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第92話 ハロウィンパレード

パレードの先頭が動き出した。


巨大なかぼちゃの形をした反重力プラットフォームが10機、魔法陣を描きながら滑空してくる。


表面にはホログラムと実体魔法が融合した幽霊が映し出され、観客に向かって手を振っていた。


どこかの生徒が悲鳴を上げた。


かぼちゃの内部AIが表情を読み取り、最も怖がっている生徒に狙いを定めてジャンプスケアを仕掛けたらしかった。


幽霊が突然「実体化」してキャンディをばらまく。


悲鳴と歓声が混ざった。


葵は青い手でお菓子を配りながら、その様子を眺めた。


手元に光を灯した。


コバルトブルーの肌に光が反射して、周りの生徒が笑った。何人かがまた写真を撮った。


「青い魔女だ」


「かわいい」


葵は特に何も言わなかった。


――――――――――――――――――――


蒼玲は吸血鬼のマントを翻しながら、魔力ナノマシンで漆黒の翼を展開する。光を操って影を作り、観客の足元に蝙蝠の群れを走らせた。


その隣でアリアが狼女の耳をつけたまま無表情で立っていた。


ナノマシンが起動して毛皮がリアルタイムで色を変え、ホログラムが重なって巨大化する。


観客が後退した。


アリアは何も言わなかった。


イレムのかぼちゃが回転した。

「みんなー! 楽しんでるー?」


かぼちゃの中からAIアシストで魔法が放たれ、観客に向かってキャンディが降り注いだ。


カヴィヤが天使の輪を頭に乗せて光の翼を広げると、回復魔法が淡い光になって周囲に広がり、怖がっていた低学年の生徒が少し落ち着いた顔をした。


エリサベットが人魚姫のドレスの裾を揺らしながら氷魔法を展開すると、足元から氷の結晶が広がり、海底にいるような光景が生まれた。


白羽が死神の鎌を構えた。


外骨格に青いプラズマが噴き出し、骨の隙間から光が漏れて、観客が息を呑んだ。


葵はその光景を眺めながら、また一人お菓子を配った。


――――――――――――――――――――


蒼玲が声を上げた。


「いくわよ」


生徒会メンバーが一斉に融合魔法の詠唱を始めた。


蒼玲の翼が光の粒子になって空に舞い上がった。

白羽のプラズマが螺旋を描いて上昇し、カヴィヤの光の翼が広がりながら溶けていった。

エリサベットの氷の結晶が弾けて光になり、イレムのかぼちゃから魔力が噴き出す。

アリアだけ詠唱せず、

ただ腕を上げると、毛皮が砕けて光になった。


粒子が空で集まり、形を作り始めた。


翼が生えて、爪が現れて、長い首が伸びていく。


巨大なドラゴン型ホログラムが夜空に浮かび上がった。


観客が静かになった。それから一斉に歓声が上がった。


葵は空を見上げた。


青い手が夜空に向かって伸びていて、ライラが肩の上で同じように空を見上げていた。綺麗だと思った。


――――――――――――――――――――


生徒たちが杖型デバイスを取り出した。


先端から光の糸が伸びて、空に浮かぶ数百機の小型ドローンとリンクしていく。


魔法が弱い生徒にはAIアシストモードが起動して、光の糸が安定した。


「いくよー!」とイレムが叫んだ。


全員で呪文を唱えると、ドローンが一斉に動き出して空に巨大な魔法陣を描き始めた。


線が交差して、円が生まれて、紋様が完成していく。


魔法陣が光った瞬間、花火が打ち上がった。


色とりどりの光が夜空に広がり、観客から歓声が上がった。


葵も杖型デバイスを手に持って光の糸を伸ばした。


青い指先から糸が伸びてドローンと繋がる感覚があった。


みんなの魔力が混ざり合っている気がした。


――――――――――――――――――――


フィナーレの合図が鳴った。


全校生徒が校庭に集合して、巨大魔力回路が起動する。


乗り物が光り始めて、ゆっくりと形を変えていった。


巨大なゴーレムが夜空に立ち上がり、その胸元のホログラムに今年のハロウィンの思い出が映し出された。


量子かぼちゃ艦隊、融合魔法のドラゴン、青い魔女。


花火と魔力の雨が降り注いだ。


ライラが葵の肩の上で光の雨を両手で受けようとして、すり抜けた。


――――――――――――――――――――


パレードが終わると、校庭に静けさが戻ってきた。


生徒たちが三々五々に散っていく中、葵がお菓子の残りを確認していると、後ろから声がかかった。


「……葵。少しいいか」


振り返ると、白羽が死神の鎌を脇に抱えて立っていた。


――――――――――――――――――――


校舎の裏、人気のない場所だった。


白羽が立ち止まって、葵の方を向いた。


しかしすぐには口を開かなかった。


一度別の方向を向いて、それからようやく、

「……言いにくいのだが」

少し間を置いて、

「私に、料理を教えてくれ」

珍しく声が小さかった。


「いいですよ。……理由を聞いてもいいですか」


「……私には似合わないと思っていた。

料理など、私には無縁だと。

だが——父と母の馴れ初めは、料理だった。

子供の頃の私は、そんな母にずっと憧れていたのだ。

......お前のクッキーを見て、それを思い出した」


葵は少し間を置いた。


「……分かりました。僕でよければ」


「……ありがとう。何で礼をすればいい」


「いつもお世話になっているので、気にしないでください」


「いや……それでは私の気が収まらない」


白羽がしばらく考えて、

「……そうだ。お前さえよければ、神刃家に伝わる戦技を教えてやろう」


葵が少し目を丸くした。


「……それは、いいんですか」


「私が決めることだ」


「……それは嬉しいです。ありがとうございます」


白羽が小さく頷いた。ライラが葵の肩の上で腕を組んで、

「任せて」と言った。


白羽が少し目を丸くして、葵を見た。葵が苦笑した。


「……よろしく頼む」と白羽が言った。

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