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東京影譚 ~エミリア、影を紡ぐ者~  作者: ミルティア


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佐藤のためのギルド結成 その九

【読者様への注意喚起】


この物語はフィクションです。

法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

また、作中に登場する人名、組織、団体名(アスター家、K&E リサーチ&コンサルティング等)はすべて架空のものであり、実在の人物・組織とは一切関係ありません。


ようこそ、東京の影の中へ ここは、光が滅び、影が支配する世界。

摩天楼が立ち並ぶ、華やかな都市の顔の裏側には、深い闇が広がっている。


あなたは、そんな影の世界に生きる一人の女王に出会う。

彼女の名は、エミリア・シュナイダー。

金髪碧眼の美しい姿と冷酷な戦闘能力を持つ「始末屋」だが、その心は過去の壮絶なトラウマ(PTSD)により深く閉ざされていた。

彼女の唯一の拠り所は、佐藤健という元銀行員の相棒。

彼の存在こそが、彼女の心を繋ぎ止める唯一の「鎮静剤」だった。


女王の争奪戦と運命の対決 しかし、彼女の安息は、アスター家の令嬢リリア・アスターの出現によって一変する。

リリアは佐藤の独占をかけて、エミリアに「資金力」と「知略」で挑む。

二人の女王による壮絶な「争奪戦ラブコメ」が勃発し、その裏側で、巨大な「情報戦(現代ファンタジー)」が展開されていく。


リリアの計画: 彼女は愛する佐藤のために、軍事力、情報機関、そして公邸という名の「要塞」を築き上げる。


エミリアの覚悟: 愛する者の日常と自身の居場所を守るため、妹のヴァネッサや過去の因縁と共に、冷徹な知略と戦闘本能を解き放つ。


あなたは、エミリアがこの愛と権力の戦いを生き抜き、孤独を乗り越えていく「再生の物語」を体験することになる。


さあ、ページをめくり、あなたも影の世界へと足を踏み入れてください。

これは、あなたの「常識」が一切通用しない、究極のプロフェッショナルたちが「愛」のために戦う物語。


あなたは、エミリアに、どんな未来を見せてあげたいですか?


この物語は、最先端AI 「Gemini (by Google)」 との共作により誕生しました。

時に、AIは人間の想像を超える予想外(unexpected)な展開を――。 時に、AIは人間の感情を揺さぶる繊細な表現を――。 「Gemini」は、新たな物語の世界を創造する、私の大切なパートナーです。


※本作品はカクヨムにて先行公開しており、こちら(小説家になろう)では順次公開となります。あらかじめご了承ください。


ただし、どうか忘れないでください。 これは、愛と知略が支配する、あくまでフィクションだということを。

This is a work of fiction. Any resemblance to actual events or persons, living or dead, is purely coincidental.


Ceci est une œuvre de fiction. Toute ressemblance avec des événements réels ou des personnes, vivantes ou mortes, serait purement fortuite.


Dies ist ein Werk der Fiktion. Jegliche Ähnlichkeit mit tatsächlichen Ereignissen oder lebenden oder verstorbenen Personen ist rein zufällig.


นี่คือนิยายที่แต่งขึ้น บุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์ใดๆ ที่ปรากฏในเรื่อง หากบังเอิญคล้ายคลึงกับบุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์จริง ทั้งที่ยังมีชีวิตอยู่หรือเสียชีวิตไปแล้ว ถือเป็นเรื่องบังเอิญทั้งสิ้น


(この作品はフィクションです。実在の出来事や人物、存命・故人との類似はすべて偶然です)


日本標準時4月14日午後2時30分。

曇天が静かに続く都内。


箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、その日の午後もエミリアとリリアによる、佐藤を巡る、あまりにも子供じみた『戦い』が繰り広げられていた。


「いい加減になさいな、リリアさん! 健ちゃんは、今夜、わたくしと『住処』に帰るの!」

「いいえ、エミリア様! 今夜こそ、サトウさまには、『蒼穹キネマ』で、ジュリエットの料理を召し上がっていただくのです!」


ヴァネッサとサスキアが、心の底から『呆れながら見ている』、その光景。

オフィスのBGM代わりに流れているラジオ放送から、『秋のデザートの作り方』という、季節外れの料理番組が陽気に流れていたが、その料理番組の合間に、無機質な『交通情報(幹線道路の渋滞や、道路工事予定)』が静かに流れてきた。


