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東京影譚 ~エミリア、影を紡ぐ者~  作者: ミルティア


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佐藤のためのギルド結成 その二

【読者様への注意喚起】


この物語はフィクションです。

法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません。

また、作中に登場する人名、組織、団体名(アスター家、K&E リサーチ&コンサルティング等)はすべて架空のものであり、実在の人物・組織とは一切関係ありません。


ようこそ、東京の影の中へ ここは、光が滅び、影が支配する世界。

摩天楼が立ち並ぶ、華やかな都市の顔の裏側には、深い闇が広がっている。


あなたは、そんな影の世界に生きる一人の女王に出会う。

彼女の名は、エミリア・シュナイダー。

金髪碧眼の美しい姿と冷酷な戦闘能力を持つ「始末屋」だが、その心は過去の壮絶なトラウマ(PTSD)により深く閉ざされていた。

彼女の唯一の拠り所は、佐藤健という元銀行員の相棒。

彼の存在こそが、彼女の心を繋ぎ止める唯一の「鎮静剤」だった。


女王の争奪戦と運命の対決 しかし、彼女の安息は、アスター家の令嬢リリア・アスターの出現によって一変する。

リリアは佐藤の独占をかけて、エミリアに「資金力」と「知略」で挑む。

二人の女王による壮絶な「争奪戦ラブコメ」が勃発し、その裏側で、巨大な「情報戦(現代ファンタジー)」が展開されていく。


リリアの計画: 彼女は愛する佐藤のために、軍事力、情報機関、そして公邸という名の「要塞」を築き上げる。


エミリアの覚悟: 愛する者の日常と自身の居場所を守るため、妹のヴァネッサや過去の因縁と共に、冷徹な知略と戦闘本能を解き放つ。


あなたは、エミリアがこの愛と権力の戦いを生き抜き、孤独を乗り越えていく「再生の物語」を体験することになる。


さあ、ページをめくり、あなたも影の世界へと足を踏み入れてください。

これは、あなたの「常識」が一切通用しない、究極のプロフェッショナルたちが「愛」のために戦う物語。


あなたは、エミリアに、どんな未来を見せてあげたいですか?


この物語は、最先端AI 「Gemini (by Google)」 との共作により誕生しました。

時に、AIは人間の想像を超える予想外(unexpected)な展開を――。 時に、AIは人間の感情を揺さぶる繊細な表現を――。 「Gemini」は、新たな物語の世界を創造する、私の大切なパートナーです。


※本作品はカクヨムにて先行公開しており、こちら(小説家になろう)では順次公開となります。あらかじめご了承ください。


ただし、どうか忘れないでください。 これは、愛と知略が支配する、あくまでフィクションだということを。

This is a work of fiction. Any resemblance to actual events or persons, living or dead, is purely coincidental.


Ceci est une œuvre de fiction. Toute ressemblance avec des événements réels ou des personnes, vivantes ou mortes, serait purement fortuite.


Dies ist ein Werk der Fiktion. Jegliche Ähnlichkeit mit tatsächlichen Ereignissen oder lebenden oder verstorbenen Personen ist rein zufällig.


นี่คือนิยายที่แต่งขึ้น บุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์ใดๆ ที่ปรากฏในเรื่อง หากบังเอิญคล้ายคลึงกับบุคคล สถานที่ หรือเหตุการณ์จริง ทั้งที่ยังมีชีวิตอยู่หรือเสียชีวิตไปแล้ว ถือเป็นเรื่องบังเอิญทั้งสิ้น


(この作品はフィクションです。実在の出来事や人物、存命・故人との類似はすべて偶然です)


日本標準時4月13日午後9時38分。

『住処』の二階にて。


その穏やかな夜。

エミリアは、リビングのデスクで静かにその指を止めた。

彼女のその恐るべき「プロファイリング」が、ついに二つの「原石」を見つけ出したのだ。


モニターに映し出された二人の女性のプロフィール。


一人は、佐倉奈々美。

元・大手旅行代理店の総務事務。

危機管理マニュアルの作成経験を持つ、完璧な『後方支援ロジスティクス』担当。


もう一人は、雨宮結。

現役体育大学の学生。

サバイバルゲームのプロ級プレイヤーであり、完璧な『実戦部隊ガーディアン』担当。


(…ええ、完璧だわ)


