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冒険の書から始まる異世界探索〜最弱サポート役なのに、なぜか姫と美少女に溺愛されます  作者: 舞波風季


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第19話 グループチャットと新しい技

「これ……楽しいね、嶺渡(ねわたし)君」


 ダークスライムを倒し、平原を見回して嬉しそうに言う明日海(あすみ)。


 明日海は旅立ちの村の平原でのダークスライム狩りを順調にこなしている。


 アルスガルドの世界は所謂(いわゆる)中世ヨーロッパ風の世界観だ。


 明日海は元々ファンタジー小説好きだ。そんな明日海にすれば、そういった世界観が彼女の心を浮き立たせているのかもしれない。


 また、ゲーム慣れしていないせいか、明日海は慎重派だ。敵からの攻撃を受けないように細心の注意を払っている。俺がRPGを初めてプレイした時を思い出す。


 攻撃を受けると痛みはないが疲労が蓄積する、ということは説明してある。


 そして、攻撃を過度に受けるとHP切れになってしまうことも話した。実際俺は、最初の冒険でそうなった。


 沙生那と夕璃乃も、HP切れは起こさなかったものの、攻撃を受けすぎてかなり疲労した。


 だが、明日海は深追いはしない。一撃を打っては下がる。そして間合いをとって二撃目を撃つ。時間はかかるが安全で確実だ。


 明日海がレベル5になったところで、この日の冒険は終わることにした。


「あの……ごめんなさい、私に付き合わせちゃって……」


 申し訳なさそうに言う明日海。


「いいのよ。私達も狩りしたし」

「そうそう。なんかアイテムも落としたしねぇ」


 そうなのだ。明日海がダークスライムでレベル上げをしている間、沙生那と夕璃乃は離れたところでダークスライム狩りをしていた。


 今の沙生那達のレベルでは、この辺のダークスライムを倒しても殆どレベルアップの役には立たない。


 だが、今日はダークスライムを倒すと、アイテムを落とすようになったのだ。


 落とすアイテムは【かいふくポーション】だ。使ってみると、道具屋で売っているものより回復量は少ない。


 それでも【かいふくポーション】はありがたい。いくらあっても困ることはない。


 なので沙生那と夕璃乃はせっせとアイテム集めに精を出していたのだ。


 その日の冒険を終えて皆で俺の部屋に戻ると、


「明日も一緒に行ける……?」


 と明日海が俺に訊いてきた。勿論、そのつもりだ、明日海さえよければ。沙生那達ともいつもそうしているのだから。


「連絡はどうするの?待ち合わせとか……」

「それなら私と連絡先を交換しましょう」


 明日海に沙生那が答えた。すると、


「それよりさぁグループにしたほうがよくない?」

 と夕璃乃が提案した。


 なるほど。それなら皆で情報共有もできて便利だ。


 ということで夕璃乃がグループを作ってくれた。


「じゃ、これからはこれでいこうねぇ」


 と、グループの幹事役のようになった夕璃乃が言った。



 ◇  ◇  ◇



 その日の夜、早速グループチャットが始まった。


 明日海>今日はどうもありがとう。


 沙生那>これからもよろしく!


 夕璃乃>よろよろ〜楽しくやろうね〜!


 空央>よろしくおねがいします。


 こんな感じでやり取りが始まった。


 沙生那>新しいクエスト出てるわね。


 夕璃乃>『トロール国の争いを解決しよ

 う!』だって。


 明日海>トロール! 楽しみ!


 空央>まずは蕗さんのクエストを進めま

 しょう。


 やはり明日海はトロールに反応した。俺も楽しみだ。



 ◇  ◇  ◇



 次の日は時間を決めてアルスガルドに現地集合した。


「そらお様、また女性のお仲間が加わったのですね」


 妙に落ち着いた調子でフォンが言った。明日海のダークスライム討伐クエスト要請を受けに行った時だ。


「そうなのよ……」

 小さくため息をつきながら言う沙生那。


 なんでそんな呆れたような顔なんですか、沙生那さん!


