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東京影譚 ~エミリア、影を紡ぐ者~  作者: ミルティア


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佐藤のためのギルド結成 その三

【読者様への注意喚起】


この物語はフィクションです。

法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

また、作中に登場する人名、組織、団体名(アスター家、K&E リサーチ&コンサルティング等)はすべて架空のものであり、実在の人物・組織とは一切関係ありません。


ようこそ、東京の影の中へ ここは、光が滅び、影が支配する世界。

摩天楼が立ち並ぶ、華やかな都市の顔の裏側には、深い闇が広がっている。


あなたは、そんな影の世界に生きる一人の女王に出会う。

彼女の名は、エミリア・シュナイダー。

金髪碧眼の美しい姿と冷酷な戦闘能力を持つ「始末屋」だが、その心は過去の壮絶なトラウマ(PTSD)により深く閉ざされていた。

彼女の唯一の拠り所は、佐藤健という元銀行員の相棒。

彼の存在こそが、彼女の心を繋ぎ止める唯一の「鎮静剤」だった。


女王の争奪戦と運命の対決 しかし、彼女の安息は、アスター家の令嬢リリア・アスターの出現によって一変する。

リリアは佐藤の独占をかけて、エミリアに「資金力」と「知略」で挑む。

二人の女王による壮絶な「争奪戦ラブコメ」が勃発し、その裏側で、巨大な「情報戦(現代ファンタジー)」が展開されていく。


リリアの計画: 彼女は愛する佐藤のために、軍事力、情報機関、そして公邸という名の「要塞」を築き上げる。


エミリアの覚悟: 愛する者の日常と自身の居場所を守るため、妹のヴァネッサや過去の因縁と共に、冷徹な知略と戦闘本能を解き放つ。


あなたは、エミリアがこの愛と権力の戦いを生き抜き、孤独を乗り越えていく「再生の物語」を体験することになる。


さあ、ページをめくり、あなたも影の世界へと足を踏み入れてください。

これは、あなたの「常識」が一切通用しない、究極のプロフェッショナルたちが「愛」のために戦う物語。


あなたは、エミリアに、どんな未来を見せてあげたいですか?


この物語は、最先端AI 「Gemini (by Google)」 との共作により誕生しました。

時に、AIは人間の想像を超える予想外(unexpected)な展開を――。 時に、AIは人間の感情を揺さぶる繊細な表現を――。 「Gemini」は、新たな物語の世界を創造する、私の大切なパートナーです。


※本作品はカクヨムにて先行公開しており、こちら(小説家になろう)では順次公開となります。あらかじめご了承ください。


ただし、どうか忘れないでください。 これは、愛と知略が支配する、あくまでフィクションだということを。

This is a work of fiction. Any resemblance to actual events or persons, living or dead, is purely coincidental.


Ceci est une œuvre de fiction. Toute ressemblance avec des événements réels ou des personnes, vivantes ou mortes, serait purement fortuite.


Dies ist ein Werk der Fiktion. Jegliche Ähnlichkeit mit tatsächlichen Ereignissen oder lebenden oder verstorbenen Personen ist rein zufällig.


นี่คือนิยายที่แต่งขึ้น บุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์ใดๆ ที่ปรากฏในเรื่อง หากบังเอิญคล้ายคลึงกับบุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์จริง ทั้งที่ยังมีชีวิตอยู่หรือเสียชีวิตไปแล้ว ถือเป็นเรื่องบังเอิญทั้งสิ้น


(この作品はフィクションです。実在の出来事や人物、存命・故人との類似はすべて偶然です)


日本標準時4月14日午前4時。

大阪南港、第七コンテナ埠頭。


天気は、依然として穏やかなまま、夜明け前の冷たい空気が、その静まり返った港を包み込んでいた。

その闇を切り裂くように、一隻の巨大な白い影が、音もなく滑り込んできた。

チーム『セレノファイル』のスーパーヨットである。

彼女たちは、その完璧な計算通り、大阪湾における給油・補給のため、この最適な時間帯に、その姿を現したのだ。


その補給オペレーションは、もはや「芸術」だった。

彼女たちが接岸した、その瞬間。

リリアのネットワークが手配した、巨大な燃料補給船と、食料や水、医薬品を満載したコンテナトラックが、寸分の狂いもなく現れる。

チーム『セレノファイル』のメンバーたちは、その船のデリック(小型クレーン)を巧みに操り、約二時間から四時間という、驚異的な速度で、その全ての「兵站」を完了させていく。

