表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クサのツカサ  作者: かわかみれい
2 最後のツカサ~高校生編Ⅰ
77/86

4 それはまるで、荒野に立つ孤高の若木のようなⅡ 佐伯 香穂視点②

 ノートと筆記用具を片付け、香穂は席を立つ。

 閲覧室の出入り口で、結木くんから


「佐伯さん」


 と急に話しかけられ、ちょっと驚く。

 今まで6:4くらいの割合で、香穂の方から話しかけていたので。


「急にごめん。さっき、すごい難しい顔でノートまとめてはったけど、ナンか問題でもあったん?」


 う、と息が詰まる。

 まさか自分の方が見られているとは思わなかった。

 上目遣いでチラッと彼を見上げたが、彼は本気で心配して、気にしている顔色だ。

 内心冷や汗をかく気分で、香穂は言い訳をひねり出す。


「あ、えーと。今、ちょっと追いかけてる作家さんがいてて。その人の全集、市立図書館の津田分室にあるって司書の先生に聞いたんやけどな、行ってみたいけどこの辺の土地勘ないし、どうしようかなって……」


 嘘ではない。

 まあ、100%本当とも言い難いが。


「市立図書館の津田分室? ああ……!」


 彼はニコッと笑う。


「この辺りの私大の文学部と提携してるとかいう、ちょっとマニアック系の蔵書で有名なトコやな。あそこやったら俺の住んでる(トコ)に近いし、案内できるデ」


「え? 案内?」


 状況が理解できずオウム返しする香穂へ、彼はうなずく。


「うん。明日は俺、バイトの日やから早めに帰らなアカンけど、図書館に案内する時間くらいあるし」


 佐伯さん、いつも真剣に本読んでて、俺ちょっと尊敬してるねん。

 そんなことをなんの衒いもなくスラッと言うと、


「特に予定とかないんやったら明日の放課後、津田分室へ案内させてもらうけど。どう?」


 と彼は問う。


「お、お願いシマス」


 こんなの、答えは『はい』か『Yes』しかあり得ないでしょ!



 翌日、木曜日。

 なんとなくよく寝られないまま朝を迎えた。

 でも気が張っているのか、あまり眠くはない。


 登校前の準備。

 念入りに歯磨き洗顔し、化粧水で肌を整える。

 いつも以上に念入りに。

 髪をとかし、この前、ゆかりと一緒になんとなく入った雑貨屋さんで買った、カチューシャを着けてみる。

 レンガ色が主体の渋めのチェック柄が秋らしいと思って買ったが、今日まで着けそびれていた。


(似合う、と思うけど……)


 ゆかりちゃんにも褒められたし。

 香穂は思う。

 ゆかりのセンスを信じている。

 彼女はさり気ないおしゃれが上手だ。

 シンプルだけどビビッドな小物で、コーディネートを締めるのもうまい。

 でもそれは彼女の持ち味であって、香穂が彼女の真似をしても似合わない、ことはわかっている。


(……よし!)


 今日はちょっとだけ、いつもと変えてみよう。



 なんとなく上の空で授業を受け、昼休み。

 最近定番になっている『中庭のベンチでジュースを飲む』時に、ゆかりから挙動不審だと言われ、結木くんとの放課後の約束を話してしまう。


「おお~、やっとデートにこぎつけたん? 良かったやん!」


「そ、そんなん(ちゃ)うし」


 言いながら真っ赤になる香穂へ、ゆかりは生温い視線を当てる。


「まー、あの天然王子サマのことやから。気まぐれに親切心起こしただけかもしれんけど(う、と香穂は詰まる)。それを上手いこと恋愛イベントへ持ってゆくんは、香穂ちん次第かなあ」


「れ、恋愛イベント……」


 絶句する香穂へ、楽しそうにゆかりは言う。


「頭はエエけど天然で、恋愛感受性のメッチャ低いキャラの攻略、みたいな? ここはシッカリときめき度アゲてかな。せやけど香穂ちん、しょっぱなから難しいキャラ狙うんやねえ」


「おおお、乙女ゲームとチガウし」


「どーせやったら王子サマやなくて。『一の従者』辺りを狙った方が良かったん(ちゃ)う? ツンデレ傾向あるから好き嫌い別れるけど、ああ見えて世話焼きで、味方やと思った人間には尽くすタイプやで? 『一の従者』・上谷のマモさんは」


 攻略は比較的簡単そうやし、などと、ゆかりはひどいことを言う。


「いやいやいや」

(上谷くんはゆかりちゃんが好きやん!)


 さすがに半年、同じクラスに居ればわかる。

 ただ、ゆかりは上谷を『幼馴染みの男の子』としか思っていないようだ。

 思われていることくらいは察しているだろうが、彼女はほぼ無視している。

 男の子(ガキ)とレンアイするのもなあ、と、何かの時にぼそっと言っていた。


(……上谷くん。ガンバレ)


 片思い仲間?へ、香穂はひそかにエールを送る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ラブコメの波動を感じる( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