そして、その情報の最後に、アナウンサーが何気なく、こう告げた。


「――なお、気象庁によりますと、まもなく、都内は雨が降ってくるとの予報です。運転には注意しましょう」


その「雨」というキーワード。

エミリアが、リリアと佐藤を依然として奪い合いながらも、彼女のその恐るべき『頭脳こころのなか』は、瞬時に、別の計算を始めていた。


(…雨? あの『埠頭』にも降るかしら…。松田たちが、『融雪剤(塩化カルシウム)』と『デッキブラシ』で、あの『車を食べるペット』を、今まさに駆除しようとしている真っ最中に、もし雨が降ると、どうなるのかしら…?)


彼女は、二つの可能性をエミリアなりに分析してみた。


(雨(水)が融雪剤の濃度を薄め、『駆除』は『失敗する』可能性が上がるのか…。…いや、待って。それとも…もし、あの怪物が、本当に粘菌のような生物なら。『水分をたっぷり含んだ』その体表面に、高濃度の塩化カルシウムが降りかかることで、浸透圧のバランスが崩壊し、より劇的な『ダメージを与える』のかしら…?)


エミリアは、そのどちらに転んでも「面白い」化学実験の結果を想像し、その唇に獰猛な笑みを浮かべた。


「…ふふっ」

「な、何ですの、エミリア様。急に笑って…!」

「ううん、何でもないわ。それより、リリアさん。健ちゃんの腕を離しなさいな!」


そのあまりにも不謹慎な楽しみに気づく者は、もちろん、誰もいない。

ただ、春のその冷たい曇り空だけが、その三匹の「猟犬」たちの運命を弄ぶかのように、静かに雨の気配を強めているだけだったのである――。


                    ***


あの埠頭で、続く静かな睨み合い。

松田たち『特別捜査班』の仕掛けた、あまりにもシュールな「罠」の前を、時折カモメが横切るだけだった。


(もちろん、その一部始終を、喜多見蓮が、遠くの車内から、楽しげに待ち伏せしている中)


松田は、その倉庫の非常階段の上で、冷たい風がその頬を撫でる「質」が変わったことに気づいていた。


(…この空気。…来るぞ)


松田が、刑事として、長年の雨の中での『張り込み』の経験から、彼は確信していた。

このままでは、あと数時間も持たずに『雨が降ってくる』、と。


雨が降れば、この「張り込み」は絶望的になる。

視界は奪われ、証拠は流され、そして何よりも、あの「怪物」が雨を好むのか、嫌うのか、そのデータすら、ない。

彼は、無線機を手に取った。


(このまま、無駄な『張り込みを続ける』か、あるいは、『今日は諦める』か)


