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理想郷  作者: Zero_One
二章
32/35

初めてはゴブリン

 あらかた準備も出来た。そしてピーちゃんにこんなにステータス上がったよと、自慢したい気持ちを抑えられなかった。

 彼女の表情は曇り空だった。

 何かを云って良いのかどうか迷っている感じにも見えた。ここで黙って気付かぬ振りをしていれば良かったのに、聞いてしまった。


 ピーちゃん曰く電脳によるステータス減少もあるが、そのステータス値はレベル10くらいのステータスくらいだと云う。

 HPに関していえばレベル5以下だと云う。

 電脳を全くしていない人の、レベル10くらいのステータスの標準値の様なものも聞いた。

 HP400~600

 MP200~300

 ST200~300

 STR又はINT200~300

 VIT100~300

 SPR100~200

 DEX200~300

 AGI100~300

 LUK100


 これぐらいじゃないかと云われた。

 クラスやポイントの振り方によっては誤差はあるが、この範囲内に入るのが一般的だろうと。

 唯一多いのがMPだけと云う俺は、出発の前日にいきなり出鼻を挫かれてしまった。


 更に云うにはレベル10くらいのステータスと云えどいきなりレベル10くらいのモンスターと戦っても勝てないと云う。百聞は一見に如かずなので、レベル5くらいのモンスターと戦えば分かると云う。



 (しっか)りと準備をし、今日はゆっくりと休んだ。





 そして二人はガートンに移動した。



 どのあたりにモンスターが居るかは把握してると云う。

 レベル5付近のモンスターの所へ案内してもらい戦ってみる。




 ステータスも高くなったし装備も一新した。俺は強くなってる。


 しかしそれはただの慢心でしかなかった。


 始めの相手は過去に色々なゲームにも登場しつくされ、名前を見るだけで皆想像が付くモンスター[ゴブリン]だった。

 ゲーム慣れしていない俺すら知っている、有名な雑魚モンスターだ。




 そして俺はと云うと電脳と云う反則的なメリットを持ち、ゴブリンの些細な動作や筋肉の動きで次にどの様な動きや攻撃が来ると容易に分かってしまう。

 しかしその反応が出来たのは脳だけであった。


 攻撃の動作や来る場所が分かっていると云うのに、体は全く反応出来ないちょっと体をひねる程度で避けれると思っていたが体の反応速度が付いてこない。

 そう思った瞬間ゴブリンが右手に持っていた武器で、右手の肘から先の腕の内側を切られてしまった。

 全く反応出来なかった訳ではないので腕は残っている。しかし傷が深くジンジンと痛む。


 この時代のVRMMOと云う物は痛覚も反映されるが、実際の痛みに比べると格段に痛みは少なくされている。

 しかしながら傷口や切られた事によって右手の握力が格段に低くなると云った事が起こる。

 なので俺の右手は辛うじて棍を握っている程度である。最早振り回す事は適わない状態だ。


 そんな状態になったので素早く後ろに下がった。下がったと云うよりは一旦逃げて大きく間合いを取った。


 今まで散々逃げると云う行為はしてきたので、逃げる行動は驚くほど体が早く反応する。

 そこで昨日云われた事を、もっと良く考えておくべきだったと今更ながら後悔した。


 今の俺が肉体的動作でゴブリンに唯一優っているのは、逃げ足の反応速度と速さだけだ。

 これを戦術の念頭に置いて戦わなければ、俺はゴブリンに倒されるだろう。



 先ほど取った間合いのお陰で少し時間に余裕が出来た。

 その間に左手でHPポーション(小)を取り出し使用する。


 傷口の奥から沸き立つジンジンとした痛みが、少しずつ消えていく。

 それと共に傷口から流れる血が止まり、裂け目が小さくなる。最後にはどこを切られたのかすら分からない程元通りになる。

 これを今後も見る事になるのかと思うと不思議な気持ち半分、精神的に問題ないのかと云う気持ち半分と云った所である。



 ゴブリンはと云うと俺の逃げ足の速度に警戒したのか、先ほどより慎重になりジリジリと間合いを詰める動きに変わった。

 このお陰で回復する時間が出来た。


 右手に何度か力を入れ棍を動かせる事を確認する。

 今からは避ける事よりも防御を出来るだけ崩さぬ様に、隙を見付けて攻撃をする。

 他のパターンの戦術も考えつつ今はこの方法で戦ってみる。

 俺の肉体的反応速度はただの一般人だ。ステータスにより早く動かせたりはするが、脳と体が上手くリンクされてないと云った所だろう。何度か動きに慣れて行く事で解消はされるだろうが今は無理だ。だから今は出来る事を全力でやる。



 俺とゴブリンの間合いは一足飛びで届く間合いとなった。

 ()ず仕掛けるはゴブリン。


 右手だけで俺の左肩から足元にかけての斬撃、そう思っていると左手を動かし両手で武器を握るような動きを見せる。恐らく剣の軌道が変わる。


 そう感じ取ったので腕を下に振り棍を握っていた握力を弱め、右手小指の方から左の足元へ棍を滑らすように移動させる。そして地面に当たった所で力を入れ左から来る衝撃に備える。

 直後ゴブリンの両手から放たれた剣撃は、水平斬りとなり棍へと衝撃が伝わる。

 STRのお陰で体勢を崩すことなく衝撃を受け止める。そして地面を軸に棍を左へ強く押し出し、ゴブリンの体制を崩す事に成功した。

 態勢を崩されたゴブリンは体勢を立て直す為に、踏み込んできた右足を引いて一歩下がろうとした。

 ここが攻撃のポイントだと思った俺は、すかさずナックルによるスキル[乱打]を実行に移した。


 結果は、攻撃に移るまでが遅かったのだろう。ゴブリンが一歩下がりきるや否や左足を踏み込み再度水平斬りで強引に棍へ攻撃を当てに来たが俺は反応出来なかった。

 そして俺の体は体勢を崩し左後ろへ大きく体が流れた。その流れのままゴブリンは剣の石突で当身し一旦下がり体勢を立て直す。


 下等な魔物だとさっきまでは思っていた。しかし眼前にいる魔物は戦いの中で声を一言すら発さず、昔見た映画の中の侍の様だった。



 俺はゴブリンだ、雑魚だと思い完全に侮っていた。

 明らかに相手の方が数段上手であり戦い慣れていた。

 まるで新兵と熟練兵の様だ。

 今の俺には全く勝てる要素が見付からなかった。


 そして心の中で勝てないと悟った。


 俺は足元の石を拾いゴブリンに投げ、ゴブリンが剣で石を弾いたところを見計らい全力で逃げた。





 レベル5くらいのゴブリンに俺は完敗した。


 それをずっと見ていたピーちゃんが俺に声を掛けて来る。


「戦ってみてどうだった。」


「全く歯が立たなかった。初めはゴブリンだと侮っていた。もっと単純な動きで簡単に勝てるものだと(たか)(くく)っていた。」


「まず皆初めにゴブリンで(つまづ)くんだよ。ゴブリンに限らずどのモンスターもスキルを持っているんだ。そしてそのスキルは個体により様々だからゴブリンが五体いれば五通りの戦い方をしてくる。セオリーなんてないんだよ。」



 俺はその時初めて気が付いた。

 このShangri-la(シャングリラ)と云うゲームを、たかがゲームだと侮っていたんだと云う事に。



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