エミリアは、この二人を選ぶことに、満足げに頷いた。


(この二人なら、健ちゃんの弱点を完璧に補完し、そして決して、彼に懸想けそうすることもない。最高の人材よ)


しかし、彼女はふと、その視線を隣へと向けた。

そこには、自らが愛読する『異世界ハーレム漫画』に夢中になっている、佐藤の姿があった。

そのあまりにも幸せそうな横顔。


その瞬間。

エミリアの、その完璧だったはずの「計画」に、一つの重大な「疑問符」が浮かんだ。


(…でも、待って。…健ちゃんとしては、私が選んだ、あんな地味で、実務的な二人よりも、やはり、自分がいつも夢中になって読んでいる、あの『異世界に召喚されて、ハーレムを作る、漫画』のように、ただ、ひたすらに自分を崇拝し、ちやほやしてくれる、可愛いだけの、女の子たちに囲まれた方が、本当は『嬉しい』のかしら…?)


彼女は、そのあまりにもくだらなく、そして、どこまでも切実な「悩み」に、本気で頭を抱え始めてしまった。


春の、その美しい夜景だけが、その最強の女王の、そのあまりにも乙女チックで、そしてどこまでも愛に満ちた「悩み」を、静かに、そして優しく見守っているだけだったのである――。


                    ***


エミリアは、自らが陥った、あまりにも困難な「人事問題」に、ついに助けを求めることにした。

彼女は、そのタブレットの端末にインストールしてある、あの『セキュアなアプリ』を使って、今、こちらへと向かっているはずの、義理の妹のヴァネッサに、DMで、この複雑な『相談』を送ることにした。


彼女は、そのDMに、自らが構築した、完璧な『東京アノマリー・ギルド』と『ダミー・セーフハウス』の構想。

そして、その「管理人」として選んだ、佐倉奈々美と雨宮結という、完璧な人選を伝え、しかし、その最後に、自らの本当の「悩み」を打ち明けた。


「――でも、ヴァネッサ。健ちゃんとしては、私が選んだ、あの、あまりにも『地味』で、面白みのない『実務的な二人』よりも、やはり、彼がいつも夢中になって読んでいる、あの『異世界ハーレム漫画』のように、ただ、ひたすらに彼自身を崇拝し、そして『ちやほや』してくれる、ただ『可愛いだけ』の女の子たちに囲まれた方が、その方が『嬉しい』のかしら…?」


その相談のメッセージを受け取ったヴァネッサ。

彼女は、サスキアと共に、あの湾岸地区から、『住処』へと戻るレンタカーの中で、次の『人道支援ハブ』の具体的な計画を真剣に相談している、まさにその最中だった。

彼女は、その義理の姉からの、あまりにも突飛な「相談内容」に、深いため息をついた。


(…どうして、姉さんは、『佐藤さんのキャリアアップ』という、真面目な話から、そんな、一見『理解できない動機』や『理念』を経由して、巡り巡って『社会正義(不法投棄や漂着ゴミの回収に外来植物の刈り取り)』に繋がるような、壮大な『発想』を思いついて、そして、その結論として、こんな『どうでも良いこと(佐藤がちやほやされた方が良いか悪いか)』で本気で悩むのですか!?)


