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冒険の書から始まる異世界探索〜最弱サポート役なのに、なぜか姫と美少女に溺愛されます  作者: 舞波風季


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第20話 トロール国

 明日海(あすみ)のダークオークボス討伐クエストも無事終わり、俺達は揃って新しいクエストに臨(のぞ)むことになった。


 新しいクエストは『トロール国の争いを解決しよう!』だ。


「トロール国は北の門から出た先ですよ」


 営業スマイル全開で受付さんが教えてくれた。


 最初の行動目標は『トロール国の姫に会おう!』とある。


 トロールについては、昨夜のグループチャットで皆に訊いてみた。



 夕璃乃>えぇ〜知らないよ〜てか陰キャ

 君が知らないなんてダメじゃ

 ん!


 沙生那>嶺渡君が知らないのに私達が知

 ってるわけないでしょ!


 と、夕璃乃と沙生那に怒られてしまった。


 いや、俺も全く知らないというわけではなく、巨人族的な種族だということは、以前何かの小説で読んだ記憶はあったのだが……


 明日海>アニメのキャラクターでいるよ

 ね、海外の。かわいいモンスタ

 ーじゃない?


 と、明日海が助け舟的な返信をしてくれた。


 空央>さすが蕗(ふき)さん、ファン

 タジーのことは何でもござれです

 ね!


 明日海>そんなことないよ〜


 空央>これからもよろしくです!


 沙生那>嶺渡君、あなたはリーダーでし

 ょ!しっかりしなさいよ!!


 夕璃乃>そうだよ〜!リーダーなんだか

 ら明日海ちゃんに頼っちゃだめ

 だよ〜!!


 と、何故だか沙生那と夕璃乃に怒られてチャットは終わった。



 ◇  ◇  ◇



 スライム国とオーク国は村の東の出口を出た平原の先だ。なのでこれまでは北門を使うことはなかった。


 実際北門は、今までは閉ざされていて出ることができなかったが。


 どうやらダークオークボス討伐クエスト達成により、北門が使えるようになったようだ。


 北門を出ると、緩やかな上り坂が小高い丘に向かって延びていた。


「新しいエリアに行くのってワクワクするよねぇ」


 周囲を見回しながら夕璃乃が言った。


 隣を歩いている明日海が「うんうん」と頷(うなず)いている。


 明日海は出発前に装備を新調した。旅立ちの村でもレベルアップに合わせて上位の装備が買えるようになることが分かったのだ。


 明日海の技と装備は以下の通りだ。


 ○あすみ : Lv26

 技 : 【攻撃ダウン】敵単体の攻撃力

 を下げる。

  【速度ダウン】敵単体の素早さ

 を下げる。

 装備 :【まほうつかいのつえ】

  【まほうつかいのローブ】

  【かわのグローブ】


 明日海は補助魔法専門キャラで間違いないようだ。彼女が敵の攻撃に晒されないように気をつけなければと、俺は気持ちを引き締めた。


 ここで、現在のパーティーメンバーの役割に、俺なりの考えで職業を当ててみた。


 沙生那 剣士

 夕璃乃 魔法使い(攻撃系)

 明日海 魔法使い(補助系)

 フォン 治癒士

 シュヴィーネ 格闘家

 空央 盗賊?


