騒がしい深夜の古月亭
引きずり込まれて、好き勝手やらせる訳にはいかない。
こういうことがやりたくて俺はゲームをしてるんじゃない。それならリアルですればいい事だ。
ここぞとばかりに思考回路をフル回転させる。そう電脳込みの頭脳をだ。
0.00秒
とりあえず俺の使える魔法を纏めてみよう。どう考えても物理的には勝てない。
0.10秒
町中なのでダメージを入れる魔法は効力を発揮しない。
状態異常系は効力が減少するが使える。
0.20秒
風時間魔法 風空間魔法 時空間魔法 空間音魔法
これがいつもの4倍補正だ。
0.30秒
これに加え最近覚えただけで使ったことのない魔法が、
聖時間魔法*2.5補正 音毒魔法*2.5補正
0.40秒
これらを駆使して何とかしなければならない。ピーちゃんは今の俺にとってラスボスだ。
MPポーション(微)をいつでも使えるように準備しつつ、まずは間合いを取ろうと思う。
0.50秒
その次の考えを纏めつつ行動に移す。
(時空間魔法)
効果時間が減っているので、急いで止まっているピーちゃんから逃げベッドを出て間合いを取り、先に風時間魔法を使っておく。
「ふふふh…ふーーん。逃げるんだ。逃げ切れると思ってるんだー。」
完全に目が据わっている猛獣系女子が前にいる、と思った瞬間一瞬ピーちゃんが動いたと思えばもう目の前にいる。瞬間的な速さでは勝てないと悟った。
(風空間魔法)
手をつかまれる寸でのところで、何とか逃げ延び部屋の隅に移動した。
「ふふーん、いいねーいいねー。もっと逃げ回って楽しませてよ。」
完全に遊ばれてるのだろう。
次でMPが切れるから 時空間魔法 を使い、MPポーション(微)で回復する。
初心者系魔法には詠唱が全くないのが救いだ。
すぐさまピーちゃんの近くへ移動し 聖時間魔法 を使い、部屋にあった細長い布地を足に巻き付け絡ませておく。
移動し始めた頃スリープが解けた。
力が抜け膝を付いていたので、何の魔法を使われたか気付いた様だ。
一気に立ち上がりこちらへ向かって来ようとした瞬間、足の布地に絡まり盛大にずっこけた。
「ウィーーーちゃん。ホーーント良い度胸してるよ君。対魔法なんてね簡単なんだよ。すぐに終わ((音毒魔法))……………。」
云い終わる前にミュートを使ったが、大丈夫かなピーちゃんの顔に青筋が見えるんだけれど…。
下手に魔法を使われると厄介だったので先手を打ったが。完全に怒らせてしまったかもしれない。
さてどうしようか、と思っていると急に視界が暗転した。
そして気が付くと部屋には朝日が差し込み朝になっていた。
俺にはあの後からの記憶が全くない。
そして喋る事が出来ない、口を布で塞がれている。
「おはよう。良く寝れたでしょ。寝れたよね。」
ちょっぴり強張った聞きなれた声が、寝ている横から聞こえて来た。
「んんん…。」
腕も後ろ手に縛られていた。
「あの後からゆっくり堪能させて貰ったよ。」
結局あの後どうなったのかまるで分からなかったが、ピーちゃんが教えてくれた。
実際の所は本気になったピーちゃんの暴力的なまでの能力の差であった。
これがどうにもならない実力差と言う事かと、今になって思い知った。
口布を外し腕も開放された、しかし肝心の服はどこだ。そしてなぜ全裸なのだ。
「な…何をしたんだ。」
「ナイショ。服はそこに畳んであるよ。私は朝食食べて来るからゆっくりしとくといいよ。んじゃまたあとでー。」
そういってピーちゃんはログアウトしていった。
その場に取り残された俺は放心状態だった。
「ただいまーー。あれっ、まだ服着てないの?」
俺は布団に包まり声を出さずすすり泣いていた。
大の男が…と思うかもしれないが、独りで居ると途中から自然と涙が出て来た。
「えっと、ウィーちゃん。ウィーーちゃーーん。」
その声に全く反応せず布団に包まっていると、強引に布団を剥ぎ取られた。
「あれあれれ、泣いてるのー。なんでー。」
といつもの感じで冗談交じりに話しかけて来る。
それでも身動き一つせずに、じっとしていると捲し立てる様に喋りだした。
「特にへ・変な事してないよ。スリスリサワサしてただけだよー。何もしてないよー。」
何もしてなかったそもそも裸じゃない。
「お願いだから機嫌直してよー。あー、そうだ好きな物何でも買ってあげるから。そうだウィーちゃんが私を触っても良いから、ほらっほらっ。おおーい………ああ…うう…。」
しかし何も反応する気が起きなかった俺は(音毒魔法)を使い自分に(聖時間魔法)を掛けた。
0.00秒から0.50秒その間を考えた私の時間は長い。回転のいい頭脳が欲しい。