彼女は、もはや、まともに取り合うのも馬鹿馬鹿しくなり、DMで、エミリアにこう返信した。


「――姉さんの、お好きになさったらよいではありませんか。どうせ『佐藤さんのため』という名目の『ハーレム』を作りたいのなら、『セーフハウス』とは別に、きちんと『分けた』ほうが、よほど『合理的』だと、思いますけれど」


その、サスキアが見れば、あまりの投げやりさに、ヴァネッサの真意を問い質そうと忠告するような内容だったが、エミリアは、全く別の「意味」で受け取ってしまった。


「――それも、そうね」


エミリアが、そのヴァネッサからの突き放したような返信を、「やはり、健ちゃんには、実務的なチームとは別に、彼を癒すための、ハーレムも必用なのね!」と、盛大に曲解し、変に納得してしまった。


こうして、ヴァネッサの、そのささやかな「諦め」は、エミリアのその壮大な「勘違い」を生み出し、そして佐藤健の新たなる「女難」の火種は、また一つ、静かに、そして確実に、その勢いを増していく。


そのあまりにも悲劇的な「すれ違い」を、もちろん、佐藤自身は知る由もなかったのである――。


                    ***


エミリアは、ついに意を決した。

彼女は、ソファで穏やかに本を読んでいた佐藤の隣に、そっと腰を下ろした。


「ねえ、健ちゃん。今、私、あなたのための、新しい『事業』を考えているのだけれど…」


寝る前の、ささやかな雑談として、しかし、その声は僅かに緊張していた。

彼女は、佐藤に、自らが考え出した『東京アノマリー・ギルド』の壮大な構想と、その拠点となる『ダミー・セーフハウス』の計画。

そして、彼を支える、二人の優秀な部下『セーフハウス管理担当』の人選案(佐倉奈々美と、雨宮結)の、その完璧な構想を全て伝えた。


そして、彼女は、その最大の「懸念」を口にした。

おずおずと、まるで初めての告白でもするかのように。


「…で、でも、どうかしら、健ちゃん。その二人だけじゃ、地味かしら…?健ちゃんがいつも大好きな、あの『異世界ハーレム漫画』のように、いっそ『セーフハウス管理担当』以外に、もっと、こう、可愛くて、あなたのことだけを考えてくれるような、女の子をあと何人か、あなたの好みで雇っても、私はいいわよ?」


そのあまりにも突拍子もない問い。

佐藤から返ってきたのは歓喜ではなかった。

彼は、その読んでいた本を静かに閉じ、そしてエミリアの目を真っ直ぐに見つめた。その顔は真っ赤に染まっている。


「――えっと、雇わなくても良いと言うか」

「え…?」

「だって、僕には、もうエミリアが、そばにいるから」


そのあまりにも純粋で、そしてどこまでもストレートな「答え」。

彼は、赤面して、自らの言葉の恥ずかしさに耐えきれなくなり、「お、おやすみなさい!」と叫ぶと、自分の部屋にこもってしまい、後に残されたのはエミリア、一人だけだった。


彼女は、その佐藤のあまりにも予想外の「カウンター」に、ただ呆然としていた。

そして、次の瞬間。彼女は、そのソファの上に崩れ落ちた。


「――健ちゃん、なに、それ…!もう、反則よ!可愛いすぎる♪」


彼女は、その顔を真っ赤に染め、そして、そのどうしようもない愛しさに、心の底から惚れ直している。


最強の女王、エミリア・シュナイダー。


彼女の、そのあまりにも壮大な「計画」は、こうして、彼女が愛する男の、たった一言の「純粋」な言葉の前に、完璧に、そして木っ端微塵に、粉砕されてしまったのである――。


                    ***


佐藤が、自室へと逃げ込んだ後。

リビングには、エミリアが一人残されていた。

彼女は、先ほどの佐藤の言葉を反芻し、そして、その頬を緩ませていた。


(…全く。あの、一言だけで、私を撃退できるなんて)


しかし、彼女はすぐに、その「司令官」の顔へと戻る。


(…でも、健ちゃんの『ハーレム』は却下されたけれど、彼の『教育』は別問題よ)


彼女は、その手元のタブレット端末で、先ほど練り上げた『東京アノマリー・ギルド』の構想案を修正し始めた。


(…そうね。この際、『ギルド本部』と『ダミー・セーフハウス』は、K&E リサーチ&コンサルティングの業務とは完全に『分離』して、立ち上げるべきだわ。『東京アノマリー・ギルド』は、表向きは、私が『匿名の寄進者』として設立した、一つの風変わりな『NPO』という形を取る。そして、その『基金』も、タックスヘイブンに作る、別のファンドからの『資金』を利用するという『間接統治方式』を取れば、私の名前は表には出ない。そして、『ダミー・セーフハウス』と、佐倉奈々美、雨宮結の『二人』は、K&E リサーチ&コンサルティングから完全に『独立した』組織として設立し、あくまで『佐藤をその責任者』とする)


