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冒険の書から始まる異世界探索〜最弱サポート役なのに、なぜか姫と美少女に溺愛されます  作者: 舞波風季


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第22話 犯人を捜せ

「お主らが冒険者か」


 声の主はトロールの王。地の底から響いてくるような低い声だ。


 トロールの王は、巨大な木の幹をくり抜いて作ったような玉座に座っていた。威厳たっぷりである。


 それにしてもデカい。他のトロールよりも更に一回り大きいのではないだろうか。


 座っている状態でも優(ゆう)に250cmはありそうだ。


 ここは、トロール国の城の所謂(いわゆる)玉座の間である。


 城とは言っても、外観的には城ではない。それどころか建物ですらなかった。


 トロール国は、森の奥の比較的木々が少ない場所に居住地があった。


 トロール達は家や小屋ではなく、こんもりと土を盛った小山に穴を掘って住んでいた。


 そして、断崖を背にした位置にある、一際大きな小山がトロール王の居城だ。


 小山の中は地面が掘り下げられているので、外観の印象よりも天井が高い。


 壁に一定の間隔で松明(たいまつ)が据え付けられている。


 壁を見ると、土の壁に藁のような物が混ざっているのが見える。


 高い天井には換気用の穴が空いている。とはいえ松明の煙たさは、慣れない者には結構きつい。


 そんな、トロールの城の最奥(さいあう)で、今俺達はトロールの王と対峙している。


「なんとも小さくて頼りないのぉ」


 トロール王は明らかに俺達にがっかりしている。


 そりゃ、トロールに比べたら小さいだろう。


「お父様」


 横に立っているミローネがたしなめるように言った。


「おう、すまんすまん」


 それまで厳(いかめ)しかったトロール王が顔をほころばせた。娘には弱いようだ。


「お主らにやってもらいたいことがある」


 ミローネに見せていた穏やかな顔を引き締め直して、トロール王が言った。


 トロール王の話ではこうだ。


 トロール国にはいくつかの部族がある。その部族同士の争いが、ここ最近頻発しているのだそうだ。


 争いの原因は、獲物の取り合いが多いようだ。


 トロールはその巨体に見合って大食いだ。なので、部族同士で猟場を厳格に決めている。


 トロール王の最大の責務は、部族同士で猟場に関して不公平感が起こらないようにすることだ。


 猟場の縄張りを決め、部族間の話し合いをトロール王の仲介で行う。


 トロール王という仕事、中々に細かい気配りが必要な勤めのようだ。


 トロールは血の気が多い種族だ。なので殴り合いの喧嘩自体はさほど珍しいことではないらしい。


 といっても、ほとんどは飲んだ勢いの喧嘩だ。そして、翌日はお互いにケロッとして喧嘩をしたことなど忘れている。


 ところが、今起こっている争いは、ただの喧嘩で済ませられる問題ではない、というのがトロール王の見解だ。


 争いがあると王女であるミローネが止めに行くのだそうだ。


「その場は止(や)めてくれるのですけど、また暫くすると……」


 ミローネが悲しそうに言う。そんなミローネを慈しむよに見るトロール王。


「わしが思うに」


 トロール王はミローネから俺たちに視線を移した。


「裏で部族同士の争いを画策してる奴がおるのであろう」


 その口調には静かな怒りが含まれていた。


「そいつを突き止めてもらいたい」


 こうして次の目標『トロール国の争いを裏で画策している者を突き止めよう!』が発動した。



 ◇  ◇  ◇



「今回のクエストは難しそうね」

「色々調べなきゃだよねぇ」


 玉座の間を後にしながら、早速沙生那と夕璃乃が相談を始めた。


 これまでのクエストは、比較的分かりやすかった。


 ダークスライムボスを倒してスライム姫を助ける。


 ダークオークの大量発生の源であるダークオークボスを倒す。


 いずれもダークモンスターと戦い、討伐することでクエストを達成することができた。


 勿論簡単ではなかったが、始めから達成目標がはっきりと分かっていた。だが今回は違う。


「ダークトロールとかがいるのかな……?」


 明日海が控えめに言った。


「今のところは聞かないですけど……」


 と、ミローネが隣を歩く明日海を見下ろしながら答えた。


 近くで見るミローネは、最初の印象以上に大きく感じた。身長は190cm位はありそうだ。


 だが、その逞(たくま)しい体格に似合わず性格は穏やかだ。話し声も小さく控えめである。


 それもあってか、同じく控えめな性格の明日海とは波長が合うようだ。