「わぁーースライムのお姫様、綺麗ぃーー!」


 明日海がらしくない黄色い歓声を上げてフォンに駆け寄った。


「透き通るような青い髪、真珠のように輝く肌、金色の瞳!」

「あ、ありがとう、ございます」


 突然のことにドギマギしてしまっているフォン。


「スライムの姿にもなれるのですか? それとも普段はスライムの姿で今が変身した姿なのですか?」

「ええと……だいたいはこの姿でいますけど……」


 明日海の猛烈な早口にたじたじといった体(てい)のフォン。


 どうやら明日海はファンタジーオタクのようだ。俺的には強い親しみを覚える。


「蕗さんて控えめに見えて結構積極的ね」


 とは沙生那の感想だ。


 そして、その日のダークスライムボス討伐クエストも危なげなく達成した。


 次の日はオーク国へと向かった。オーク国に入って間もなくシュヴィーネに出会った。


「さすがそらおだねぇ、まぁた別の女をたらしこむとは」


 そう言って明日海を見るシュヴィーネはジト目になっている。


 たらしこむ!? そんな誤解を生むようなことは言わないで、シュヴィーネさん!


 だが明日海はそんなこと気にもせず、シュヴィーネに駆け寄った。 


「オークのお姫様なのに凄い美人さんなんですね! しかもナイスバディ! やっぱり普通のオークみたいに豚の顔にもなれるのですか?」


 シュヴィーネの顔から身体つきまで興味津々で見回しながら、遠慮ない質問までする明日海。


「お、おう……まあな」


 さすがのシュヴィーネも明日海の勢いに気圧(けお)されてしまっている。


「中々やるよねぇ、明日海ちゃんて」


 夕璃乃も明日海に対する認識を改めたようだ。


 そして、ダークオークボス討伐も順調に達成した。


「これで嶺渡(ねわたし)君と同じクエストができるね」


 明日海が嬉しそうに言った。


 俺と、というか俺達、俺と沙生那と夕璃乃の三人とも同じです、明日海さん。


 気がつくと沙生那と夕璃乃が俺の両脇を固めていた。


 え、何?


「よかったじゃない、嶺渡、君っ!」

「ほんとほん、とっ!」


 言葉に合わせて、沙生那と夕璃乃が俺に肘鉄(ひじてつ)を食らわせてきた。


「うぐっ……!」


 だから味方からの攻撃は痛いんだってばさ!


「ふふ……楽しいね」


 痛がる俺を見て何故か嬉しそうな明日海。


「そうよね」

「でしょでしょ?」


 加害者である沙生那と夕璃乃も一緒になって嬉しそうにしている。


 このパーティーでの俺の立ち位置って……いじられ役?


 ちなみに、ダークオークボス討伐を終えた段階の明日海のレベルは26だ。レベル25の俺は抜かれてしまった。


 HP切れになった俺と違い、明日海はしっかりとダークオークボスを倒した。


 俺達は一度戦った経験があるとはいえ、人数が増えた分ダークオークボスも強くなっていた。


 なので前回同様、俺は苦戦を予想していた。


 だが今回は、俺が予想していたよりもずっとスムーズに、ダークオークボスを倒すことができた。それには理由があった。


 それは明日海が覚えた【技】だ。


 明日海はレベル15で【攻撃ダウン】を、レベル21で【速度ダウン】を覚えたのだ。


 どちらの技も、一定時間敵の能力を下げる、所謂(いわゆる)デバフ魔法だ。


 どうやら明日海は補助魔法キャラのようだ。今のところデバフ魔法のみだが、この先バフ魔法も覚えていくかもしれない。


「デバフ……?」


 ゲームをやらない明日海には馴染みのない言葉だったようだ。


 なので敵の能力を低下させるのがデバフ、味方の能力を強化するのがバフだと説明した。


「すごぉい……!詳しいんだね、嶺渡君」


 と、明日海が思いの外感心してくれた。


 そんなに感心されるとなんだかこそばゆい。ゲームをやってれば誰でも知っていることだし。


「陰キャくぅーーん、まぁた、明日海ちゃんをたらしこもうとしてるねぇ?」


 夕璃乃が、いつの間にか俺の斜め後ろに忍び寄っていた。


 なんだか最近はこのパターンが多い気がする。夕璃乃は隠密の技でも覚えたのだろうか?


 などと夕璃乃に注意を向けている隙に、


「そうよ、蕗さんに変なことしたら許さないからね」


 と、沙生那が目の前に現れた。


 ていうか、変なこととは!?


「うふふ……本当に楽しいね」


 あなたの楽しいのポイントが今ひとつ分からないのですが、明日海さん!


「それじゃ、今日はここまで。また後でグループチャットでね」


 パーティーの実質的リーダーの沙生那が締めた。


 次はトロール国だ。トロールがどういう種族なのか俺も詳しくは知らない。


 もしかしたら明日海が詳しいかもしれない。後でチャットで訊いてみよう。



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