彼女は、そのあまりにも完璧な「偽装工作」に満足げに頷いた。


(…これでも、リリアさんにはどうせ『セーフハウス』もすぐ特定されバレて、そこが彼女の新たなる『監視対象』になるだろうけれど、それで構わない)


彼女は、その完璧な計画書を、サスキアにあの『セキュアなアプリ』で送信した。


『――サスキア。この『東京アノマリー・ギルド』、『ダミー・セーフハウス』、『セーフハウス管理担当』の人選案を進めなさい。ヴァネッサと今『車で移動中』でしょうから、急がないので。返信は、明日の仕事中で構わないわ』


その注釈付きで。

春の、その美しい夜景だけが、その最強の女王の、そのあまりにも楽しげな「悪巧み」を、静かに、そして優しく見守っているだけだったのである――。


                    ***


エミリアは、リビングのソファーに深く座りながら、先ほどサスキアに送信した完璧な「計画書」を思い返し、満足げに頷いていた。


(…ふふっ。これで、あの松田刑事がいつ警視庁をクビになっても、私の『東京アノマリー・ギルド本部』の名誉ある『雑用係』として、定年なしの、最低賃金、昇給なし、ボーナス無し、福利厚生なし、おまけに交通費なしで、心ゆくまで雇えるわ。…全く、私は、なんて『用意周到』なのかしら)


彼女は、その自分のあまりにも完璧な用意周到さに心の底から満足しながら、ふと、先ほどの佐藤の、あの「言葉」を思い出していた。


(…健ちゃんから、あんな言葉で断られたけど、もし、あれが『リリアさん』なら、果たして、健ちゃんのための『ハーレム』を、諦めるのかしら?)


彼女は、思考実験として、その厄介なライバルの行動を考えてみた。

エミリアのその冷徹な『プロファイリング』によれば、リリアの取る行動は、おそらく全く逆の『二つの可能性』に集約される。


(リリアさんのあの『性格』として、まず考えられるのは『独占欲』。健ちゃんに、自分以外の『どんな女性も近づけない』ように、全ての「芽」を摘み取るか。…あるいは、その『逆に』自らを『正室』だと思い込んでいるリリアさんは『側室の面倒を見るのは、正室としての当然の責務ですわ』とか、訳の分からないことを言って、嬉々として『健ちゃんのため』という、大義名分で、彼の世話を焼くための女性たちを集め始めるか。…その『どちらか』ね)


エミリアは、深いため息をついた。


(…前者、『独占欲でどんな女性も近づけない』なら、まだ話は簡単だけど、もし、後者の『正室として側室の面倒を見るのは当然の責務だ』と本気で思っているなら、これ以上ないほど『厄介』ね…)


彼女は知っているのだ。


(リリアさんは、自分自身が歩く『金儲けの才能の塊』のような女性だから、私のように裏工作をしなくても、誰に咎められること無く、いくらでも『自由に使える資金』を、表の世界で用意して、そして、それを『なんら良心の呵責なく』湯水のように使ってくるわ…)


エミリアは、そのあまりにも厄介な「ライバル」の、その底知れない「力」を、改めて分析している。


春のその美しい夜景だけが、その最強の女王の、そのあまりにも珍しい「悩み」を、静かに、そして優しく見守っているだけだったのである――。


                    ***


エミリアは、あまりにも厄介な「ライバル」の、その底知れない「可能性」に、深いため息をついた。


(…全く。リリアさんは、何を考えているのか、さっぱり読めないわね)


彼女は、とりあえず、今この場でリリアのことを悩んでも、現状、自らが『何もできること』がないという結論に達した。


(…ええ。私が今願うべきは、一つだけ)