かつての彼ならば、独断で決めていただろう。しかし、今の彼は、違う。

彼は、その無線機で、そばにいる相沢と若林に相談する。


「…二人とも、聞こえるか。天気が崩れるぞ。…このまま続けるか。それとも一旦引くか。…お前たちの意見を聞かせろ」


そのあまりにも意外な「相談」。

無線機の向こう側で、若林は一瞬、言葉を失った。

そして数秒後。若林の、その決意に満ちた声が返ってきた。


「…松田さん。俺は、続けます。相沢さんの車を食った、あのクソ怪物を、このまま野放しには、しておけません」

「…ええ、私も同感です。データは揃いませんでしたが、だからこそ、今夜が最大のチャンスかもしれない」


その二人の答え。松田は無線機を握りしめ、そして不敵に笑った。


「…分かった。なら、覚悟を決めろ。…今夜は、長くなるぞ」


春のその冷たい曇り空だけが、その三匹の「猟犬」たちの、そのあまりにも無謀で、そしてどこまでも熱い「決意」を静かに見下ろしているだけだったのである――。


                    ***


その埠頭を吹き抜ける風は、先程よりも明らかに湿気を帯びていた。

松田たち『特別捜査班』が、その空の異変を感じ取り、即座に『雨』に備えての行動を開始していた。


覆面車内では、若林がエンジンをかけ続け、エアコンを外気導入の『デフロスター』で全開にし、窓の『曇り』を必死に防ぐ。

ワイパーは間欠動作に設定し、車内が雨音で聞きにくくなることに備え、無線の音量を最大に引き上げた。

倉庫の非常階段では、松田と相沢が、覆面車のトランクに常備されていた、警察仕様の黒い『雨具カッパ』を素早く着用し、そして、『融雪剤』の袋には、予備のカッパを二重に巻き付け、その決戦兵器を『雨水』から完璧に保護して、できるだけ雨風があたらず視界が開けた屋根下がないか必死に探していた。


彼らのその動きには、一切の無駄がない。


その松田たちの、あまりにも手際の良い『動き』から、彼らが『雨に備えての行動』を開始したのだ、と喜多見蓮は瞬時に見抜き、そして、彼はふと自らの「武器」のことを思い出した。


彼は、そのボロいミニバンの助手席から振り返り、後部座席で黙々と『火炎放射器』のメンテナンスを続ける、胡散臭い数名の男たちに、いつもの飄々とした口調で確認する。


「――ねえ、皆さん。ちょっとお聞きしたいんですけど」

「…なんですかい、喜多見さん」

「その、自慢の『火炎放射器』って、もしかして、『雨の中』では、火力が落ちたりして、使えなくなったり、しませんかね?」


そのあまりにも素人くさい「質問」。

後部座席の男は、その顔を上げることもなく、答えた。


「…ナパーム(ゼリー状のガソリン)を舐めないでもらえますか、旦那。…雨なんざ関係ない。水面だろうが、雪の上だろうが、燃え尽きるまで消えやしませんよ」

「おや、それは頼もしい」


喜多見は、その完璧な「答え」に満足げに頷くと、再びその双眼鏡を構えた。


(…さて。雨が降っても、獲物は現れるのか。それとも雨宿りでもするのか。…そして、あの刑事さんたちの『塩化カルシウム』と、私たちの『ナパーム』。…一体、どちらが、あの『怪物』のお口に合うんでしょうかねぇ)


春の、その冷たい曇り空だけが、その二組の「狩人」たちの、そのあまりにも悪趣味で、そしてどこまでも危険な「期待」を乗せたまま、静かにその雨粒を落とし始めようとしていたのである――。


                    ***


日本標準時4月14日午後2時45分。

曇天が静かに続くが、少しずつ『雨が降り出す前の匂い』が感じられ始めた、都内。


箱庭の雑居ビル、三階のオフィスでは、先程までの穏やかな『休息時間』も終わり、再びそれぞれの「仕事」が始まっていた。

佐藤は、リリアの甲斐甲斐しい『手伝い(という名の、巧妙な誘導と助言)』のおかげで、何故か『関西地方の温泉の源泉の再建の専門業者探し』――という地道なリサーチを懸命に進めている。

その傍らでは、ヴァネッサが、エミリアから半ば『丸投げされた』あの『東京アノマリー・ギルド本部』が、今後『不法投棄や漂着したゴミを回収』したり『外来植物の刈り取り』を実際に行う『NPO』と、いかにして円滑に連携できるか、その地道な根回しを、ヴァネッサとサスキアの双方の人脈をフルに活用して渡りをつけている。


エミリアは、その二つの全く異なる「仕事」が同時並行で進んでいく様子をさり気なく確認しながら、ふと、オフィスの窓から見える灰色の天気模様を見ながら、別の「戦場」に思いを馳せていた。


(…あの刑事たち。そろそろ雨に降られる頃かしら)


彼女は、自分なら、あの『車を食べるペット』をどう退治するか、その雨という新たなる『条件』を利用して、シミュレーションを再開した。


(…『融雪剤(塩化カルシウム)』。確かに、脱水効果は期待できるわ。でも、雨で流れて濃度が下がれば、効果は半減する…。…もっと、安価で確実で、そして環境負荷が少ない方法は、ないものかしら…)