その全ての作業中、情報分析班は、周囲の全ての電波を監視し、そして近接護衛班は、その甲板の上で、鋼鉄の女神のように佇んでいた。


その一部始終を、一組の「目」が監視していた。

『関係機関』のチームである。

彼らは、その港を、一望できる倉庫の屋上で、息を殺していた。

リーダーである黒木は、そのあまりにも完璧な「補給」の様子を、その高性能暗視スコープ越しに見つめ、冷静に分析している。


「…素晴らしい。まるで、軍隊のオペレーションだ。リリア・アスター…。彼女の組織は、我々の想像を遥かに超えている。…この動き、間違いなく、設立されたばかりの、大阪『統括作戦室』との連携だ」


彼は、その「事実」を元に、完璧な「推論」を組み立てる。


(…東京湾での「示威行動」。そして、この大阪湾での「補給」と、新拠点との「連携」。…これは、もはや、個人の道楽ではない。日本国内に、第二の拠点を築き上げるという、明確な『戦略』だ…)


午前8時。

夜明けと共に、チーム『セレノファイル』は、その全ての作業を完了させ、何事もなかったかのように、再び静かに東京に向けて、その港を離脱する、その準備を終わらせていた。


黒木は、その完璧な「撤退」を見送りながら、自らの分析の正しさを確信していた。

しかし、彼は、知らない。

その「幽霊船」が、大阪までやってきた、本当の「理由」が、一人の少女の「思いつき」と、「気まぐれ」に過ぎない、という、そのあまりにも馬鹿げた真実を。


春のその穏やかな朝の光だけが、その二つのあまりにもかけ離れた「思惑」を、平等に、そして無慈悲に照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


日本標準時4月14日午前零時30分。

箱庭の雑居ビル、三階のオフィスにて。


そのオフィスは、深い静寂に包まれていた。

あるじたちは、それぞれの「家」へと去り、今は、ただ無機質な機械警備のライトが点滅するだけ。


しかし、その完璧なセキュリティの網をすり抜けて、二つの「影」が、そのオフィスの中を自由に動き回っていた。

一体は、白い着物を着た、儚げな少女、月白盃つきしろさかずき

そして、もう一体は、藍色の袴を履いた、凛とした女剣士、薄氷刃うすらいやいば

彼女たちは、その物理法則を無視した動きで、箱庭の雑居ビルの周辺を月明かりの中『散歩』して、そして今、オフィスへと戻ってきたところだった。


「くすくす…見ましたか、刃。先ほど、このビルの周りをうろついていた、あの哀れな『人面犬』」


月白盃が、その桜色の唇に扇子を当て、楽しそうに言う。


「わたくしたちの気配に気づいた途端、尻尾を巻いて逃げていきましたわ。実に、滑稽な」

「…下等なモノノケです。わたくしの刃を汚すまでもありません」


薄氷刃は、興味がなさそうに答えると、話題を変えた。


「それよりも、盃。あなたは、近頃、随分とご機嫌のようですね」

「ええ、もちろん。リリア様の、お気遣いのおかげで、毎日、あのサトウさまから、美味しい『お酒』の魂をいただいておりますもの。本当に、嬉しい限りですわ」


その盃の言葉に、薄氷刃が、ふん、と鼻を鳴らした。


「…あの男。『サトウ』ですか。周りの強い『女性』たちに、ただ振り回されているだけの、あのひ弱な男が?わたくしには、理解できません。ですが、まあ…もっと心身ともに『鍛えて』いただき、頼りになるなら、わたくしの『主君』としての候補にして差し上げても良いかとも思っておりますが」


