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冒険の書から始まる異世界探索〜最弱サポート役なのに、なぜか姫と美少女に溺愛されます  作者: 舞波風季


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第24話 月夜の探索

「中々見つからないわね、犯人」


 目の前の黒銀オークを見事に倒して、沙生那が言った。


「そうだねぇ」


 夕璃乃も魔法で黒銀オークを倒したところだ。


 俺達は黒銀オークと黒銀スライムを倒しながら境界線周辺の見廻りをしている。


 トロールの部族倉庫から獲物を盗んだ犯人を見つけるためだ。


 今のところ、それらしい奴は見つかってはいない。


「ダークモンスターが犯人じゃないかなぁ?」


 と、夕璃乃。確かにあり得る話だ。というより最も有力な容疑者である。


「ダークモンスターは肉を食べたりしないよ」


 とシュヴィーネ。


「詳しい仕組みは分かりませんけど、ダークモンスターは何か闇の力みたいなもので作られているようです」


 とフォンが解説してくれた。


 言われてみれば、ダークモンスターは倒すと黒い霧になって消えてしまう。生き物ではなさそうだ。


 となると、ダークモンスターは容疑者から外れる。


 とも限らない。


 獲物の骨をばら撒いて、食い散らかしたように偽装した、ということも十分考えられる。


 ダークスライムやダークオークのボスを見る限り、ダークモンスターにもある程度の知性はありそうだ。


 たが、今のところ直接の手がかりになるような物は発見できていない。


 結局この日は、黒銀モンスターを倒して探索を終えることにした。


 それはそれでレベル上げになったので無駄にはなっていない。


 皆で境界の宿屋に戻る道すがら、


「泥棒ってさぁ、夜に出るもんじゃないかなぁ」


 と、何気ない調子で夕璃乃が言った。


「実際の泥棒は昼間に盗みに入るらしいわよ」


 と、沙生那。


 確かに、現実世界の泥棒はほとんどが空き巣狙いだろう。


 だがここは異世界。RPGのような、或いはファンタジー小説のような世界だ。


 そういう世界観の中では、泥棒は深夜に活躍するものだ。


 闇から闇へ影のように素早く動き、時には屋根を伝い、窓から侵入して手早く金品を盗み、一切の証拠を残さずに消え去る。


 それがファンタジー世界の泥棒というものだ。盗賊と言ってもいい。


 だがせっかくなら、盗賊は大きな街で活躍してほしい。港街なら申し分ない。


 いや、でも活動は街なかではあっても、アジトは森の中の洞窟、というのも捨てがたい。


 やはり俺には盗賊キャラが合っているのかもしれない


 などと、俺がどんどん妄想を膨らませていると、


「なに、ぼおっとしてるのよ、嶺渡君」


 呆れたような沙生那の声で、俺はハッと我に返った。


「あ、すみません……」


 いかんいかん、妄想は自分の部屋に帰ってからにしよう。


「そういえば、私達が来る時はいつも昼間だよねぇ」

「そういえばそうね」


 言われてみればそのとおりだ。現実世界とリンクしているのだろうか?



「夜の冒険をご希望ですか? そうしたらご予約をしてください」


 宿に帰って受付さんに訊くと、そう教えてくれた。


 なるほど、予約制か。となると、夜イベントとかもあるのだろうか?


「そうですねぇ『夜にしか現れない街』なんていうのもあるかもしれませんよ」


 なにやら含みがありそうな笑顔の受付さん。


『夜にしか現れない街』。聞いただけでワクワクしてくる。


 まさに盗賊が活躍するのにうってつけではないか!


 となれば新しい【技】も欲しくなる。


 潜伏などは盗賊の基本的なスキルだろう。罠発見、解除。解錠も欲しいところだ。


「陰キャ君さぁ、何だか変なこと考えてないぃ?」


 夕璃乃が俺の顔を覗き込んで言った。


「そうみたいね。きっといやらしいことを考えてるのよ」


 と言う沙生那の目は、背筋が凍りつきそうなくらいに冷ややかだ。


 いやらしいこと? いやいや、陰キャらしいマニアックなことを考えていただけです!


「嶺渡(ねわたし)君て、そういう人なの……?」


 明日海さん、そういう人とは!?


「まあ、いいじゃないか。そらおだって男なんだからさ」


 そんな、誤解を招くようなことは言わないでシュヴィーネさん!

