表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
58/112

第57話 プログラムへの参加条件

放課後、葵は生徒会室に向かった。


イレムが一人でソファに座って端末を眺めていた。


「葵くんー、どうしたの?」


「相談があって」


「なになに?」


葵は向かいに座った。


「ヴァルハラ・アームズのボランティアプログラムに参加したいと思っていて、ネットで情報を調べているんですけど」


イレムが端末から顔を上げた。


「あー、ネットの情報だけじゃ絶対参加できないよ」


「……そうなんですか」


「そうそう。表に出てる情報はほんの一部で、実際の選考はもっと複雑なの。葵くん、なんで参加したいの?」


葵は少し間を置いてから、正直に言った。


「黒夢病っていう病気があって、その患者の方たちの夢の中に、同じ怪物が出てきました。

......その怪物は人造神魔だと思います。

以前、イレム先輩がヴァルハラ・アームズが人造神魔に関係しているかもしれないとおっしゃっていたので......

もし本当なら証拠を掴みたいんです。」


イレムはしばらく葵を見ていた。


「……葵くんってば、かわいい顔してほんとに無茶するよね」


「すみません」


「謝らなくていいよー」


イレムは少し身を乗り出した。


「いい? 法に触れることはダメだよ。

ボランティア中に立ち入り禁止の研究所に押し入るとか、そういうのは絶対ダメ。

私、そういうことには協力できないから」


「わかってます」


「あと、葵くんが無事なことが一番大事だから」


葵はその言葉を聞いて、どう返せばいいかわからなかった。


「ありがとうございます。それで、参加するにはどうすればいいですか」


イレムは端末を開いた。慣れた手つきでいくつか画面を切り替えてから、葵の方に向けた。


「はい、これ。表向きの条件ね」


「まずSクラスの中間試験で上位50%以内。推薦状が一通。あと志望動機書」


「上位50%……」


「アルカナのSクラスで上位50%って、世界基準で見たらとんでもないレベルだからね。普通の学校の基準とは全然違うよ」


葵は頷いた。


「次に裏の条件」


イレムが声を少し低くした。


「ダンジョンで70層のボスを倒して、その素材を持参すること。あと——格のある神魔との契約があった方がいい。ピクシーだと……正直、印象が悪いかもしれない」


胸の奥で、ライラがふわりと揺れた。


葵は小さく言った。


「私のところは気にしないけど、ヴァルハラはそういう企業だから」


ライラは何も言わなかった。でも揺れは収まっていた。


「一時的な契約でいいですか」


「うん、ちゃんと契約しているところを見せられれば」


「わかりました」


「あ、私に言ってくれれば代わりに申し込んであげるよ。

コネがないとそもそも書類が届かないから」


「……ありがとうございます。イレム先輩がいてくれて助かりました」


「ふふー」


イレムがにっこりした。


「そういえば蒼玲ちゃんが言ってたよー。

葵くんって蒼玲ちゃんのことなんでもやってくれる奥さんだと思ってるって、嬉しそうに」


葵は少し驚いた。


「そんなことは……」


「私のことも、そう思ってるんでしょー? やだー、気が早すぎー!」


イレムが嬉しそうに笑った。葵はどう返せばいいかわからなかった。


志望動機書を書いてイレムに見せると、イレムが赤ペンを取り出してさらっと目を通した。


「うーん、悪くないけど……もうちょっとだけ直した方がいいかな」


いくつか書き込んで返してきた。


葵は受け取って読んだ。内容は同じだったが、言葉の選び方が少し違った。企業側が読みたいと思う言葉に、自然に変わっていた。


「……さすがですね」


「商業研究部なめないでよー」


イレムは再びにっこりした。


ーーーーーーーーーーーーーー


職員室に行き、葵はアーデルに声をかけた。


「先生、お願いがあるんですが」


アーデルが書類から顔を上げた。


「ヴァルハラ・アームズのボランティアプログラムに参加したいんです。

推薦状を書いていただけますか」


アーデルはしばらく葵を見ていた。


「……ヴァルハラ・アームズか」


「はい」


「あまり勧められない企業だ」


「……わかっています」


アーデルはまた少し間を置いた。


「何か考えがあるんだな」


「はい」


それ以上聞かなかった。アーデルは書類に視線を戻した。


「書く」


「ありがとうございます」


葵は少し間を置いてから、もう一つ口を開いた。


「先生、一つ聞いていいですか。

ダンジョンに潜るとき、上級傭兵は襲ってくるでしょうか。以前ダンジョンに行ってしまいましたが」


アーデルは少し考えた。


「ダンジョンへは転移で行くんだろう」


「はい」


「だとすれば——考えられるのはダンジョンでの待ち伏せだが、いつ行くかわからない相手に上級傭兵を雇い続けるには天文学的な報酬が必要になる。現実的ではない」


「……そうですね」


「ダンジョン内での危険は神魔だけだと思っていい」


葵は少し肩の力が抜けた。


「ありがとうございます」


アーデルはまた書類に向かった。


——やることが、増えた。


中間試験で上位50%。70層ボスの討伐。格のある神魔との契約。


ひとつひとつ、片付けていくしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