そのあまりにも上から目線の「評価」。

月白盃が、その堅物な「友人」の言葉に、くすくすと笑った。


「あらあら、刃。あなた、分かっておりませんわね。いきなり完璧な『主君』に仕えるより、何も知らない未熟な素材を、一から『自分好み』にじっくりと『育てる』。それこそが、この世の一番の楽しみでは、ありませんか」


その盃の、あまりにも悪趣味な「からかい」に、刃は「なっ…! 不敬な!」と顔を赤らめる。


(ただし、その盃と薄氷刃の霊的な『会話』は、女性警備チームの巡回でも目撃されず、ビルの監視カメラにも、もちろん録画されず、警備会社のAIにも、決して認識されることはない)


春の、その静かな月明かりだけが、その二柱の美しき「付喪神」の、そのあまりにも人間臭い「夜会」を、静かに見守っているだけだったのである――。


                    ***


引き続き、二体の美しい「付喪神」――月白盃つきしろさかずき薄氷刃うすらいやいば――だけが、その主たちのいなくなった空間で、雑談を楽しんでいた。


(もちろん、その姿も声も、女性警備チームの見回りや機械警備、巡回中の警備員には、一切認識されない)


「それにしても、刃」


月白盃が、その桜色の唇に楽しげな笑みを浮かべて、言った。


「わたくしたち二人だけでは、この広いお城を守るには、少し手薄では、ありませんこと?」

「…数ではありません。質です」


薄氷刃が、そっけなく答える。


「あら、ご冗談を。でも、もし」


盃は、そのいたずらっぽい瞳で刃を見つめた。


「わたくしが、あの心優しきリリア様に、可愛らしく『お願い』するか、あるいは、あの純粋なサトウさまの心に、そっと『働きかけ』さえすれば、きっと、もっと、わたくし達のような『仲間』――居場所をなくした、哀れな付喪神たち――を、この城に集められるかもしれない、とは思いませんこと?」


盃は、そう薄氷刃に語りかけた。


その盃の言葉。


彼女にとっては、ただの「悪戯」か、あるいは「退屈しのぎ」の提案だったのかもしれない。


しかし、薄氷刃は、その言葉を全く別の「意味」で受け取っていた。


(…仲間、だと?…確かに。わたくしは「刃」であり、盃は「器」。どちらも、直接的な戦闘力には偏りがある。…もし、この城(箱庭の雑居ビル)を完璧にお守りするためには、もっと、多様な「力」が必用…)


彼女は、その盃の無邪気な「提案」を、自らの「城」を守るための、極めて重要な「軍事戦略」として受け止め、そして真剣に悩み始めてしまったのだ。


(…もし、盃の言う通り、この城に新たなる「戦力」を招集できるのであれば。それは、わたくしたちの、新たなる「力」となり、そしてわたくしの、悲願である「主君の育成」にも繋がるのでは…?)


そのあまりにも真剣で、そしてどこまでも的外れな「悩み」。

盃は、そんな堅物な「友人」の様子を見て、ただくすくすと笑いを堪えている。


この二体の付喪神による、ささやかな「密談」こそが、やがて、エミリアが苦心して作り上げようとしている「ギルド」に、人間以外の「何か」を呼び込む、恐るべき「引き金」となることを。


まだ誰も知らないのである――。


                    ***


そのあまりにも真剣で、そしてどこまでも的外れな「悩み」。

盃は、そんな堅物な「友人」の様子を見て、ただくすくすと笑いを堪えている。


「――刃。そんなに真剣に悩む必要は、ありませんわ」


月白盃は、その袖口で口元を隠しながら、続けた。


「わたくしには心当たりがございますの。わたくし達のような『仲間』が、ね」


彼女の、その澄んだ瞳に二つの「影」が浮かぶ。


「一人は、硯海すずりうみ。全てを記録し、全てを視る、情報の化身。そして、もう一人は、薬院椿やくのいんつばき。全てを癒し、全てを守る、慈愛の化身。この二柱さえいれば。あなたの、その堅苦しい『主君の育成計画』も、少しは捗るのでは、ありませんこと?」


