始まりの夜会にて(1)
___出会った瞬間、運命だと思ってしまった。
夜空のような髪に、エメラルドの瞳。纏うドレスは星空のようで。
つい、息を飲んでしまっていた。
「あら、先客が居ましたか。」
綺麗な透き通る声。わざわざ尋ねなくとも分かる、その絶対的な雰囲気と外見。
「私はアリア・シトリファー。グラファイス伯爵令息とお見受けします。お噂はかねがね。」
「えぇ、僕が父上の名代としてこのパーティーに参加させて頂いております、リシェード・グラファイスです。素晴らしい研究をされているアリア嬢にお会い出来て光栄の至りです。」
彼女は、アリア嬢は、王宮の研究所に15歳という若さで入所し、16歳となった今、様々な功績を挙げ、国王陛下からも一目置かれている人物。爵位が違い、更には伯爵家を継ぐ事が決まっている僕には縁がなかなか無い相手。
「そう畏まらなくて大丈夫です、ここは人の目もありませんし。」
…そして、常に無表情な"氷の侯爵令嬢"としても有名な人。穏和で人当たりが良いと言われてきた僕とは、まるで正反対な存在。
それでも、どうしても目を逸らす事が出来なくて。
「お気遣い、感謝します。」
そして、願わくば___ 貴女の、笑った顔が見てみたい。
そう願わずには居られないほど、貴女の瞳は酷く悲しくて、寂しい。そんな色をしている。
僕は幼い頃から、人の感情を見抜く能力に長けていた。5歳くらいまでは天真爛漫、好奇心旺盛な子供らしい子供だったと思う。両親は僕を愛してくれるし、侍女も執事もみんな優しい。
伯爵家の生まれだったから、その頃から第1王子であるリゲルとも接点があり、言わば幼馴染、というやつでもあった。
けれど8歳の時、不思議なことが起きた。
「グラファイス家さえ無ければ…、私が殿下のお気に入りになるはずだったのに!!」
父様も母様も居ない時に、どこだったか、有名な伯爵家の令嬢にキレられた。うん、今考えてみても理不尽。
その時に、憎悪、怒り、悲しみ、そんな感情が瞳に映っていることに気付いた。その事を父様と母様に相談したら、
『リシェード、よく聞きなさい。貴方はその感情を見抜く能力を、他者に言ってはなりません。』
『だが、味方となる人は多い方がいい。将来的、リシェードの味方が多くて困ることはないからね。』
と言われ、それ以来、穏やかで人当たりの良い性格を演じてたら、それがいつか素に近くなり、「リシェード・グラファイスは穏和で人当たりも良く、素晴らしい人格をお持ちだ。」なんて噂が流れるようになったのである。
ただ、本来の好奇心はあるし、それに突き動かされる事もある。最近はそういう事も少なくなっていたのに、今回はどうしても気になってしまう。
それほど、何故か貴女に無性に興味が湧いてしまったんだ。
本当に、自分でも不思議なくらいには。




