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冒険の書から始まる異世界探索〜最弱サポート役なのに、なぜか姫と美少女に溺愛されます  作者: 舞波風季


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第13話 新しい技と新しい装備

 今日はゴールデンウイーク勉強会の最終日。


 沙生那と夕璃乃の指導のおかげで、俺の学力も随分とアップした。と思いたい。


 最終日とあって、母親も気合を入れておやつを用意した。

 俺が見たこともない赤いケーキだ。


「「きゃぁーーーー!♡」」


 沙生那と夕璃乃が揃って黄色い歓声を上げた。聞くと苺のモンブランというケーキらしい。


 そして、「あんたはこれ」と言って母親が俺の前に置いたのは、お徳用大袋ポテチと2リットル入りコーラだ。

 さすがは母親、俺の好みを熟知している。


 基本俺は菓子類は塩(しょ)っぱい派だ。たが飲み物は甘くなくてはいけない。

 ポテチにはコーラ、これは譲れないところだ。


 俺がポテチをバリバリ食いながら、コーラをグビグビ飲んでいると、


「嶺渡君、そんなにポテチ食べてコーラ飲んでると糖尿病になっちゃうわよ」

「そうだよぉ、今は若くても糖尿病になっちゃう人がいるんだからぁ」


 と、沙生那が眉をひそめながら言い、夕璃乃も追随してきた。


 糖尿病がどれほど恐ろしい病気なのかは俺には今ひとつ分からない。今度母親にでも聞いてみよう。


「ダークオークの討伐は今日で終われるかしら?」


 苺のモンブランを食べ終えて、紅茶を飲みながら沙生那が言った。


 昨日の戦闘の感触だと必ずしも無茶な戦いでもないように思える。


 ただ、ダークオークの本拠地に入れば、敵との遭遇も多くなるのは間違いない。


 心配なのはMPだ。敵が強くなれば技に頼る頻度が増える。特に夕璃乃はそうだ。


「回復ポーションってMPは増えないの?」

 と、夕璃乃。


 回復ポーションはHP回復用だ。今のところMPを回復するためには宿屋での仮眠しかない。


「新しい技も増えたしね。MPには気をつけなきゃいけないわよね」


 沙生那が冒険の書を見ながら言った。


 沙生那の新しい技は【なぎはらい】だ。


『一度の攻撃で複数の敵にダメージを与えられます。前衛の敵ほどダメージが大きくなります』


 いわゆる全体攻撃だ。有用な技だが、個々の敵に与えるダメージは単体での攻撃よりも少ないだろう。


「私は【だいかぜまほう】って出てきたよぉ」


 夕璃乃が冒険の書を見て言った。


「んとねぇ『複数の敵にダメージを与えます。呪文は「風よ、吹き荒れろ」です』だって」


 それはありがたい。夕璃乃の【かぜまほう】にも全体攻撃があれば、沙生那の【なぎはらい】との連携が可能だ。


 俺の新しい技は【ていさつ】だ。効果は『近くにいる敵の種類と数を察知することができます』とある。


 地味な技ではあるが、実際の戦闘で事前に敵の状況が分かるのは大きい。


 しかもこれには続きがあった。


『冒険者のレベルが上がると、より詳しく敵の情報を察知できます』


 強さや弱点、特殊攻撃の有無などが分かれば有利に戦闘を進められる。何より楽しい。


 だが、まずは新しい技を試してみたいところだ。併せてMPのことも確認しておきたい。


 なので、ダークオークのボスに対決を挑む前に、新しい技に慣れつつレベル上げをしていくのが良策だ。


 そのことを沙生那と夕璃乃に話すと、


「そうね、それがいいかも知れない」

「いいよぉ、陰キャ君が言うとおりでぇ」


 と、二人とも賛同してくれた。


 おやつを食べながら冒険の作戦会議というもの悪くないものだ。


 というより、めっちゃ楽しい!


 こんなに楽しくていいのだろうか?


 ヤバい、そんなことを考えたらフラグになってしまうではないかぁ!


 気をつけろ俺!




 ◇  ◇  ◇



「新しい武器が増えてるわ。【てつのつるぎ】だって」


 と、沙生那。


 ゴールデンウイーク後の最初の冒険の日、俺達は先ず武器屋と道具屋を見に行った。


 そして、俺の興味をひいたのは【しのびのたんとう】だ。


 この【しのびのたんとう】攻撃力は低いが、特殊効果として素早さが上がる。そして『50%の確率で敵を麻痺させることができます』とあった。


 パーティーのサポート役の俺にうってつけの武器だ。


 一方防具を見ると【くさりかたびら】【ガントレット】【かわのグローブ】が増えていた。


 隣の道具屋を見るとこちらにも新しいアイテムが増えていた。


「【MPポーション】だってぇ!これってMPが回復するんでしょ?」


 夕璃乃が嬉しそうに言った。


 MPポーションはありがたい。この先の冒険で敵が強くなってくるのは間違いない。そうなれば技の使用頻度も増える。


 ここで皆の装備と技を整理してみた。


 ○そらお : Lv23

 技 :【はやぶさぎり】単体攻撃 

 一振りで二発攻撃できる

  【ていさつ】近くにいる敵の種

 類と数を知ることができる

 装備 : 【しのびのたんとう】

  【たびびとのふく】

  【かわのグローブ】


 ○さきな : Lv23

 技 : 【こんしんげき】単体攻撃

 (敵の強さによっては縦方向に

 複数攻撃も発生する)

