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第78話 ハロウィンの準備

 マルコが大きく伸びをした。「もう二度と試験なんてしたくない」

 

 颯が「期末もあるぞ」と言った。マルコが「やだ」と言った。

 

 そんな風にしばらく四人で立って話していた。特に何をするでもなかった。試験が終わったという事実だけがそこにあった。

 

 端末が振動した。

 

 蒼玲からだった。

 

「生徒会室に来なさい」

 

 葵は颯たちに「生徒会室に呼ばれたから、行くね」と言った。

 

「生徒会?」と颯が聞いた。

 

「うん」

 

「お疲れ」と颯が言った。リオが小さく手を振った。

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 生徒会室に入ると、全員が揃っていた。

 

 蒼玲が上座に座り、イレムが大きな袋を抱えて立っていた。

 

「来たわね」と蒼玲が言った。「座りなさい」

 

 葵は席についた。

 

「試験が終わったばかりだけど、ハロウィンをするわよ」と蒼玲が言った。「学園全体のイベントとして、生徒会が主催するわ」

 

 イレムが「やったー」と言った。

 

 蒼玲が学園全体への告知・装飾・お菓子配布の段取りを手短に説明した。カヴィヤが端末にメモを取っていた。白羽が腕を組んで聞いていた。

 

 説明が終わると、イレムが「じゃあ次はこれ」と言って大きな袋を机の上に置いた。

 

「用意してきたよー」

 

 袋から衣装が次々と出てきた。

 

 白羽の前に黒いローブと鎌が置かれた。白羽が無言で手に取って見た。

 

 カヴィヤの前に白い羽根付きの衣装が置かれた。「……かわいい」とカヴィヤが小さく言った。頬が少し赤くなっていた。

 

 アリアの前に狼女の衣装が置かれた。アリアは無表情のまま受け取った。何も言わなかった。

 

 イレムが自分のかぼちゃ衣装を広げた。「どう、似合うと思う?」誰も答えなかった。

 

 蒼玲の前に黒いドレスと深紅のマントが置かれた。細い銀のチョーカーと、先端が尖った牙の飾りがついていた。蒼玲が一瞥して「悪くないわ」と言った。

 

 エリサベットの前に人魚姫の衣装が置かれた。青と緑のグラデーションのドレスで、裾が尾びれの形になっていた。エリサベットが衣装を見た。少し間を置いた。「……まあまあね」と言った。耳が赤くなっていた。

 

 最後に葵の前に衣装が置かれた。

 

 黒い帽子と、短めのスカートと、小さなほうきだった。

 

「……これを着るんですか」

 

「似合うよ絶対」とイレムが言った。

 

 葵はもう一度衣装を見た。帽子を手に取った。

 

「……お菓子はどうするんですか」と話題を変えた。

 

 蒼玲が「天龍集団から提供してもらうわ。全生徒に配る」と言った。

 

 イレムが「やっぱり宣伝だよね」と言った。

 

 蒼玲が少し間を置いた。「……否定はしないわ」

 

「危ないのはだめですよ」とカヴィヤが言った。

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 生徒会メンバーで設営を始めた。

 

 白羽が率先して机や台を動かした。アリアが無言でその隣に立って作業した。カヴィヤが葵と一緒に廊下の装飾を担当した。イレムが端末を片手に全体を見回していた。蒼玲が腕を組んで全体を確認していた。

 

「ゴーストはここに浮かべるわよ」と蒼玲が言った。

 

 カヴィヤが魔法でゴーストを生成した。白い靄が人の形を取って廊下をふわふわと漂い始めた。

 

 アリアが隣で別のゴーストを生成した。

 

 葵は思わず見た。

 

 精巧で表情が豊かだった。ゆっくりと口を開閉しており、カヴィヤのゴーストより明らかに細かかった。

 

 アリアは何も言わなかった。次の骸骨の生成に移っていた。

 

 かぼちゃのランタンはイレムと葵が担当した。魔法の炎を灯すと、橙から紫、紫から青へと色が変わりながら光った。

 

「きれい」とイレムが言った。「毎年これ好きなんだよね」

 

 校舎全体に霧の魔法がかかり、廊下の奥が白くぼやけた。装飾が霧の中に浮かんで見えた。

 

 校舎の外から音がした。

 

 天龍集団のロゴが入っている大型の搬送車が止まっていた。同時に上空からドローンの群れが降りてきた。搬送車とドローンの両方からお菓子の箱が次々と運ばれている。

 

 どんどん積み上がっていき、止まる気配がなかった。

 

「……これ、全部ですか」と葵は言った。

 

「全生徒分よ」と蒼玲が言った。涼しい顔だった。

 

 イレムが「やっぱり宣伝だもんね」と言った。蒼玲は答えなかった。

 

 ーーーーーーーーーーーーーー

 

 設営が終わった頃、校舎はすっかり暗くなっていた。

 

 廊下にゴーストが漂い、ランタンが色を変えながら光っていた。霧が廊下の奥に静かにたまっていた。

 

 葵はしばらくその廊下を見ていた。

 

 ライラが胸元でかすかに揺れた。

 

「……きれいだね」とライラが言った。

 

「……うん」と葵は言った。

 

 明日からハロウィン週間だった。

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