始まりの夜会にて(2)
「もし、アリア嬢がよろしければ。僕と少し話しませんか?」
気になってしまったからには仕方がない。
まずは話さないと始まらない。これでも貴族だし、アリア嬢は爵位が上の令嬢なので、失礼が無いように気を付けなければいけないが。
「…私と、ですか。ええ、勿論。」
普段の噂から薄々は感じていた事だが、アリア嬢はあまり積極的に人と関わるタイプではないらしい。
僕が自分から話しかける、という行為に少しだけ驚いたような表情をしていた。
「アリア嬢は王宮の研究所で様々な研究をしていらっしゃると耳にしますが、何か着想を得るような出来事も多いのでしょうか?」
「えぇ、私は普段研究ばかりしていると思われる方も多いそうですが、気分転換に庭園を散歩したり、騎士の方々にお話を聞いたりしております。そこから必要な物や、興味を持った物に関して調べていますね。」
こんな話を聞いていると、ただの普通の女の子だな、とは思う。それでもその「興味」から研究成果を出しているから本当に有能な人なんだろう。
「成程。僕もかなりの頻度で王宮に通っておりますので、お見かけした際には声を掛けても?」
「構いませんよ。ただ、この歳で婚約者が居ない2人が話す…となると、少し噂は立ちそうですね。」
そう、僕もアリア嬢も婚約者が居ない。
この国の貴族は基本、16歳で成人であり、その年に婚約者が決まることが一般的だが、既に16歳となっている僕もアリア嬢も、婚約者はまだ決まっていない。
「ああ、確かに。僕の両親は出来るだけ要望を聞く、という感じなので問題ないかと。」
「私も同じような感じです。貴族としての責務は果たさなければなりませんが、やはり結婚は人生の大きな節目ですものね。」
この国の婚姻は基本的に解消しない。相手と死別した場合は再婚も有り得るものの、"星の祝福"により、死別の割合はかなり少ない。
「そういえば、アリア嬢の"祝福"はどの星なんでしょうか?」
この国の初代国王は「星の使者」と呼ばれる、星座の精霊の祝福を受けた存在と伝えられている。
その血を濃く引き継いでいる王族・貴族は"星の祝福"と呼ばれる星座からの祝福を受けている。
星座によって特殊な力が授けられていて、僕のさそり座の祝福は「感情を見抜ける能力」。両親にはあまり口外しないように、と言われてるのは、何の星座の祝福かは幼い頃に神殿へ行くことにより分かるけれど、具体的な能力は基本的に口外しないのが貴族社会での暗黙の了解らしい。
「私の、祝福ですか。それは…、」
少し、何かを思い出すような目の伏せ方。
「…いえ、今は言わないでおきましょう。いつか、貴方が理解する時が訪れるかもしれませんね。」




