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理想郷  作者: Zero_One
一章
16/35

騒がしい深夜の古月亭

 引きずり込まれて、好き勝手やらせる訳にはいかない。

 こういうことがやりたくて俺はゲームをしてるんじゃない。それならリアルですればいい事だ。


 ここぞとばかりに思考回路をフル回転させる。そう電脳込みの頭脳をだ。


 0.00秒

 とりあえず俺の使える魔法を纏めてみよう。どう考えても物理的には勝てない。

 0.10秒

 町中なのでダメージを入れる魔法は効力を発揮しない。

 状態異常系は効力が減少するが使える。

 0.20秒

 風時間魔法(ヘイスト)  風空間魔法(ショートワープ)  時空間魔法(ストップ)  空間音魔法(マジックキャンセル)

 これがいつもの4倍補正だ。

 0.30秒

 これに加え最近覚えただけで使ったことのない魔法が、

 聖時間魔法(スリープ)*2.5補正  音毒魔法(ミュート)*2.5補正  

 0.40秒

 これらを駆使して何とかしなければならない。ピーちゃんは今の俺にとってラスボスだ。

 MPポーション(微)をいつでも使えるように準備しつつ、まずは間合いを取ろうと思う。

 0.50秒


 その次の考えを纏めつつ行動に移す。

(時空間魔法(ストップ))  


 効果時間が減っているので、急いで止まっているピーちゃんから逃げベッドを出て間合いを取り、先に風時間魔法(ヘイスト)を使っておく。


「ふふふh…ふーーん。逃げるんだ。逃げ切れると思ってるんだー。」


 完全に目が据わっている猛獣系女子が前にいる、と思った瞬間一瞬ピーちゃんが動いたと思えばもう目の前にいる。瞬間的な速さでは勝てないと悟った。


(風空間魔法(ショートワープ))


 手をつかまれる寸でのところで、何とか逃げ延び部屋の隅に移動した。


「ふふーん、いいねーいいねー。もっと逃げ回って楽しませてよ。」


 完全に遊ばれてるのだろう。

 次でMPが切れるから 時空間魔法(ストップ) を使い、MPポーション(微)で回復する。

 初心者系魔法には詠唱が全くないのが救いだ。

 すぐさまピーちゃんの近くへ移動し 聖時間魔法(スリープ) を使い、部屋にあった細長い布地を足に巻き付け絡ませておく。


 移動し始めた頃スリープが解けた。

 力が抜け膝を付いていたので、何の魔法を使われたか気付いた様だ。

 一気に立ち上がりこちらへ向かって来ようとした瞬間、足の布地に絡まり盛大にずっこけた。


「ウィーーーちゃん。ホーーント良い度胸してるよ君。対魔法なんてね簡単なんだよ。すぐに終わ((音毒魔法(ミュート)))……………。」


 云い終わる前にミュートを使ったが、大丈夫かなピーちゃんの顔に青筋が見えるんだけれど…。


 下手に魔法を使われると厄介だったので先手を打ったが。完全に怒らせてしまったかもしれない。

 さてどうしようか、と思っていると急に視界が暗転した。




 そして気が付くと部屋には朝日が差し込み朝になっていた。

 俺にはあの後からの記憶が全くない。

 そして喋る事が出来ない、口を布で塞がれている。


「おはよう。良く寝れたでしょ。寝れたよね。」


 ちょっぴり強張った聞きなれた声が、寝ている横から聞こえて来た。


「んんん…。」


 腕も後ろ手に縛られていた。


「あの後からゆっくり堪能させて貰ったよ。」


 結局あの後どうなったのかまるで分からなかったが、ピーちゃんが教えてくれた。

 実際の所は本気になったピーちゃんの暴力的なまでの能力の差であった。

 これがどうにもならない実力差と言う事かと、今になって思い知った。


 口布を外し腕も開放された、しかし肝心の服はどこだ。そしてなぜ全裸なのだ。


「な…何をしたんだ。」


「ナイショ。服はそこに畳んであるよ。私は朝食食べて来るからゆっくりしとくといいよ。んじゃまたあとでー。」


 そういってピーちゃんはログアウトしていった。

 その場に取り残された俺は放心状態だった。





「ただいまーー。あれっ、まだ服着てないの?」


 俺は布団に包まり声を出さずすすり泣いていた。

 大の男が…と思うかもしれないが、独りで居ると途中から自然と涙が出て来た。


「えっと、ウィーちゃん。ウィーーちゃーーん。」


 その声に全く反応せず布団に包まっていると、強引に布団を剥ぎ取られた。


「あれあれれ、泣いてるのー。なんでー。」


 といつもの感じで冗談交じりに話しかけて来る。


 それでも身動き一つせずに、じっとしていると捲し立てる様に喋りだした。


「特にへ・変な事してないよ。スリスリサワサしてただけだよー。何もしてないよー。」


 何もしてなかったそもそも裸じゃない。


「お願いだから機嫌直してよー。あー、そうだ好きな物何でも買ってあげるから。そうだウィーちゃんが私を触っても良いから、ほらっほらっ。おおーい………ああ…うう…。」


 しかし何も反応する気が起きなかった俺は(音毒魔法(ミュート))を使い自分に(聖時間魔法(スリープ))を掛けた。


0.00秒から0.50秒その間を考えた私の時間は長い。回転のいい頭脳が欲しい。

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