彼女は、そう自らに言い聞かせる。


(リリアさんが、あのリリアの天空の『公邸』と、そして、大阪『統括作戦室』という、新しい『玩具』に、少しでも長く『夢中』になって、そして、愛する健ちゃんに下手に『構う時間』が、ほんの少しでも『減る』ことを、ただ『願う』しかない)


彼女は、そのあまりにも消極的で、そして、どこまでも切実な「結論」に達すると、静かにソファから立ち上がった。


「…健ちゃん、おやすみ」


(佐藤の閉まったドアへと小さく呟くと)


今日は、彼女も、その全ての思考をリセットするため、エミリアも久しぶりに『自室』で、一人『寝る』ことにした。


春の、その美しい夜景だけが、その最強の女王の、そのあまりにも人間味あふれる「悩み」を、静かに、そして優しく見守っているだけだったのである――。


                    ***


日本標準時4月13日午後9時50分。

紀伊水道を抜け、淡路島南端に近い海域。


天気は、夜霧が立ち込めることもなく、春らしい落ち着いた穏やかな天気だった。

チーム『セレノファイル』のあの白いスーパーヨットが、一切の航行音を消し、大阪湾に向けてその進路を静かに移動していた。


CIC(戦闘情報センター)の巨大なモニターには、大阪湾の詳細な海図と、そして無数の光点が映し出されている。

指揮官であるあの東欧出身の元・数学者は、その光の一つ――大阪『統括作戦室』――を見つめ、静かに部下へと命じた。


「――大阪『統括作戦室』へ、回線を繋ぎなさい。我々の『到着』を告げます」


その頃。新大阪駅近くのタワーマンション。


ジェシカ・オコネルと、彼女の専属チーム『アウトライアーズ』は、その真新しいオフィスで、リリア帝国の全体像の把握に努めていた。

その時だった。マヤの操るコンソールが、けたたましい警告音を発した。


「Jess. Incoming military-grade encrypted traffic. Origin is the Osaka Bay offing. ...Codename: 'Siren.(…ジェス。軍事レベルの暗号化された通信が入りました。発信元は大阪湾沖合。…コードネームは『セイレーン』です)」


ジェシカは、その名前を反芻する。


(Siren... That's the 'Ghost Fleet' vessel Lilia keeps on the leash, then.(…セイレーンね。…リリアが飼いならしているという、あの『幽霊船』のことだわ))


彼女がその通信を許可すると、モニターに一人の冷たい瞳の女性が映し出された。


「This is Command, Team Selenophile. We are now commencing transit into Osaka Bay.(――こちら、チーム・セレノファイル、指揮官。これより、大阪湾への進入を開始する)」


ジェシカは、その挑発的なまでに簡潔な「報告」に、あえて余裕の笑みで返した。


「Welcome to Osaka. This is Jessica O'Connell, commanding the Osaka Center. Your chain of command now transfers to me.(ようこそ、大阪へ。こちら、大阪『統括作戦室』のジェシカ・オコネルよ。これより、あなた方の指揮系統は、わたくしが引き継ぐ)」


しかし、その画面の向こう側の指揮官は、その表情を一切変えずに答えた。


「Commander. With respect, we are not scheduled to be incorporated into the direct chain of command of your Osaka Center. Team Selenophile operates strictly under Lady Lilia's direct mandate. However, we will require logistical and limited intelligence support from your Center. We maintain separate supply lines and conduct independent reconnaissance.(――司令官。ご冗談でしょう。我々チーム『セレノファイル』は、貴官の大阪『統括作戦室』の直接的な指揮系統下に入る予定はございません。我々は、あくまでリリア様直轄の命令のもとで行動いたします。ただし、補給および限定的な情報支援については、貴官の作戦室に協力を要請します。我々は、基本、独自の補給線と、独立した偵察活動を維持します)」


そのあまりにも一方的な「通告」。

ジェシカ・オコネルと、彼女の専属チームは、その言葉に絶句した。

リリア・アスターという女。

彼女は、自らが任命した最高司令官の、さらにその上空に、もう一つの「目」を平然と飛ばしておく、というのか。


プツリ、と通信は切れた。

ジェシカは、その暗転したモニターを見つめ、そして獰猛な笑みを浮かべた。


「Lady Lilia Astir. That ultimate 'fang' you keep hidden... I will certainly uncover its secrets.(リリア・アスター。あなたが隠し持つ、その究極の『牙』の『秘密』を、わたくしが必ず暴いてみせるわ)」