「穏やかで、かわいらしいトロール?」

「そうなの。私達の世界ではそういうトロールのお話があるの」


 どうやら二人はトロールのアニメの話をしているようだ。


「見てみたいなぁ……」


 胸の前で手を組み合わせて、瞳を憧れの気持ちで一杯にするミローネ。


「アルスガルドの人を現実世界に連れて行くことってできるのかしら……」


 話を聞いていた沙生那が疑問を口にした。


 言われてみて、俺も考えてみた。できなくはなさそうな気もする。


 実際明日海は、冒険の書を持っていなかった。


 にも関わらず、俺と触れ合うことにより「招待機能」でアルスガルドに来ることができた。


 逆パターンも可能だと考えても不自然ではない。


「あたしも行ってみたいな、そらお達の世界に」

「私もです」


 シュヴィーネとフォンも話に加わってきた。


「でもさぁ、人間じゃない人? が来たら色々大変なんじゃない?」


 夕璃乃は懐疑的だ。ミローネの顔が曇る


 だが、ミローネもシュヴィーネもフォンも、今の姿なら見た目は人間の女性と変わらない。外国人だと言えば十分通りそうな容姿だ。


「それは多分大丈夫だと思います」


 俺が言うと、


「本当ですか……?」


 ミローネの顔がぱぁっと明るくなった。


「できるかどうか、クエストが終わったら受付さんに聞いてみます」


 受付さんなら知っているだろう。今までも色々教えてくれたし。


「楽しみです……!」


 胸の前で手を組んで夢見るような表情のミローネ。


「さすがそらおだ!」

「ですね!」


 いやいや、シュヴィーネさん、フォンさん、まだできると決まったわけではないので。


 とりあえず、さっき争っていた部族に話を聞いてみることにした。


 トロール王の居城を出ると、二人のトロールが待っていた。


 争っていた部族の族長らしい。他のトロール達はそれぞれの縄張りに返したそうだ。


「また、戦ってしまう」

「うむ、戦ってしまう」


 二人の族長が言った。


「前にも聞いたけど、もう一度聞かせて。なんであなた達は戦っていたの?」


 ミローネが二人に訊いた。


「「獲物、取られた」」


 二人の答えがシンクロした。すぐさま二人は睨み合い、戦闘の構えになった。


「けんかはしないで……!」


 ミローネの声は控えめだった。にも関わらず聞くものの心に刺さるような鋭さが感じられた。


 二人は戦闘の構えを解き、恥ずかしそうに肩をすぼめた。なぜか250cmの巨体が子供のように見えた。


「獲物を取られたところを誰かが見たの?」


 今度は沙生那が二人に訊いた。


 二人のトロールは顔を見合わせたが、何も言えずに沙生那を見た。


「見てないのになんでけんかになったのぉ?」


 今度は夕璃乃が訊いた。


「倉庫の獲物、減ってた」

「骨が落ちてた、境目に」


 どうやら、貯蔵していた獲物、恐らくは鹿などの動物、が盗まれたようだ。


 そして、その盗まれた動物の残骸が、お互いの縄張りの境界に落ちていた、ということのようだ。


「以前の争いでは、罠にかかった獲物を盗まれたという話もありました」


 ミローネが顔を困惑でいっぱいにして言った。


 食糧問題が重大なのはトロールに限った事ではない。だが、多少の事なら話し合って融通し合えば良いのでは、と思ってしまう。


「トロールって、すごく大食いだからねぇ」


 と、シュヴィーネ。


 まあ、体格からして大食いなのは想像に難(かた)くない。トロール王も言ってたし。


「まあ、あたし達オークもだけどね。だから食い物に関してはすごくうるさいんだ」


 考えてみれば人間でも同じかもしれない。食い物の恨みは……なんていうこともあるのだし。


「でも、どちらも盗んでなんて、いないんでしょ……?」


 明日海が控えめな声で聞いた。


「「当然だ!」」


 野太い声で二人のトロールが答えた。


「ひ……!」


 トロールの声に驚いて、明日海は小さく跳び上がってしまった。


 すかさずミローネが、守るように明日海の肩に腕を回した。


 そして静かに、諌(いさ)めるような視線を二人のトロールに送った。


 二人のトロールの族長の顔が瞬時に青ざめた。


「こういう時って、張り込みしたりするんじゃないかしら?」

「そうだねぇ。やっぱ証拠がないとだよ」


 という沙生那と夕璃乃が提案で、二つの部族の境界付近で見張りをしてみようということになった。


「境界の近くには宿もありますから」


 と、ミローネが教えてくれた。


 何とも都合がいい。


 今日のところは、その宿で冒険をきり上げることにした。


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