72 とんでもない足音
とんでもない足音が二人分になって遠くから聞こえてきた。お義母さんとお父さんだろう。……そこでふと思い至る。
「そういえば、お義母さんには全部話せ…た…?」
「うん。話せたよ。言われてみればその話全然できてないね」
ね〜。色々あったから…。そう。色々あったから、話すことも一つ増えちゃったけどね。
私たち、これから付き合います。って言ったら二人ともこの勢いのままひっくり返っちゃわないかな……。
というか、この足音はなんなんだろう。ものすっごいんだけど。
ガ!チャ!!!これまた凄い音でドアが開いたと思ったら。
「すまないアクトくん」
「ごめんなさいアクト」
「「とりあえずしばき倒してくる」わ」
あ〜。あの人への怒りが全てに現れている音でした。声と……顔が物語ってる。ものすごく怒ってるって。
「とりあえず、ご飯はあるわよね?」
「あの日から一ヶ月はそろそろだ。もう少しで経つから、また帰ってくる。2人なら待てるよな?」
私は大丈夫だけど。展開が急だなぁ。説明、まぁされなくても分かるけど。アクト……は、と思って見つめたその先には、不満顔のアクトが居た。これはいけない。
「二人の苛立ちも分かるし、分かるけど、今はそれよりアクトの気持ちを優先すべきなのでは?」
いけないと思うと同時に、口から言葉がこぼれ落ちていた。
お義母さんとお父さんが、ハッとした顔で私を見て、アクトを見る。
「すまない!アクトくん!!」
「ごめんなさい!アクト!!!」
「あっ……え〜と。あ〜。うん」
二人が謝って、アクトが受け入れて、沈黙が流れそうだったので、言葉を紡ぐ。
「アクト、なんか言いたいことあるんじゃない?言いにくい事だったら私が聞こうか……?」
「ううん。自分で言える。大丈夫」
アクトは「ありがと」なんて言っているけれど、ちょっと怖い。ちょっと怖い雰囲気が出ている気がする。気のせいかな。気のせいかも。
「母さん。父さん」
「「はい」……」
「気持ちは嬉しいけど、もう行っちゃうの?」
「あ……」
そ、そうだそうだ〜!!必死で頷く。少し早くないか〜!
「久しぶりに会えたのに、一緒にお話もなし……?」
「うっ……」
うっ……。と私もなる。
顔はお義母さんとお父さんの方を向いているから、私には見えないけど。声で分かる。
これは罪悪感がとんでもなく刺激されるヤツ。
「ごめん。わがまま言って。二人とも忙しいもんね」
ここで一歩引くんだ。
「「全然忙しくないよ!!!」」
ソプラノとアルトの綺麗なハモリが響き渡った。
アクト……。と思っていたら。
こちらを見たアクトの悪戯っぽい笑みでそれが全て計算されたものだったことを知った。
私は。ただただ、アクトすご。アクト…やば。で心が溢れかえった。