  【なぎはらい】全体攻撃

 装備 : 【てつのつるぎ】

  【くさりかたびら】

  【ガントレット】


 ○ゆりの : Lv21

 技 : 【かぜまほう】単体攻撃

 (呪文によって攻撃力を変える

 ことができる)

  【だいかぜまほう】全体攻撃

 装備 : 【まほうつかいのつえ】

  【まほうつかいのローブ】

  【かわのグローブ】


 そういえばフォンやシュヴィーネのレベルはいくつなのだろうか?

 訊いてみると、


「私はそらお様と同じです」

「あたしもだよ」


 と、フォンとシュヴィーネから答えが返ってきた。


 フォンとシュヴィーネは、RPGで言うところの加入キャラと言える。


 その加入キャラが俺と同じレベルというのはお得で心強い。


 ところで、フォンは毒の治療と回復の魔法が使える。シュヴィーネは何か技が使えるのだろうか?


「殴る蹴る、だな」


 ドヤ顔で答えるシュヴィーネ。それも技と言えば確かにそうだが、俺が聞きたいのはそういうことではない。


 まあ、鋲付きグローブを嵌めていたところからすれば、格闘技系のキャラなのだろうとは思っていたが。


「あと、絞め技も得意だぞ」


 うん、そうじゃないかと思ってた。


 ということで、ひと通り技や装備、アイテムの確認を終えて、俺達はレベル上げをすべくダークオークエリアに向かった。



 ◇  ◇  ◇



 俺の新しい技【ていさつ】は思っていた以上に有用だった。


 遭遇する前に、最も近くにいる敵の強さと数が分かるのだ。


【ダークオーク】グレー3体、ダークグレー3体、といった具合だ。そのおかけで戦術が立てやすくなる。


 まずは沙生那の【なぎはらい】と夕璃乃の【だいかぜまほう】の合わせ技で攻撃してみた。


 するとダークグレーまでは、これで倒せることが分かった。


 だが、これだと過剰になってしまうかも知れない。MPポーションがあるとはいえ、MPは節約するに越したことはない。


 なので、別の戦術も試してみた。


 まずは沙生那か夕璃乃のどちらかが全体攻撃をする。


 これで、グレーの個体はほぼ倒せる。残ったダークグレーは俺やシュヴィーネが個々に攻撃して倒す。


 この方式ならMPを節約できて、ボス討伐まで温存できる。


「これって、楽しいわね」

「だねぇ、色々試してみたくなるしぃ」


 どうやら沙生那と夕璃乃も、新しい連携攻撃を気に入ってくれているようだ。


「そらおの作戦のおかげでダークオークのアジトもすぐにぶっ潰せそうだな」


 シュヴィーネがニカッと笑いながら俺の肩に腕を回そうとしたが、あらかじめ察知していた俺はサッと避けた。すると、


「あたしが嫌いになったのかい、そらお……?」


 とシュヴィーネが悲しそうに言った。


「い、いえ、そ、そんな事は決して……ただ皆も見ているので……」

「それじゃ、皆が見ていない所でならいいんだな?」


 悲しげだったシュヴィーネの顔に邪悪な笑みが広がった。


「そ、そういう意味ではなくて……!」


 ヤバいヤバい!


「そらお様……」


 そう言う金色のフォンの目には深い怒りが宿っていた。


「陰キャ君さぁ、それはちょっとないんじゃないかなぁ」


 そう言う夕璃乃は一応笑顔ではあるが、目は全く笑っていない。


 俺は恐る恐る沙生那を見た。


 沙生那は腰に手を当てて仁王立ちで俺を見ていた。とてつもなく冷めた目で。


 違う、違うのだ。


 俺は、メンバーがそれぞれの特技を活かして、効率よく敵を倒せる手法を提案しただけなのだ。


 そしてパーティーの和をより一層強くしたかっただけなのだ。


 俺は何とかして沙生那に意図を説明しようとした。


 沙生那は俺の話をじっと聞いていた。そして、


「そう」


 と、呟いて小さく息をすると身を翻した。


 納得してくれたかのような沙生那の素振りに俺はホッとした。


 だがそれもつかの間、


 バシッ!


 振り返りざまに沙生那のローキックが俺の脚に炸裂した。


「痛(いって)えっ!」


 やっぱりこうなるのか……



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