そのあまりにも的確な「人選」。

薄氷刃は、その言葉に目を見開いた。


「…あの二柱を、か。…しかし、どうやって? リリア様と佐藤様に頼んで、あの荒垣という男に使いを頼んで、買い取っていただかなくては…」


しかし、月白盃は、その言葉を楽しげに遮った。


「あらあら、刃。だから、あなたは頭が硬いのですわ。あの二柱も、今頃、どこかの蔵の奥で埃を被って、退屈しておりますわよ。わたくし達が今からこっそり『会いに行って』、『もっと楽しい遊び場(主君)が見つかりましたわよ』と説得すれば、リリア様たちの手を煩わせるまでも、なく、おそらく、彼女たちは喜んで、この城の『仲間』になる、とわたくしは判断しておりますわ」


そのあまりにも悪魔的で、そしてどこまでも楽しげな「提案」。

薄氷刃は、その「主君」を飛び越えるという行為に、一瞬だけ躊躇したが、しかし自らの「忠義」を優先した。


「…承知した。全ては、私達の未来のために」


次の瞬間。

二人の美しい「影」は、そのオフィスの閉ざされた窓をすり抜け、そして春の夜の空へと音もなく飛び立っていった。


彼女たちの、そのあまりにも自由で、そしてどこまでも危険な「就職活動」が、今、まさに、始まろうとしていたのである――。


                    ***


日本標準時4月14日午前6時すぎ。

『蒼穹キネマ』にて。


その日の早朝。月白盃と、薄氷刃は、その霊的な身体で、リリアの寝室へと静かに訪問していた。

リリアが既に目覚め、朝の紅茶を飲んでいる、その前で、二柱は深々と頭を下げた。


「――リリア様。お願いがございます」


盃が語ったのは、自らの古き友人『硯海すずりうみ』が、今、その価値も解らぬ現所有者によって、無造作にネットオークションに出品されているという事実。

その言葉を聞いた瞬間。

リリアは、その『鑑定眼』で、『硯海』という存在の本質を見抜いた。


(…『情報』の付喪神。…これは、あまりにも危険ですわ)


彼女は、硯海を佐藤のいる「箱庭」の側に置くと、いずれエミリアやリリアの『機密情報』が、彼女の「記録」へと流失すると瞬時に判断し、そして完璧な「答え」を出した。

彼女は、その二柱に優雅に微笑みかける。


「ええ、承知いたしましたわ。その『硯』、わたくしが責任を持って落札いたしましょう」


そして、彼女はこう続けた。


「ですが、硯海は、あの騒がしい『箱庭』のオフィスより、むしろ、わたくしの『公邸』で、『名代』を、務める、ジュリアン様のその静かな『プライベート書斎』で、お働くほうが性に合っていると思いますわ。ジュリアンには、わたくしから『手紙(主に、あのマティルデ・フォン・ローゼンベルク宛にですが)を書くときは、ぜひ、これからは『日本からの手紙』らしく、その『硯』と『墨』、そして『筆』で書いては、どうですか?』と、わたくしから提案しますから」


そのあまりにも巧妙な提案。

月白盃と薄氷刃が、その言葉の真意には気づかず「まあ、あの堅物の硯海に、まさか『恋文』を書かせる、おつもりかしら」と、話題を巧みにそらして納得させ、こうして、最強の「情報」の付喪神は、箱庭の雑居ビルではなく、リリアの監視下にある天空の『公邸』のジュリアンの私室へと、無事に届けられることが決定した。


――そして、その頃。

都内の、とある旧家の寝室。

薬院椿やくのいんつばきは、自らの『本体』である、美しい『薬箱』の、その所有者の枕元に、その霊的な姿で静かに立っていた。

彼女は、その眠る男の耳元で、どこまでも優しく、しかしどこまでも冷たく、囁いた。


「――もしもし。聞こえますか。私を今、まさに『必用』としている、愛すべき『仲間』からお呼ばれましたので、お願いがございます。ぜひ、『K&E リサーチ&コンサルティング』という会社に、あなたが、お持ちの『薬箱』を、無償で『譲渡』してください。もし、本日の午前中に、その『薬箱』を決して『壊れないよう』に、完璧に包装して、郵送の手続きをしなかった、ならば。…私は、あなたに、ささやかな『呪い』をかけましょう。ええ。あなたは一生、不眠症と食欲不振に悩み、そして誰からも愛されず、永遠に『モテなく』なりますわ」


