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第80話 家庭教師契約

朝、廊下を歩いていると、鷹が飛んできた。


鋭い目をしていて、爪には布が武骨に巻かれていた。葵の肩に止まった。


「職員室に来い」


ハルトマンの声だった。鷹が飛び去った。


職員室の扉を開けると、オリビアがいた。ハルトマンの机の前に立っていて、葵を見て少し目を丸くした。


「葵くんも呼ばれたんですか」


「はい」


ハルトマンが「座れ」と言った。二人は椅子に座った。


ハルトマンが腕を組んだ。

「単刀直入に言うぞ、オリビア。

お前が熱心なのはわかるが、毎日無償で家庭教師をするのはやりすぎだ。

お前はそう思っていなくても、周りからは不当な贔屓に見えるだろう。」


「贔屓なんてそんなことしてないです」とオリビアが言った。

「私もまだ教師として未熟なので、教える練習をしているだけで——」


「お前の教師としての能力は申し分ない」とハルトマンが言った。

「それはお前自身が一番わかっているはずだ」


オリビアが口を閉じた。


「小春、お前はどう思う」


葵は少し考えた。確かにその通りだと思った。無償でというのは、申し訳なかった。


「……先生に賃金を払うのはどうでしょうか」と葵は言った。


オリビアが「でしたら1週間毎日で月300クレド——いえ、500クレドで」と言った。少しでも安くしてくれようとしているのが伝わった。


ハルトマンが「週2回、月2000クレドにしろ」と言った。


声が低かった。それ以上言える空気ではなかった。オリビアが小さく頷いた。


ハルトマンがアドバイスを続けた。

「それともう一つ。魔法工学と契約説法は他クラスの授業を受けた方がいい。Sクラスの魔法の授業は家庭教師前提の科目の中でも特に水準が高い。週2回では他の科目と並行するには荷が重い」


「他クラスの授業、ですか」と葵は言った。


「担当はリース先生とアーデル先生だ。二人とも優秀な先生だ。真面目にやればSクラス並みになれる」


——確かに、モローの授業になる前は分かりやすかった。リース先生もアーデル先生も。


葵は頷いた。


ハルトマンが「以上だ」と言って書類に視線を戻した。


葵とオリビアは立ち上がった。「失礼しました」と葵は言った。オリビアも頭を下げた。職員室の扉を閉めた。


廊下に出ると、オリビアが葵の方を向いた。


「葵くん、アービターに指名依頼を出しましょう。今すぐ」


「今すぐですか」


「今すぐです」


どことなく急かすような目だった。葵は端末を出した。


オリビアが横から操作方法を教えた。指名依頼の項目を埋めた。


内容は週2回・月2000クレドの家庭教師契約だった。


ペナルティなし、結び直し容易の一般契約だった。


税金の計算などはアービターが処理してくれるらしかった。


送信した。


オリビアが「ありがとうございます」と言った。少し嬉しそうだった。


ーーーーーーーーーーーーーー


授業が始まる前に、葵は端末を開いた。


エリサベットに個別でメッセージを送った。


「今日のスタディホール、ダンジョンに行こうと思っています。一緒にどうですか」


少し間があった。返信が来た。


「……行くわ」


次に茜に個別でメッセージを送った。


「今日のスタディホール、ダンジョン行かない?」


すぐに返信が来た。


「行く」


葵は端末をしまった。


——70層のボスを倒して素材を手に入れる。また、それまでのボスの素材を換金すれば、オリビア先生への賃金にもなる。


ライラが胸元でかすかに揺れた。少し間があった。


「……頑張ろうね」とライラが言った。

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