表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
結婚して引退したはずの推しVtuberが婚約破棄されて全て失って可哀相になったので、俺がお世話する事にしました。  作者: beru


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/35

第三十二話 彼女のお世話をしたい

(え? これ……どうなっているんだ、マジで?)

 神崎さんにキスをされているようだが、突然の事で何が何だがわからないまま、混乱していた。

 ど、どうしようこれ?


「…………」

「あ、あの……」

 それからどれくらい経過したか、ようやく神崎さんは顔を離し、俯きながら俺の胸に顔を預ける。

「ゴメン、急に。でもなんかさ。今になって、色々と不安になったって言うか、これからどうしたら良いんだろうって思っちゃって」

「何かあったんですか?」

「何もないけどさ。色々あったじゃん。ことりが転生して、コスやVとして成功していたり、角田さんがぶいロイドのオーディション受けたいって話とか聞いてさ。みんな、頑張っているなって思っていたら、その反面、私は何をやっているんだろって思っちゃって。大学への復学も上手く出来るか、急に不安になっちゃったし、そしたらもうどうしようかなって」

「だ、大丈夫ですって。神崎さん、自分のやりたいようにやればいいじゃないですか。俺も出来る事なら、何でもしますから」

「そんなのわかっているけどさ。あはは、何だろう。自分、こんなに弱い人間だったのかなって。Vも辞めて、婚約者にも捨てられて、何も残っていないし。今更、実家にも帰れないしさ」

 帰れないって、親と何かあったのか?

 そうなると、またややこしい事態なんだが、とにかく神崎さんを落ち着けないと。


「実家で何かあったんですか?」

「大したことないんだけどね。Vを始めたって言った時、配信を見た親が『毎日、遊んでいるだけじゃないか』って言ったのを思い出して。ああ、よく知らない人からそう思われてるんだなって。そんな仕事にまた就いて、上手く行くのかなとか頭がグルグル過って」

 その言い方はちょっと酷いけど、知らない人から見たら、そう解釈されちゃうんかな。

 ゲームで遊んでいるだけじゃなくて、ライブとかレッスンとか色々と頑張っているはずなのに。


「その……神崎さん、やっぱりVに戻りたいんですか?」

「どうだろう? ぶいロイドに復帰したい気持ちはあるけど、今戻るのも難しいし、どうにもならないっていうか。どうしよう。何をしようかな? どうすれば良いと思う?」

「どうしようと言われましても……」

 俺にはわからないよ。

 それは神崎さん自身が決める事だと思うし、彼女の事にあまり踏み込んでしまうのもどうかと思っちゃう。

「平沢君が決めてよ。君は私よりずっとしっかりしているんだしさ。きっと、私みたいに選択を間違ったりしないと思う」」

「そんな事ありませんって。聖菜ちゃんへの復帰をしてほしいですけど、神崎さんの自由に……」

「聖菜への復帰が無理なら? どうすればいい?」

「それは……」

 どうすりゃ良いって言われても……大学に行って欲しいって言えば、大学への復学を決めてくれるのか?


「大学に戻って欲しい?」

「欲しいです」

「なら、戻るよ。ありがとう」

 と言って、神崎さんはようやく笑顔を見せてくれたので、ホッとする。

 ちょっとは落ち着いてきたのか?

「ゴメンね、急に変な所を見せちゃって」

「いえ、ビックリしましたけど、落ち着いて来たなら、何よりです」

「あはは、平沢君はやっぱり私よりしっかりしているじゃない。何か困った事があったら、これからは君を頼ろうかな」

「俺に出来る事なら何でもやりますよ」

 なんせ神崎さんは俺の最推しである神楽咲聖菜の人だからな。

 今までの恩返しみたいなのも兼ねて、彼女の力になりたいのは事実だ。


「何でもね。本当?」

「本当ですって。信じてください」

「じゃあ、結婚してくれる?」

「は?」

 何かとんでもない事を言われた気がして、一瞬、頭が真っ白になる。

「私の為に何でもするってなら、結婚してくれって言われたら、結婚してくれる?」

「いやいや、俺にできる事ならって話ですよ。何で、そんな話になっちゃうんですか?」

「やっぱり、何でもするって話、嘘じゃない。別に死ねって言っている訳じゃないのにさ。平沢君、もう十九歳だよね? だったら、成人済みで結婚できる年齢でもあるんだけど?」

 神崎さん、本当に大丈夫なのか?

 急に変なことを言い始めて、マジで心配になってきたんだけど……。


「あのー、それ本気で言っています?」

「本気じゃないって証拠をあげてよ。私、今は酒も飲んでないんだけど」

 酒飲んでなくて、そう言っているってなると、ますます困ってしまうんだが……。

 こういう時ははぐらかして、神崎さんを落ち着けた方が良いのか?

 どうすれば良いのかわからないが、軽々しく結婚しましょうなんて、冗談でも言えやしないって。


「本当にどうしたんですか? 何かあったなら、言ってください」

「色々あったって言ったでしょう。それが急に頭で整理しきれくなって……あはは、これもファンを裏切った報いなのかな? 罰が当たったんだろうね。聖菜のファンを裏切った報いがさ」

「し、しっかりしてください。わかりました。結婚はその……無理です、ごめんなさい。俺は聖菜ちゃんにあくまで復帰してほしいので、俺の方からそういう事をするのはちょっと」

「あー、はは。平沢君もそういう事言うんだ。私、聖菜やってないと価値がないんだね」

「そういう意味じゃないんですって。結婚バレ、彼氏バレがまずいですし、隠しながらやっても、バレた時のリスクを考えてくださいって事で」

 いかん、神崎さんが相当、精神的にまずい事になっている。

 こう言う時ってカウンセリングでも受けさせた方が良いのか? かと言っても、俺に紹介できる当てもないし……。


「どうしよう? 不安が止まらない。誰か助けて、お父さんお母さんでも平沢君でもことりでも良いからさ」

 やべえ、どんどん症状が悪化しているんですけど、マジでどうする?

 ここまで精神的に追い詰められているとは想定外だった……今までもどっか、陰のある感じはあったけど、それでも割と無理して気丈にふるまっているつもりだったのか。

「だ、大丈夫です! 俺が付いていますよ! 聖菜ちゃん、元気出して。いや、神崎さんも元気出して下さい。聖菜ちゃんもそう思っているはず」

「そう。じゃあ、しばらくここに居てくれる?」

「しばらく……ええ、居ますとも。もうここにいて、神崎さんが元気になるまで、何でもしちゃいます」

 神崎さんの肩を掴みながら、安心させるように力強い口調で言う。

 しばらくってのはどのくらいかわからないが、一晩か二晩くらいなら、どうってことないって。


「本当? 最近、私、何もする気が起きなくて……今日は何とかコンビニまで行けたけど、それ以外の家事は出来てないの。ゴミも結構溜まっているし」

「そんなの俺がやりますから。家事はそれなりに得意ですから」

「じゃあ、お願いして良い?」

「はい。お任せください」

 神崎さんの家の家事の手伝いなんて、むしろ出来るだけでも光栄だよ。

 なんせそれは聖菜ちゃんのお世話とイコールだからな。

 聖菜ちゃんのお世話係……そう思うと、推しとしてはそんな大役を仰せつかって、良いのかと恐縮してしまう。


「それじゃ……平沢君、お願いね」

「はい。神崎さんのお世話ならお任せください」

 そう胸をポンと叩いて、引き受ける。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