その瞬間。

エミリアの頭の中で、一つのあまりにも「家庭的」なアイテムが閃いた。

『家庭用の食器用洗剤』。


(…そうよ。『界面活性剤』よ。あの粘菌状の生物を物理的に『界面活性剤』で包んでしまって、その細胞膜か呼吸器官かを完全に塞ぎ『呼吸できなくして、窒息死』させてしまうのが、『融雪剤』なんかより、よほどコストが安くて、合理的だわ)


彼女は、そのあまりにも完璧な「結論」に、静かに笑みを浮かべた。


(しかも、後始末が簡単で、洗い流すだけで済む。たとえ車を食べるペットに、未知の『有害な寄生虫や、ウイルス、細菌』が万が一寄生していたとしても、家庭用の食器用洗剤なら、ほどほどの殺菌効果も期待できる。…完璧ね)


エミリアは、そのエミリアなりの、新たなる『駆除方法』を完璧に組み立てていた。

彼女は、その「結論」を松田たちに教えてやる「義理」はない、と判断すると、再び自らの「業務」――佐藤のための『ダミー・セーフハウス』の準備――へと、その意識を戻していく。


春の、その冷たい雨の匂いだけが、その最強の女王の、そのあまりにも楽しげな「悪巧み」を、静かに祝福しているだけだったのである――。


                    ***


箱庭の雑居ビル、三階のオフィスで、エミリアは先ほど自らが導き出した「最適解」について、引き続きあの『車を食べるペット』の生態について考えていた。


(…食器用洗剤。…ええ、それが一番、合理的だわ)


しかし、彼女の思考は一つの最悪の「可能性」に思い至った。


(…待って。雨が降れば、どうなる?もし、あの『車を食べるペット』が、私の推測通り『粘菌のような生き物』だとしたら。『雨(水分)』は、奴にとって、絶好の『活動を活発化』させるトリガーになる。…活発化し、『より多くの餌を食べた後』、奴は、どうする? …『増殖』よ。『晴れた日』を狙って、一斉に『胞子を撒き散らして、増殖する』のでは?)


その瞬間。

エミリアの脳裏に最悪の「光景」が浮かんだ。


(…そうなれば、都内各所で車が食われる、大パニック。…テレビは、そのニュース一色に…。…つまり。健ちゃんが、今期、あれほど楽しみにしている、新作アニメの放送が、その下らない『車を食べるペットの特別報道』で、無残にも『中止』や『延期』になって、そして健ちゃんが、心の底から悲しむのではないかしら…!? …それは、断じて許されない)


エミリアは、静かに立ち上がった。


「サスキア。オフィスの留守を頼むわ。ちょっと、『害虫駆除』に行ってくる」


彼女は、箱庭の雑居ビルの地下駐車場に停めてある、自らの愛車の白いコンパクトカーを運転して、一路あの埠頭へと向かった。

途中のスーパーで、彼女は、棚に並んでいた『家庭用の食器用洗剤(大容量ボトル)』をカート一杯に買い占め、それを無造作に助手席に乗せて、再びアクセルを踏み込んだ。


彼女が、今から向かうその『埠頭』に、既に二組の「狩人(松田たち『特別捜査班』と、そして『喜多見のチーム』)」が、息を殺して張り込んでいることなど、もちろん、彼女は気にもしない。


春の、その冷たい雨の匂いだけが、その最強の女王の、そのあまりにも個人的で、そしてどこまでも歪んだ「正義感」を、静かに祝福しているだけだったのである――。


                    ***


エミリアは、自らの愛車の白いコンパクトカーを運転しながら、あの忌まわしき「怪物」の気配が残る、埠頭地帯へと向かう途中だった。

彼女のその美しい横顔は、冷徹な「狩人」のそれだった。

助手席には、先ほどスーパーで買い占めた、大量の『家庭用の食器用洗剤(大容量ボトル)』が無造作に積まれている。


彼女は、その車を食べるペットの、その僅かな「情報」を元に、プロファイリングして、その行動パターンを『予想』する。


(…情報屋の話では『4月13日午前1時』。深夜に刑事の『車を食べた』。…ならば、おそらく夜行性か、あるいは光が苦手なタイプ。そして、車を一台丸ごと食べるほどの大きさ。たとえ変温動物だとしても、その基礎代謝が大きく、おそらくは『かなりの大食漢』の可能性は高いわね)