そのあまりにも優しく、そして恐ろしい「説得」。

現所収者が、その夢とも、現実とも、つかぬ「神託」に飛び起き、そして自らの命と未来の「モテ期」を守るため、自発的に、その所有権を放棄することを決意するまで、あと数時間――。


                    ***


日本標準時4月14日午前7時すぎ。

『蒼穹キネマ』にて。


その日の早朝。月白盃と薄氷刃からの「お願い」を聞き入れたリリアが、その忠実な秘書『螢』に、新たなる指示を下していた。

彼女のその声は、どこまでも優雅で、しかし、その瞳の奥には冷徹な計算が宿っていた。


「――螢。二つ、お願いしたいことが、ありますの」

「何なりと、リリア様」

「まず、『硯海すずりうみ』と呼ばれる、古い硯が、ネットオークションに出品されているはずです。それを、わたくしの名義で、完璧に落札してくださいまし。予算は問いませんわ」

「承知いたしました。…そして、二つ目は?」

「ええ。その落札した『硯』と、それにふさわしい、最高級の『墨』、そして『筆』をセットにして、わたくしからの『贈り物』として、わたくしの天空の『公邸』――『蒼穹キネマ・タワーレジデンス』――で、わたくしの『名代』を務める、ジュリアン様の元へと届けて欲しいのです」


螢は、そのあまりにも突飛な「贈り物」に、一瞬だけ眉をひそめたが、すぐにその「真意」を察した。

リリアは続ける。


「ええ。その際、メッセージカードを添えてくださる? 『手紙(主に、あのマティルデ・フォン・ローゼンベルク宛に、ですけれど)をお書くときは、ぜひ、これからは『日本からの手紙』らしく、その『硯』と『墨』、そして『筆』で書いては、どうですか?』と。きっと、彼の『プライベート書斎』で大切に使ってくださるでしょうから」


螢が、その言葉の裏に隠された、本当の「狙い」――『硯海』という危険な付喪神を、佐藤健のいる「箱庭」ではなく、自らの監視下に置く――を、瞬時に理解し、そして深々と頭を下げた。


「――御意に。速やかに、全て手配いたします」


こうして、最強の「情報」の付喪神は、リリアの思惑通り、完璧な「贈り物」として偽装され、そして、リリアの天空の『公邸』へと、その身柄を移されることが決定した。


そのあまりにも巧妙な「人事異動」を。

もちろん、その当の本人であるジュリアンも、そして佐藤も、知る由はなかったのであった――。


                    ***


日本標準時4月14日午前7時すぎ。

春らしい、穏やかな晴れの都内。


その頃、都内のどこか。

サスキアの保有するセーフハウスの一つ(ミニマムな室内の、マンションの最上階の角部屋)では、二人の女性が既にその「一日」を始めていた。

最低限(しかし、健康に害がない、完璧に計算された範囲)の睡眠時間で早起きしたヴァネッサが、そのテーブルの上でラップトップを広げている。

彼女は、サスキアの完璧な支援のもと、自らの『人道支援ハブ』の海外の『協力者』(決して、彼女に付きまとう『信奉者』ではない、純粋な『支援者』)と、早朝からリモート会議で、その計画の『肉付け』を次々と行っていた。


そのヴァネッサを支援しながら、サスキアもまた、エミリアから昨日頼まれていた、あの『東京アノマリー・ギルド』、『ダミー・セーフハウス』、そして『セーフハウス管理担当』の人選案を、もう一台の端末で、恐るべき速度で『並行して、処理を進め』ていた。