 しかも肩を組んできたりしたら豊かなお身体が……


「それじゃ私も……今度はきつすぎないように気をつけますね」


 ミローネさんまで肩を組んできたら……


「そらお様、いやらしいです」


 それは誤解です、フォンさん! そんな汚いものを見るような目で見ないでぇ!


「ほんと、モテるわねっ、ねわたし、くんっ!」


 語尾の強調に合わせて、沙生那が俺の脚にローキックを炸裂させた。


「だよねぇ、これはローキックの刑も当然だよっ!」


 夕璃乃も容赦なくローキックを放ってきた。


 なんでそうなるんですか、沙生那さん、夕璃乃さん!


「あらあら、この様子じゃ夜の街のお楽しみは必要ありませんね、そらおさん」


 そういうのやめてください、受付さん!


 訳が分からない女子メン達の仕打ちで締めくくられて、この日の冒険は終わった。




 そして次の日。


「やっぱり夜に来ると雰囲気違うわね」


 境界の宿を出て周囲を見回しながら沙生那が言った。


「月って、こんなに明るいんだねぇ」


 夕璃乃は夜空にくっきりと浮かんでいる満月を見上げている。


 ここは異世界、勿論電気がない世界だ。


 現実世界の日本では、よほどの山間僻地でもない限り、真夜中といえど真っ暗ではない。


 道路には街灯が立っているし、アパートやマンションにも常夜灯が設置されている。


 なので、現代日本で生まれ育った俺達には、深夜の月明かりのありがたさというものが、今ひとつ実感できない。


「月明かりを頼りに探索するって、ワクワクするね……」


 ファンタジー好きの明日海には、月明かりを頼りに森を探索するというシチュエーションがお気に召したようだ。


「念のため松明は用意してあるからね」


 そう言って、シュヴィーネが腰に下げた革バッグをポンポンと叩いた。


 それはありがたい。


 道具屋で【みちしるべのたま】は買ってある。基本的には洞窟やダンジョン用のアイテムだが、夜道でも有用《ゆうよう》なはずだ。



「じゃあ、行きましょう」


 沙生那の号令で夜の探索が始まった。


 境界付近は森の木もまばらだ。なので月明かりが差し込んでくる。


 まるで昼間のよう、と言ったら言い過ぎかもしれないが、足元が不安になるようなことはない明るさだ。


 夜でもダークモンスターは出現した。というより、夜こそモンスターの活躍の時だろう。


「夜のダークモンスターは手強(てごわ)いからね」


 シュヴィーネが皆に注意を促した。ここは慎重にいったほうが良さそうだ。


「ミローネさんは【防御アップ】を、蕗さんは【攻撃ダウン】と【速度ダウン】をお願いします」

「「はい!」」


 そこまでする必要はないかもしれないが、念のためだ。


 そして、夜の最初の会敵(かいてき)は危なげなく捌(さば)くことができた。


 いつも通り俺が先頭を切って敵に一撃を食らわせ、いつも通り俺が何度か敵の攻撃を食らった。


 こんな戦闘を続けながら、俺は【ていさつ】を使って犯人を捜索した。


 何度目かの戦闘の後、【ていさつ】にある者が引っかかった。


 通常【ていさつ】を使うと、ダークモンスターの種類と数のイメージが頭に浮かぶ。


 だが今回は違った。


「敵が……一匹」


 俺は思い浮かんだことを口にした。


「敵って、黒銀のオーク? それともスライム?」


 沙生那が身構えながら訊いてきた。


 敵が、分からない……思い浮かんだのは「?」だった。


「分かりません……」


 どういうことだ? こんなことは初めてだ。


「位置はどのへん?」


 夕璃乃も【まほうつかいのつえ】を構えている。


「この先20m位の……あ、待って……!」


 最初は一匹だったのが増えている。


「ニ、三、四……五匹います」


「ダークモンスターじゃないのかい?」


 シュヴィーネも戦闘態勢になっている。


「このまま注意して進みましょう」


 俺が先頭に立って索敵(さくてき)位置に向かって進んだ。


 やがて見えてきたのは、五体の二足歩行の生き物だった。


 月明かりで見る限り、緑色の体でやや猫背、腰には布を巻いている。


 それほど大きくはない。140cmといったところか。


 あれって……


「なんでこんなところに……」


 ミローネが息を呑むように言った。


「まったくだね」


 シュヴィーネの声には嫌悪感が滲(にじ)んでいる。


「なんなの、あいつら?」


 沙生那が訊いた。


「あれは……ゴブリンです」


 フォンが心底嫌そうな声で言った。


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