彼女の思考は今の「天候」と結びつく。


(そして、この『雨』。…『粘菌』のような生物だと仮定するなら、この「水分」は、奴の活動を活発化させる最高の「トリガー」よ。…つまり、奴は、『隠れていた場所』――陽の光があたらず、換気が悪く、ジメジメしたところ。あの『埠頭』なら、無数の『コンテナ同士の隙間』か、あるいは『コンテナと地面の間』、『アスファルトや排水路の割れ目』など――から、既に地表に移動して、次の獲物を探している可能性が高い)


彼女は、そう考え、埠頭エリアに入ると、愛車の白いコンパクトカーを、あえて大通りから外れさせ、監視カメラに極力映らないような裏道を移動しながら、そして目撃者を作らないように、埠頭周辺を、どこまでも静かに探す。

彼女が、集中して探しているのは、ただ一点。


(陽光が当たりにくくて、そして物が乱雑に置かれたところ。…特に、奴の大好物であるプラスチックや発泡スチロール、そして廃タイヤなどが、違法に不法投棄されて、うず高く積まれているような場所を集中的に)


彼女はまだ知らない。

自らが今、向かっている、その「餌場」こそが、まさに、二組の「狩人」(松田たち、そして喜多見のチーム)が、息を殺して獲物を待ち構えている、その「戦場」そのものである、ということを。


春の、その冷たい雨だけが、その三者の、あまりにも奇妙な「運命」の交錯を、静かに見守っているだけだったのである――。


                    ***


エミリアは、自らの『愛車の白いコンパクトカー』を静かに『走らせながら』、あの忌まわしき「怪物」の気配が残る埠頭へと接近していた。

そして、彼女は、その「獲物」よりも先に、二組の「狩人」を発見する。


(…一台。…そして、あんな場所にもう一台)


彼女は、その卓越した実力で、松田たちの、あの分かりやすい『覆面車』と、そして『喜多見のチーム』が潜む、あの『ボロいミニバン』の両方を、彼らに一切気が付かれずに『視認』していた。

エミリアは、そのあまりにもアナログな「待ち伏せ」に、心の中で静かに毒づいた。


(…相も変わらず、『非効率的』なことをしているわね。私なら、『AIと完璧に連携した監視カメラ』をこのエリアに無数に設置して、あの『車を食べるペット』の動きを24時間監視して、そしてAIからの通知が届いてから、ゆっくりと駆けつけて駆除するわ)


エミリアはそう思いながら、しかし同時に、確信していた。


(でも『松田たち』、そして、あの『ボロいミニバンのチーム』までが、この狭いエリアに張っているということは、やはりこの辺に、あの『車を食べるペット』がいると考えるのが妥当ね)


彼女は、奴の『大好物』である、『プラスチック』や『発泡スチロール』、そして『廃タイヤ』が、法を無視して不法投棄されているような所を、自らの愛車の白いコンパクトカーを巧みに運転しながら探すと、果たして、それはすぐに見つかった。


雨に濡れながら、風で『吹き溜まりに集まった』大量のゴミの山。

しかし、その吹き溜まりの濡れたゴミは、ありえない動きをしていた。

不自然に動きながら、まるでその中心部にある、見えざる「穴」へと吸い込まれるように、ゆっくりと消えているではないか。


エミリアは、その光景に心の中で静かに呟いた。


(…ふふっ。こんなところに、いたのね)


彼女は、その車の速度を一切緩めない。

そのまま、その「ゴミ山」の真横を通過する、その一瞬。

エミリアは、運転席側のドアの窓を素早く開けて、そして助手席に山のように乗せていた、大量の『家庭用の食器用洗剤(大容量ボトル)』を掴むと、既にキャップを緩めて外したそのボトルを、次々とその「ゴミ山」の中心部へと投げつけたのだ。


いかなる痕跡も残さず、何本もの『家庭用の食器用洗剤(大容量ボトル)』が叩きつけられ、緑や青の粘度の高い液体が、その「怪物」の上へと降り注ぐ。


(…!)