彼女は、その未知なる「戦友」(あるいは、新たなる「敵」)の存在に、心の底からの「興味」を持つ。

西の都を舞台とした、二人の「女王」の戦いは、今、さらに複雑な様相を呈し始めていたのである。


                    ***


日本標準時4月13日午後10時。

紀伊水道を抜け、淡路島南端に、近い海域。


天気は、視界を遮る夜霧が立ち込めることもなく、春らしい落ち着いた穏やかな、絶好の「観測日和」だった。

その漆黒の海の上に、一隻の古びた「釣り船」がぽつんと浮かんでいた。


『関係機関』のチームである。


彼らは、夜釣りを、楽しむ裕福な素人を名目に、この、何も知らない哀れな『釣り船』をチャーターし、その船上で息を殺していた。


「――リーダー。見えます。目標、三時の方角、距離、15(ワン・ファイブ)マイル」


技術担当の伊丹が、その漁船には似つかわしくない、高性能レーダーの画面を見つめて呟く。

チーム『セレノファイル』の、あの白いスーパーヨットだった。


「追え。警戒されない、ギリギリの地点を維持しろ」


リーダーである黒木の、その低い声に、借りた釣り船の船長が、「へい、旦那。ですが、あの船には追いつけないですよ?」と、怪訝な顔をする。


「分かっている。それでも、行けるところまで、頼む」


彼らは、その『幽霊船』のあまりにも不可解な『動き』を必死に分析しているのだ。


(…東京湾でのあの『陽動』。そして、この大阪湾への『移動』。…全てが繋がった)


黒木は確信していた。


(A国とB国の『橋の再建』という政治ショー。あれを成功させた、リリア・アスターが、今度は、自らの『軍事力』を、この西の都へと集結させている。…これは、間違いなく、日本政府への、『示威行動』だ)


その、あまりにも合理的で、そしてどこまでも的外れな「分析」。

伊丹の指先が、キーボードの上を踊る。


「…ダメです。通信は、相変わらず、完璧な軍事レベルの暗号化。…熱源も、音紋も、全てがステルス性を重視。…この船、まるで、『存在しない』みたいだ…」


その報告に、黒木はただ歯噛みする。


彼らは、まだ知らない。

その「幽霊船」が、今、まさに自分たちの存在に完全に気づいた上で、あえてその「尻尾」を掴ませずに泳ぎ続けている、という事実を。

そして、その「幽霊船」の本当の目的が、『示威行動』などではなく、ただ一人の少女の「恋」のために動いている、という、そのあまりにも馬鹿げた真実を。


春の、その美しい月だけが、その二つのあまりにもかけ離れた「思惑」を乗せたまま、静かに海面を照らし出しているだけだったのである――。


                    ***


日本標準時4月13日午後10時10分。

リリアは、自らの城である『蒼穹キネマ』の広大な自室で、一日の最後の日課を終えようとしていた。


彼女は、その手元のタブレット端末に映し出された、自らの天文学的な『ポートフォリオ』を、その『鑑定眼』で瞬時にチェックして、そしていくつかの資産の『リバランス』(資産配分の再調整)を行う。

その指先は、まるで世界最高峰のピアニストが鍵盤を奏でるかのように、どこまでも優雅に、そして完璧に終わらせると、彼女は満足げに頷いた。


仕事を終えた彼女が、次に手に取ったのは、一冊の古びた和綴じの本だった。

その表紙には『正室としての心構え(一体、誰が、いつの時代に書いたのか、さっぱりわからない、あまりにも胡散臭い本である)』と達筆な文字で書かれている。


彼女は、そのあまりにも時代錯誤な「教え」を、今日も一言一句、真剣に読み込み、その内容に深く頷き、心の中でこう結論づけていた。


(ええ、やはり、これに書いてあることは真理ですわ。『正室たるもの、数多くの愛すべき『側室』をも養う、圧倒的な『経済力』と、その数多くのわがままな『側室』たちを完璧に『まとめ上げる』、絶対的な『カリスマ性』と『リーダーシップ』が何よりも大切ですわね)