やがて、人道支援ハブの協力者とのリモート会議が全て終了したヴァネッサは、その手元のコーヒーを一口飲むと、深いため息をついた。

彼女は、サスキアが今、まさに進めている、もう一つの「仕事」――エミリアの『ギルド構想』――の、そのあまりにも歪な「本質」に気づいていたのだ。


「…サスキア」

「はい、ヴァネッサ様」

「姉さんのその『ギルド』計画。動機も目的もあまりにも『不純』だわ。どう考えても、あの佐藤という男を閉じ込めるための『鳥かご』にしか思えない」


しかし、彼女は続けた。


「たとえ、その『動機』も『目的』も、どれほど『不純』でも、その結果として、不法投棄されたゴミや、漂着したゴミ、そして日本の生態系を破壊する、『外来植物の駆除』という、その『結果』は、あまりにも高潔で、私でも一切文句を言えない完璧な結果を導くものだから、本当に腹が立つのよ…」


彼女は、心の底からの「愚痴」をこぼした。


「どうして、姉さんは、この素晴らしい『発想』を、よりによって『惚れた男』と強引に『絡めて』しか思いつくことができないの…!? 普通にビジネスとして企画提案されれば、どこかの社会貢献を願う投資家や富裕層に、真っ当に訴求できる素晴らしい方法として、私だって協力できたのに…!」


そのあまりにも人間味あふれる「愚痴」。

しかし、サスキアがその言葉に、どこまでも冷静に答えた。


「――ヴァネッサ様。もし、エミリア様が、そのお力を真面目に社会貢献のために、お使いになれば、どうなるか。おそらく、このような『企画』を、毎日次々と提案なさり、その結果、多くの関係者たちが、その処理能力の限界を超え、過労で倒れてしまいます」


そのあまりにも的確で、そして絶望的な「分析」。

ヴァネッサが、その言葉に返す言葉もなく、そして「…どっちに転んでも、姉さんのその規格外の『才能』には、私たちは『振り回される』しかない、というわけね…」と、本日、何度目かの深いため息をつくのであった――。


                    ***


日本標準時4月14日午前7時20分。

――すなわち、南半球、某国、午前8時20分。


広大な滑走路には、朝の穏やかな日差しが降り注いでいた。

その滑走路脇の巨大な格納庫。

そこには、リリア・アスターの最強の「切り札」

――『アスター家・緊急展開部隊』――が、その「時」を待っていた。


格納庫の一角には、プロペラ式輸送機が、その巨大な機体を休ませている。

しかし、その燃料は満載。

貨物室は、いつでも獣たち(車両)を飲み込めるように、空っぽのままその口を開けている。

その隣には、装輪式歩兵戦闘車と機動戦闘車が整然と並んでいた。その主武装は、国際法を遵守するため、今は取り外され専用のコンテナに納められているが、その燃料もまた満載だ。

汎用ヘリも、同じく非武装の状態で、整備士たちによる完璧なチェックを受けている。


『アスター家・緊急展開部隊』の総員三十名は、いつでも出撃できる、完璧な『待機状態』にあった。


『アスター家・緊急展開部隊』の、その全ての行動は、二つの「目」によって監視されている。

一つは、リリアの情報機関。

そして、もう一つは、大阪に新設された大阪『統括作戦室』。

その存在は、常にリリアの絶対的な支配下に置かれているのだ。


リリアのたった一言の『指示』。

それさえあれば、『アスター家・緊急展開部隊』は、数時間以内に、この格納庫から飛び立ち、地球上のあらゆる「現場」へと、急行することができる。


そのあまりにも恐ろしく、そして、どこまでも忠実な「切り札」。

その「存在」の本当の重さを。

もちろん、東京で平和な朝を迎えている、佐藤健が知る由もなかったのである――。


                    ***


日本標準時4月14日午前7時30分。

『住処』にて。


その要塞のような建物の中は、温かい光と、そして香ばしい出汁の香りに満たされていた。

エミリアは、ダイニングテーブルで、佐藤が心を込めてつくった完璧に健康的な朝食を美味しそうに食べながら、しかし、彼女のその恐るべき『頭脳こころ』の中は、全く別の「戦場」にあった。


