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73 『とんでもない足音』


 とんでもない足音が二人分になって遠くから聞こえてきた。

「そういえば、お義母さんには全部話せ…た…?」

 ねえさんが!心配してくれているだけで!嬉しくて!嬉しい……。

「うん。話せたよ。言われてみればその話全然できてないね」

 本当にそう言われてみたら。だった。

 ……やっぱり、ねえさんと一緒にいると話したいことも聞いて欲しいことも後から後から沢山出てきて、時間が全然足りないな。

 ガ!チャ!!!これまた凄い音でドアが開いたと思ったら。

「すまないアクトくん」

「ごめんなさいアクト」

 謝られた。

「「とりあえずしばき倒してくる」わ」

 しばき倒そうとしてくれてた。

 シンプルに。嬉しい。嬉しかった。僕のために、本気で言ってくれているのが分かったから。でも。

「とりあえず、ご飯はあるわよね?」

「あの日から一ヶ月はそろそろだ。もう少しで経つから、待てるよな?」

 でも、もう行くわけ?ご飯も食べずに?

 母さんと久しぶりに話せたのに?義父さんとはまともに話してもないのに……?四人で話してないよね?

 やっと付き合えたことも報告できてないのに……?

 まだ話し足りないし……。

 寂しいんですけど?????

「二人の苛立ちも分かるし、分かるけど!今はそれより、アクトの気持ちを優先すべきなのでは?」

 ねえさん。やはりねえさん。めっちゃすき。すきの更新が止まるところが全然想像できない。

 二人は、ハッとした顔でねえさんを見て、僕を見る。

「すまない!アクトくん!!」

「ごめんなさい!アクト!!!」

「あっ……え〜と。あ〜。うん」

 あ、謝られた。驚いて、言葉につまる。少し前の僕なら気の利いた言葉の一つや二つ出せただろうに…何も出てこなかった。やっぱりぼくは会話が上手くない。

「アクト、なんか言いたいことあるんじゃない?言いにくい事だったら私が聞こうか……?」

「ううん。自分で言える。大丈夫」

 でも今の僕にはねえさんがいる。

 だからなんの問題もない。どんなに僕が話すのが上手くなくとも、姉さんがここにいるかぎりは。

 僕がこの世界で無価値な存在になることはない。

 ぼくがいらないと、言われることは無いのだから。

「母さん。父さん」

 だから思いきって。

「「はい」……」

「気持ちは嬉しいけど、もう行っちゃうの?」

 本心をぶつけたっていい。

「あ……」

 必死で頷いてくれるねえさんをぎゅっとしたくなるのを堪えて。

「久しぶりに会えたのに、一緒にお話もなし……?」

 二人にだけ見えるように。大人によくきく顔をつくる。僕だって、何も考えずに無理をしていた訳じゃない。

 どんな子供に大人が弱いか知っていれば、無理をする時間も短くなったから。

「うっ……」

 よかったきいてる。

 べ、別にきいてくれるか心配だったとかではない。一回二人には無理すんのやめたから、上手くできるか不安だっただけ。ただそれだけ。

 あぁ。もう僕、誰に言い訳してんの。

 ……自分か。

「ごめん。わがまま言って。二人とも忙しいもんね」

 ここで一歩引く。あれ?でも。なんだろう。

「「全然忙しくない」さ!」わ!!!」

 ソプラノとアルトの綺麗なハモリが響き渡った。

 上手くいった。そう。完璧にやりたかったことが出来た。それはそう。嬉しい。

 そう。嬉しいと感じている。

 少し前までこれは他の言葉では表せない。本当にただの無理だったはず。

 でも。うん。今、僕はこれを無理だとは思ってない。それどころか……。

 ねえさんをみる。

 上手くいったでしょ?と笑ってみる。

 心から、笑っている。

 



 (それどころか……僕、今すごく……。楽しんでた?)

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