表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/51

第2話 仮クラスの空気

仮クラスの最初の授業は、基礎魔法の座学だった。


担当は三十代ほどの女性教師。切り揃えられた黒髪が、静かな佇まいをさらに整って見せた。

切れ長の目が教室をゆっくりと見渡す。何かを見透かすような、静かな目だった。名前はアーデル・クライン。


「まず確認する。ここにいる全員が、何らかの魔法適性を持っていると判定された。だが適性があることと、使えることは別だ。これからの一ヶ月で、君たちには基礎を叩き込む」


淡々とした口調だったが、話の一つひとつに重みがあった。


「契約神魔を持っている者、アピールしたければ今言え。黙っていたいなら黙っていていい」


契約神魔、その名の通り神・悪魔・妖精・魔獣——異界の存在と契約を結んだ相手のことだ。


術者に力を貸し、魔法を強化する。人間が一生に契約できるのは、一体だけだ。


付け加えるなら——この学校には常に世界中の企業達のスカウトが目を光らせている。


現代において契約神魔の使い手は最大の戦力だ。核も爆撃機も、彼らの前では意味をなさない。だから企業は金を積んで、力ある者を囲い込もうとする。


アーデルはそれだけ言って、教室を見渡した。


手を挙げる者、手を挙げない者、迷ってから挙げる者——反応は様々だった。教室の半数ほどが手を挙げた。


葵も挙げた。企業へのアピールというより、単純に隠す理由がなかった。


一人ひとりが告げていく。炎の精霊、水の龍、風の妖精、土の魔獣——様々な存在の種族名が教室に満ちた。


葵の番が来た。


「妖精、ピクシーです」


胸元でライラが、ぴりっと揺れた。


——馬鹿にしてる。私のこと弱いって。


葵はそっと胸元に手を当てた。


——ごめんね。


光は、わかったというように、静かになった。


申告しない者——神魔と契約していない者も何人かいた。颯も茜も手を挙げなかった。


――――――――――――――――――



午後のオリエンテーションが終わり、葵が廊下を歩いていると、後ろから声がかかった。


「葵!」


振り返ると、颯が走ってきた。


「どうだった? 初日」


「静かだった」


「それだけ? 俺、昼休みに隣のやつと話してたんだけど、そいつ契約神魔が氷の精霊でさ。握手したら手がひんやりして、思わずびびった」


「そっちが挨拶したんでしょ」


「まあな。でもあれは予想外だって。話しかけてみて初めてわかることってあるよな」


二人で廊下を歩いていると、前方から茜が歩いてきた。


「遅い」


「少し話してた」


「別に責めてない」


茜はそう言って、葵の隣に並んだ。


三人で並んで歩く。丘の上の校舎から、島が一望できる廊下の窓を通り過ぎながら。


「茜」と葵は言った。「今日、どうだった?」


「普通」


「そっか」


茜は前を向いたまま、それだけ言った。でも葵には、茜がすでに何かを観察し終えているような気がした。


茜はいつもそうだ。何も言わないけれど、すでに見ている。


三人でモノレールに乗り、丘を下りた。


車窓から、アルカディアの街が夕暮れの橙に染まっていくのが見えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