 どうにも、俺の役割が曖昧だ。やや素早さが秀(ひい)でているので盗賊的な装備をしてはいるが……


 などということを、つらつら考えながら歩いていると、


「敵よ!」


 沙生那の鋭い声で俺は我に返った。


 見るとダークスライムが五体現れていた。一瞬、色の黒さから最上位の個体に見えた。だが、よく見ると、その体は鈍く輝いている。


「ちょっと、色の感じが違うねぇ」


 夕璃乃も気づいたようだ。


「慎重にいくわよ」


 そう言いながら沙生那が敵前衛に斬りかかった。


 この黒銀色《くろぎんいろ》のダークスライム、戦ってみると、やはり今までのダークスライムとは強さが違っていた。


 体感的にはダークオークの最上位種と同等か若干強い、といったところだ。


 その後も黒銀ダークスライムと何度か遭遇しているうちに、森の入り口に辿り着いた。


 入口には、


 ⇒トロール国


 という標識が立っていた。


 地形の境界を越えると、一度に出現するモンスターが増えるか、上位のモンスターが出現することがほとんどだ。


 俺は【ていさつ】を使うことにした。


「で、どう、陰キャ君?」


 夕璃乃が訊いてきた。


「黒銀スライムが6体と黒銀オークが1体です」

「黒銀のオーク……かなり強そうね」


 剣の柄に手をかけながら沙生那が言った。


 黒銀スライムは上位ダークオークと同等以上だった。


 となれば黒銀オークは当然それを上回ることになる。


 ここは技の出し惜しみはしないほうがよさそうだ。


「蕗(ふき)さん、俺が援護しますので、黒銀オークに【速度ダウン】と【攻撃ダウン】をかけてください」

「うん……!」

「で、あたしがぶっ飛ばすって寸法だね」


 拳を握りしめるシュヴィーネ。


「それじゃ私達はスライムに全体攻撃だね」

「まっかせなさぁーーい」


 と、沙生那と夕璃乃。


 そして、間もなく敵パーティと遭遇した。


 結果としてはほぼ想定通り、と言いたいところだが、結構際(きわ)どかった。


 俺の麻痺攻撃が思いのほかかからなかったのだ。


 成功率50%じゃなかったのかい! などと心の中でツッコミを入れていたら、黒銀オークが反撃してきた。


 ヤバい……! と思った時、


「速度ダウン!」


 明日海が技をかけてくれた。


 そこに、シュヴィーネが飛び込んできた。


「とりゃあーーーー!」


 掛け声とともに、シュヴィーネが黒銀オークに二連打を叩き込んだ。


 一方、黒銀スライムは、沙生那と夕璃乃の全体攻撃で対処した。


「まずい、撃ち漏らした……!」


 沙生那の鋭い声が聞こえた。見ると1体がまだ残っており、前衛の沙生那に触手を伸ばすようにして打ち掛かろうとしていた。


 単体攻撃に比べて全体攻撃は、次の攻撃に移るのに若干の時間を要する。


 俺は、黒銀オークの攻撃を避けてすぐに、沙生那が撃ち漏らした黒銀スライムに撃ちかかった。


 黒銀スライムの伸ばした触手が沙生那に届こうかというその瞬間、ギリギリのところで俺は沙生那と黒銀スライムの間に身体を滑り込ませることができた。


 それに合わせるように、


「攻撃ダウン!」


 と、明日海が黒銀スライムに技をかけてくれた。


 その直後、黒銀スライムの触手が俺の左肩に撃ち込まれた。


 スライムの触手は毒攻撃だ。食らうと急激に疲労が蓄積する。


 だが、明日海の【攻撃ダウン】のおかげか、疲労は微量で済んでいる。


「はやぶさぎり!」


 俺は【しのびのたんとう】で技を放った。


 これでとどめを刺せなければかなり危うい状況になる。


 だが、黒銀スライムは俺の攻撃を受けて光る黒い粒子となって消えた。


「大丈夫!?」


 沙生那が俺に駆け寄ってきた。


「はい、大丈夫です」


 と答えたものの、明日海の援護のおかげでHP切れになる程ではないとはいえ、結構な疲労感だ。


「そらお様!」


 フォンが駆け寄ってきて回復魔法をかけてくれた。


 トロール国に入った途端、厳しい戦闘になった。


 勝てないレベルではなかったが、気をつけていかないとHP切れを起こすメンバーが出てしまうかもしれない。


 一旦戻って、森の手前でレベル上げをするか? という考えも浮かんだ。


 だが、それはそれでつまらない。やはりここはトロールに会うまではクエストを進めたい。


 もし、危なくなってもHP切れは俺だけで済むだろう。


 その先も、二回黒銀スライムと黒銀オークの群れに遭遇した。


 黒銀オークが二体いた時はかなり危うかった。だが、なんとかかんとかHP切れを起こさないで倒すことができた。


 次にこれ以上に強い群れに出くわしたらヤバいな……


 などと思いながら進んでいくと、なにやら野太い怒声が聞こえてきた。


 それも一人二人ではない。少なくとも十人はいそうだ。


「なんか聞こえてきたわね」

「そうだねぇ」


 沙生那と夕璃乃も気がついて武器を構えた。


「あれはトロールだね」


 シュヴィーネが言った。その声は平坦で、特に警戒しているようではなかった。


「え……トロールって穏やかでかわいい種族じゃないの?」


 明日海が意外そうに言った。


「穏やか? かわいい? ははは、まさか」


 シュヴィーネは片腹痛いといった様子だ。


「トロールは、大きくて乱暴な種族です。悪い種族ではありませんけど……」


 フォンも苦笑いしている。


 そんな話をしているうちに怒声は益々大きくなり、やがて俺達は森の開けた場所に出た。


 そこで遭遇した光景に、夕璃乃も沙生那も明日海もたじろいでしまっている。勿論(もちろん)俺もだ。


 それは、2メートルをはるかに超える体躯の持ち主が殴り合っている光景だった。


 しかもその人数は、ざっと数えただけでも二十人近くはいそうだ。


「あれがトロールだよ」 


 どこか面白がっているような様子でシュヴィーネが教えてくれた。



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