言ったのか俺には聞こえなかった。


「え……?」


 俺が聞き返すと、


「何でもない」


 と言って沙生那は、プイッとそっぽを向いてしまった。


 確かに沙生那は何か言ったと思うのだが……


 どうやら、俺はまた何かやらかしてしまったらしい。挽回のチャンスはあるのだろうか?


 とにかく、少々危ないところはあったものの、俺と沙生那はクエスト『スライム姫を助けよう!』を達成したのだった。



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