彼女のその脳裏に、一人の女の顔が浮かぶ。

エミリア・シュナイダー。


(とくに、わたくしの宿命のライバルである『エミリア様』のような、あのわたくしの人生の最強の『ラスボス』を、このわたくしが、愛するサトウさまの『正室』として、その『側室』筆頭として迎え入れ、その『面倒を見る』からには、さらなる『準備』と『覚悟』が必要ですわ)


リリアは、そのあまりにも壮大で、そしてどこまでも歪んだ「結論」に、ひとり静かに納得している様子だった。

彼女のそのあまりにも個人的で、そしてどこまでも見当違いな「覚悟」が、今、まさに、大阪湾で繰り広げられている、壮絶な「情報戦」の引き金となっていることなど。


春のその美しい夜空だけが、その若き女王の、そのあまりにも壮大で、そしてどこまでも滑稽な「勘違い」を、静かに見守っているだけだったのである――。


                    ***


日本標準時4月13日午後11時すぎ。

リリアの天空の『公邸』――『蒼穹キネマ・タワーレジデンス』――で繰り広げられていた、その静かで、しかし、どこまでも熱い「夜会」は、無事に終わりを告げようとしていた。

日本の金融界を牛耳る、老獪な「狸」たち(機関投資家)は、その誰もが満足げな表情を浮かべていた。

彼らは、ジュリアン・アスター=グレイという、若き「貴公子」のその底知れない「器」と、彼がこれからこの日本で生み出すであろう、新たなる「価値」に、確かな「手応え」を感じていたのだ。


ゲストたちが、一人、また一人と帰路につく中。

夜会のもう一人の「主催者」であるレイラ・ウォンが、ジュリアンに深々と礼を述べていた。


「Lord Julian. Thank you sincerely for this evening. Your impeccable escort allowed my 'strategy' to commence with the optimal start.(ジュリアン卿。今宵は誠にありがとうございました。あなた様の完璧なエスコートのおかげで、わたくしの『戦略』は最高のスタートを切ることができました)」

「Not at all. The honour, I assure you, was entirely mine, to spend time with such a uniquely gifted individual.(とんでもないことでございます。わたくしの方こそ、あなた様のような才能溢れる方と、時を共にできましたこと、光栄に存じます)」


ジュリアンのその完璧な「返答」に、レイラは満足げに微笑むと、その手元の時計を一瞥した。


「I apologize, but I must now take my leave. I have a subsequent engagement, necessitating my return to Singapore.(申し訳ございませんが、わたくしはこれで失礼いたします。次の予定がございますので、シンガポールへ戻らねばなりません)」


彼女は、慌ただしく、しかしどこまでも優雅に一礼すると、羽田空港へと向かうべく、待機させていたハイヤーで、その城を後にした。

彼女には、深夜発のシンガポール行きの飛行機に乗るという、過密なスケジュールが待っているのだ。


全てのゲストが去り、リリアの天空の『公邸』は、再びその静かな一日を終えようとしていた。

メインホールには、ジュリアンとアーサーの二人だけが残されていた。


「Quite splendid, Young Master.(…実にお見事でございました、坊ちゃま)」


アーサーのその言葉に、ジュリアンは静かに頷いた。

彼は、その手にしたグラスの中で揺れる、琥珀色の液体を見つめながら、思う。


(This, then, is the 'war' that Lady Lilia desired. ...And the 'life' that I chose.(…これが、リリア嬢が望んだ『戦い』なのか。…そして、わたくしが選んだ『人生』なのか…))


そのあまりにも長く、そしてどこまでも輝かしい「一日」。


春の、その美しい夜景だけが、その貴公子の、その確かな「勝利」と、そしてその背負うべき「運命」の重さを、静かに祝福しているだけだったのである――。

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