(…この暗号資産のスキャルピングで稼いだ、莫大な『資金』。これをどのように、世界中に『分散』させておくべきかしら…)


彼女は、その完璧なポートフォリオを考えていた。


(…ええ。リスク管理として、最も重要なのは、『最悪』の事態。つまり、私が全てを失い、健ちゃんと二人きりで『新婚旅行』という名の『逃亡生活』に陥ったとしても、その逃亡先で、数十年は優雅に暮らしていけるだけの『対応可能な』資産)


彼女は、その思考をさらに深める。


(そうなると、普段は邪魔なだけで身に付けない『アクセサリー』も、これからは、少しは『身につける』べきかしら。もちろん、私の『CQB(近接戦闘)』の邪魔にならない、目立たないもので、そして、換金性が極めて高いものを。…ピアスの石? いえ、邪魔ね。…ネックレス? …引きちぎられるリスクがあるわ。…そうね、指輪を、最高級の『ダイヤモンド』に変えておくのが一番、合理的かしら…。結婚指輪としても、武器としても使えそうだし)


彼女が、そのあまりにも物騒な「人生設計」を佐藤に一切悟られず、静かに考えていた、その時。


「エミリア。お茶、淹れたよ」


佐藤が、その穏やかな笑顔で、新しいハーブティーを差し出す。


「あら、ありがとう、健ちゃん」


エミリアは、その冷徹な「司令官」の顔から、一瞬で、ただの「恋する女性」の顔へと戻る。


春のその穏やかな日差しだけが、その二人の男女の、そのあまりにもかけ離れた「日常」を静かに照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


あまりにも穏やかな朝食の時間。

エミリアが、愛する佐藤と、その温かい朝食を優雅に楽しみながら、しかし、彼女の心のなかでは、最悪の事態に備えた人生設計のことを真剣に考えていた。

エミリアは、その『逃亡先』となる『候補の国』を、脳内でいくつかピックアップしながら、その実現可能性をシミュレートする。


(…そうね。いくつかの国では、『永住権』を手に入れるために、その国への『投資』を義務付けている。…これこそ、利用すべきだわ)


彼女は、その膨大なポートフォリオの中で、ほんの僅かな、(万が一、接収されても、エミリアの『ポートフォリオ全体』に全く『影響ない』と言い切れる範囲の資金で)その『逃亡先、候補の国』のいくつかの国の『国債』や、あるいは、『不動産』(いくつかの国の僻地に、『投資』すれば、それだけで『永住権』が提供される、という『プラン』)などを、「投資」という名目で、エミリアのポートフォリオから拠出することを静かに決めた。


(…これなら、合法的に、健ちゃんの『逃げ場所』を、世界中に確保できる。完璧な保険だわ)


さらに、彼女は、『世界を転々とする』その『可能性』も考えた。

その時、必要なのは、物理的な「ゴールド」ではない。


(…国境を超え、スマートフォンのなかに収められる、究極の『資産』…)


彼女の脳裏に、あの便利な「デジタル・アセット」――『暗号資産』――が浮かんだ。


(…『暗号資産』。あれは、私にとって『普段は、ただの『スキャルピング』の対象』でしかなく、資産として『所有する』という考えは、これまで一切無かった。…でも。…あのデジタルな資産こそが、国境を超える、究極の「逃亡資金」としては、最も優秀…?)


エミリアは、その自らの「美学」と「合理性」の狭間で、珍しく『保有すべきか』どうか悩む。

そのあまりにも壮大で、そしてどこまでも物騒な「悩み」。

その隣で、佐藤が「エミリア? 何か、考え事?」と、心配そうに顔を覗き込んでいる。

エミリアは、その冷徹な「司令官」の顔から、一瞬で、ただの「恋する女性」の顔へと戻る。


「ううん、何でもないわ。ただ、今日の朝食があまりにも美味しいから。…私たちの『未来』について、少しだけ考えていただけよ」


そのあまりにも甘く、そしてどこまでも物騒な「未来」の本当の意味を。

もちろん、佐藤は知る由もなかったのである――。

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