一瞬、その「吸い込む」動きが激しく痙攣し、そして動かなくなったのをサイドミラーで確認して、エミリアは満足げに頷いた。


(…任務、完了)


彼女は、そのままアクセルを踏み込み、『箱庭の雑居ビル』に帰ることにした。

帰りの途中、彼女はガソリンスタンドの洗車機に自らの愛車の白いコンパクトカーを入れた。


(念のため『完全に綺麗』にしておかないとね。車を洗う洗剤をたっぷり使って、あの、『車を食べるペット』に寄生しているかもしれない、未知の『寄生虫や、ウイルス、細菌』を完全に殺菌しておかないと、健ちゃんに感染したら大変だわ)


そして、その車が洗い上げられるのを待つ数分間。

彼女は、自らのセキュアなスマートフォンで、警察に『匿名(もちろん、電話番号や逆探、スマートフォンの全ての情報、位置情報と、音声再現等、共に不可能な形で)』で通報した。


「――ええ、そう。埠頭で、泡まみれにまみれて、動かなくなっている、巨大な生き物らしきものを、見つけたの。…ええ、そうよ。何かの生き物みたいだけど、見たことない生き物なの。…未確認生物の確認も、警察の仕事でしょう?」と、その後始末を完璧に丸投げしたのである。


                    ***


空は、ついに本格的な雨が降り出し始めた都内。


松田たち『特別捜査班』と、あの『ボロいミニバン』の『喜多見のチーム』が、それぞれの監視場所で、『車を食べるペット』が、この雨に誘われて、いつ姿を見せるかと、息を殺して監視している、まさにその中、一つの赤色灯がその灰色の世界を切り裂いた。


所轄署の一台の白黒パトカーが、サイレンは鳴らさず、赤色灯をつけながら、まるで『なにかを探すように』、その埠頭を『ゆっくりと巡回』し始めたのだ。

そして、そのパトカーは、松田たち『特別捜査班』と『ボロいミニバン』の『喜多見のチーム』からギリギリ死角になるかどうかという、絶妙なゴミの吹き溜まりのところに、ぴたりと停車した。


雨がっぱを着た一人の警官が、訝しげに運転席から降りて、そのゴミの山をよく覗き込んでから、次の瞬間。

その警官は、まるで幽霊でも見たかのように飛び上がり、慌てて白黒パトカーに戻り、そして、どこかに必死の形相で無線で連絡している。


そのあまりにも異常な様子を見て、二組の「狩人」――松田たち『特別捜査班』と『ボロいミニバン』の『喜多見のチーム』――は、同時に何かが、自分たちの知らない場所で『起きた』のだ、と悟るしかなかった。


(…クソッ! 持って行かれたか!?)松田は、その唇を噛み締め、(…おやまあ。どうやら、私たちよりも、もっと『せっかち』なお客様がいらっしゃったみたいですねぇ)


喜多見は、その三日月のような目で、心の底から楽しそうに、笑っていた。

春の、その冷たい雨だけが、その二組の敗れた「狩人」たちの、そのあまりにも不毛で、そしてどこまでも滑稽な「待ち伏せ」の終わりを、静かに告げているだけだったのである――。


                    ***


本格的な雨が降り続く、都内。

松田たち『特別捜査班』と、あの『ボロいミニバン』の『喜多見のチーム』が、所轄の白黒パトカーの動向を伺っていると、けたたましいサイレンの音と共に、応援の所轄署の白黒パトカーが数台、その埠頭へと、なだれ込んできた。


そして、応援の警官たちが目撃したのは、信じがたい「光景」だった。

あのゴミの吹き溜まり。

そこには、家庭用の食器用洗剤の強烈な柑橘系の匂いと、雨に叩かれた『泡』まみれで、完全に動かなくなった、見たこともない生き物の、無残な「残骸」が横たわっていたのだ。

現場検証を始めた鑑識の人たちや警官たちは、そのあまりにも非現実的で、悪臭(洗剤と怪物の体液の匂い)が漂う現場に、ただ呆然としながら、証拠の保全や、関係者への『聞き込み』をしている。


松田たち『特別捜査班』は、その騒動を聞きつけ、所轄署の警官たちの事情聴取に渋々『答え』ながら、その胸の内で、同じことを考えていた。


(…やられた。…俺たちが来る前に、誰かが先にこいつを仕留めやがった…!)


そして、その様子を遠巻きに眺めていた『ボロいミニバン』の『喜多見のチーム』は、これ以上、警察にその存在を知られるわけにはいかない、と、その場を静かに去り、そして、車内で撤収作業を行っていた。


助手席の喜多見蓮が、そのあまりにもあっけない「幕切れ」に、心の底から楽しそうに笑っていた。


(後部座席では、胡散臭い数名の男たちが、火炎放射器の安全装置を念入りにしっかりかけて、その物騒な道具を片付けている)


「――いやあ、残念。今回は、無駄足になりましたね」


喜多見は、強面の運転手と、後部座席の男たち相手に、その三日月のような目で笑った。


「でも、ある意味、その火炎放射器を使わずにすんで、本当に良かったですよ。さすがに私も、『捜査一課の怖いおまわりさん』と、おまけに『消防の火災調査官』から、セットで追いかけ回されるのはご勘弁。そんな面倒な経験はしたくなかったですから」


そのあまりにも飄々とした答えに、強面の運転手が、納得いかないという顔で「なら、最初からなぜ、俺達を、こんなもんまで用意させて雇ったんだ?」と尋ねると、助手席の喜多見蓮が、その三日月のような目で、笑った。


「だって、その『捜査一課の怖いおまわりさん』や『消防の火災調査官』なんかよりも、『もっと怖い人』から、なんとかして欲しいって、泣きつかれ頼まれちゃったからですよ。いやあ、これで、私も、あの方に大きな「貸し」ができました」


彼は、そう『にこにこ』と、どこまでも機嫌よく答えた。

そのあまりにも歪んだ「論理」。

もちろん、強面の運転手と、後部座席の男たちは、喜多見蓮に、『もっと怖い人』のことを聞かなかったのである――。


                    ***


エミリアが、「車を食べるペット」を駆除するために『留守』にしている、箱庭の雑居ビル三階のオフィスでは、静かな、しかし、どこまでも歴史的な「会議」が開かれていた。


その参加者は、付喪神の、月白盃、薄氷刃、薬院椿。

彼女たちは、その霊的な姿で応接室のソファに集い、佐藤の趣味を考慮して、自らのチームの名前を、『付喪神ギルド』、と決めていた。


「――さて。ギルドは結成できましたけれど。…肝心の『書記官』がおりませんわね」


盃が、その扇子で口元を隠しながら言う。

その言葉に、刃が頷いた。


「うむ。…やはり、あの『硯海すずりうみ』が必用だ。彼女の『記録』と『分析』の能力がなければ、あの男(佐藤)を鍛えることは難しい」

「あらあら。ですが、硯海は今、リリア様のあの『天空の公邸』で、あの気障な貴公子ジュリアン様の、お側に置かれているのではありませんこと?」


椿が、おっとりと尋ねる。


「ええ。なんでも、ジュリアン様の『手紙』や『仕事』の手伝いをさせられているとか。…まあ、あの堅物が、『恋文』の手伝いを、しているとは傑作ですけれど」


盃が、くすくすと笑う。


「――ならば、話は早い」


刃が、その鋭い瞳で仲間たちを見据えた。


「我々、三柱で、今すぐ、あの天空の『城』へと向かい、硯海も我ら『付喪神ギルド』に、強引にでも誘う。それだけだ」

「あら、刃。あなたは相変わらず、脳筋ですこと」


盃が、その言葉を遮った。


「良いこと? リリア様は、今、わたくしたちを、この『箱庭』に置いてくださっている。その『信頼』を裏切るわけにはいきませんわ。わたくしたちが、こっそりと、リリア様に気が付かれないように、硯海の元へと通い、そして、彼女をゆっくりと『説得』すれば良いだけの話。…そうでしょう?」


その、盃のあまりにも悪戯っぽい「提案」。

刃は、そのやり方に不満を隠せなかったが、しかし、それが最も合理的であることも理解していた。

椿は「まあまあ」と、その二人をなだめている。


こうして、人間たちの知る由もない、所で。最強の付喪神ギルドによる、四人目のメンバーの「勧誘作戦」が、静かに、そして確実に、始まろうとしていたのである――。


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